黒い読み聞かせ⑥「チクワが好きなチワワ」
今回は小さなお子様向けです。
かわいいお話です。
読み聞かせにどうぞ。
あるところに、
白いオスの、チワワがいました。
チワワの飼い主は、おでんが大好きでした。
ある日、
飼い主は、チワワを抱いて、
おでん屋さんの、屋台に入りました。
チワワは、屋台のメニューに
「チワワ 100円」と、書かれた札をみて、
目玉が、飛び出しそうになりました。
「へ? おでんのメニューに、ボクの名前が……」
チワワは、とたんに不安になりました。
「ボクたち、おでんの具なの?
それなら、いつか、ボクも食べられちゃうの?」
チワワは、もうガクブル・涙目です。
お皿に盛られた、自分の姿を、思い浮かべました。
おツユで煮込まれて、
とろけ出した、大きな目玉、三角の耳、アバラ骨……。
ふるえが、止まりません。
「はい。お待ち! 熱いよ~」
そこへ、
おでんの、盛り合わせがきました。
とっても、いいにおいです。
チワワは、
飼い主に、その中の、一つをもらいました。
それは、茶色く薄い皮のついた、
筒のようなものでした。
おツユが、よ~く沁み込んで、
噛みごたえもあり、
チワワは、夢中になって食べました。
飼い主が言いました。
「そうか。お前は、竹輪が好きか」
チワワは、
その言葉に、ハッと気づき、目をパチクリさせました。
そうです。
あの札に、書かれた文字は
「チワワ」ではなく、「竹輪」だったのです。
カタカナの「ク」と「ワ」。
屋台のオッサンの、手書き文字が、
幼稚園児なみに、ヘタクソだったのです。
チワワは、心の中で叫びました。
「おっさん。ちゃんと書けや~!」
大きな目玉をむきだして、
オッサンを、上へ下へと、にらみ回しました。
それから、
チワワは竹輪が大好きになりました。
飼い主に、一本まるごと、もらうたび、
小さなお口で、クチャクチャ、クチャクチャ。
何度も何度も、かみしめました、とさ。
めでたし、めでたし。
(了)
チワワ、危機一髪だったね。よかったよかった。ʕ-ܫ- ʔ
【「黒い読み聞かせ」シリーズ】
①「虐げられたシイタケ」
②「微塵も反省しないミジンコ」
③「ブチ切れる青筋アゲハ」
④「思う壺だったウツボ」
⑤「白黒つかなかったパンダの国会」
⑥「チクワが好きなチワワ」
「ホラー館」(第19話までUP済)もよろしくね。
by 渋クマ通信社