13.
新たな仲間は毛深いな、と以蔵は思った。
港町イトークでシーサーペントを一刀両断した(ついでに汁にして美味しくいただいた)以蔵は、町を出て街道の半ばにいた。
「いやあ、イゾ―の旦那! さすがっすよ、その剣さばき!」
「おん」
以蔵は、ときおり襲ってくる野生動物(※モンスター)を食材ならば何でも斬れる【天厨】にて斬り伏せていた。
故郷の土佐江ノ口村は高知城下町から川一本を挟んだ場所にあったが、裏山に出かけた際に山鳥やら猪やら熊やらを仕留めてはこっそりと肉鍋としゃれこんでいた以蔵である。たいがいの野生動物(※モンスター)は美味しそうに見えるという特技がここにきて活きる!
なお、大概の獣は味噌で煮ればうまいし、故郷の名産である柚子の皮など添えちゃったりしちゃった日には舌がパラダイス銀河である。
岡田以蔵、食べ盛りの日々の記憶である。
――が、それはそれとして。
「目にも留まらぬ体のこなし、すげええっすよ!!」
「おん、そうか……」
以蔵は道中、ある冒険者と合流していた。
割と大きめの牛(※モンスター)に襲われている男がいたので、ついお節介および食い意地で助けたのが運のつきだった。というのも、たぶん。
(こいたぁ、異人のなかでも野蛮に違いないぜよ。毛深いし……牙みたいな歯しゆうし、山みたいじゃ)
「頼りにしてますぜっ、イゾ―の旦那!」
この軽薄に話す男である。
「お、おん……」
巨大な体躯に、全身を覆う毛皮。
頭から突き出た耳。
口に光る牙。
絶対におかしい。
(………どうしよう。まさか、鬼だったりせんじゃろか)
軽妙なトークとヨイショについつい付いてきてしまったが、異人にしても明らかに様子が違う男の様子に不安を深める以蔵であった。
以蔵の隣でニコニコと笑っている大男は、もちろん獣人族である。
名前はガープ。
彼の名前が発音できるようになるまでに、以蔵は十二回の練習を要した。
(めちゃくちゃ毛深い人じゃ……っ!!)
と、以蔵は思った。