終わりのプロローグ
冒頭から何だと思いますが、我ながら才能がないと自覚しながらもそれでも――と思い執筆しております。
気楽に楽しんでいただけたら幸いです。
ここは遍く人々の願いであり、祈り、望み求められた最果て。
到達することができるのは特別な者のみ。
いまだかつてその領域にたどり着いた者など、一人もいなかったことであり、これからもそうであると思われていた。
――だが、永い時間ともいえるほどの末、ある一人の少年がたどり着く。
あらゆる人々と同じように少年も強く切望していた。
ついに待ち焦がれた念願を成就させ、ようやく希望をつかみ取った。
――だというのに少年の顔は喜びに満ちたものではなかった。
むしろ真逆の表情である――悲哀な表情だった。
「……なんだ、これは……。……なんなんだよこれ……」
少年の身体から力が抜けていき、膝から頽れていく。
泣き尽くして、枯れてしまったと思っていた涙が頬を伝って地を濡らしていく。
今までの記憶が感情とともにあふれ出す。
あらゆる人と出会い、そして別れていった。
時に痛さに苦しみながら耐え抜いて、時に辛さに胸が張り裂けそうになって、悲しさでただただ涙を流していた。
その過程で、奪って、壊して、失っていった。
正しくないと思いながらも、不本意ながらも、希望に縋るように正当化という嘘でごまかしていた。
希望を手にすれば――全てが元通りになると……。
手にしたものは、突きつけられた真理は少年の――望むものではなかったのだ。
「ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
己の愚かさに、望まない希望に怨嗟して慟哭する。
だれにも憚ることなくひたすらに。
だれもいない。
なにもない。
空虚で真っ赤な世界。
ただ一つを除いて、少年の前に見守るようにそびえ立っていた。
少年の身体の何倍もの規模を誇り、無骨でありながら洗練された意匠、汚れのない神聖な翼はまるで――天使を彷彿とさせるものだった。
少しの時間が経ち、少年は嘆くのを止める。
顔を上げ立ち上がり、いまだに少年の目から涙は止まらず流れていた。
生気の失った、虚ろの目で消え入りそうな感じだった。
おぼつかない足取りでどこかに向かう。
足を止め、向かった先には崩れ落ちた泥の塊があちらこちらに存在していた。
少年はかがみ込み、しゃがれた声で懺悔する。
「……ごめんなさい、何もかも間違っていた。望むことではなかった。ぼくの希望は――望みは最初からあったんだ……だから――」
いまの少年の目からは涙は引いていて、あることを決意する
「……絶対に今度は間違わずに、守ってみせるよ」
――そうして少年は在りし日の夢をみる。