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夫のContinue




チュン…チュンチュン……


耳に心地の良い小鳥のさえずりが聞こえて、ベッドに横たわっていた隆の意識はゆっくりと呼び覚まれた。あまりに清々しい朝に思わず背伸びをしてしまう。


「んっ…うーーんっ!はぁ~久方振りの目覚めの良さだなぁ…」


寝起きの隆は、半分寝ぼけながら辺りを見回し…そして固まった。


「…はっ!?えっ?俺は確か病室にいたはず…というかここどこ?自宅じゃない…実家?えっ…でも実家は取り壊したはずじゃ」


隆がパニック状態に陥っていると…突然、部屋の扉が叩かれた。


「隆~!起きてるー?そろそろ起きないと遅刻するわよ~?」


(えっ!?この声は…まさか…母さん?何で!?亡くなったはずじゃ…)


女手一つで隆を育ててくれた母「蔵守 陽菜」は隆が23歳の時に交通事故でこの世を去っていた。そのため、母の声がするなどあり得ないことで…このことが隆のパニック状態にさらに拍車をかけてしまい、呼び掛けに対して返事をすることができなかった。


「隆~?寝てるの?入るわよー!」


ガチャっと音がして扉が開くと、一人の女性が入ってきた。


(かっ…母さん!)


「何だ、起きてるんじゃない。返事ぐらいしなさいよ、まったくもう…」


入ってきた女性は間違いなく母である「蔵守 陽菜」その人であった。ほんのり黄色く染めた長髪、引き締まった体ながら出るとこ出ているという、隆にとって自慢の美人母であった。もう会えないと思っていた唯一の肉親である母に会えたことで思わず目頭が熱くなり涙がこぼれた。


「えぇっ!?どうしたの?怒ったわけじゃないのよ?」


「違うんだ、母さん。えっ…えっと…その、ちょっと怖い夢を見たみたいで…」


「夢って…来年には高校生になるのに、まだまだ子供ねぇ~、ほらっ!」


隆は母に有無をいわさず抱きしめられ、久方振りの母の温もりを感じたことで、また涙がこぼれた。しばらく母に抱きしめられていると徐々にパニックも収まり、冷静になってきた。


「そろそろ、落ち着いてきたかしら?」


「…ありがとう。母さん」


「ふふっ、良かった。じゃあ、早く制服に着替えて朝ご飯にしましょ」


「うん、すぐ行くよ」


母が部屋を出て行くのを見届けると、隆はベッドから徐に立ち上がり、クローゼットから制服を取り出した。


(中学生の頃の記憶通りだ…この制服も中学校のもので間違いない)


思わず自分の頬をつねり…頬の鋭い痛みで思わず顔をしかめる。


(痛い…夢じゃない。これはタイムスリップ?…いや、時間逆行?ってやつなのか?)


いそいそと制服に着替えながら、今の状況から今後どうしたらいいのかを考える。


(もし、これが時間逆行ってやつなら、もう一度人生をやり直せるのか?…だったら鈴を助けることも可能なんじゃ…あっ!?来年には高校生ってことなら今年は…?)


慌てて辺りを見回し日付が確認できるものを探す。すると机の側にカレンダーが掛かっており、そこに記された年度と月数から転校して鈴と出会う約一年前のようだった。


(残りあと一年で鈴と会える!…でも今のままじゃ鈴はまた…どうにかして鈴を救う方法を考えないとな…)


不意に青空が見たくなり、自室の窓を開けた。空を見上げると雲一つ無い日本晴れであった。この青空の向こうにいるであろう愛する妻に向けて…隆は誓った。


「鈴、今度こそ幸せする…そして、絶対に添い遂げるからな!」




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