ステップ6
朝、ソファーで目を覚ます。
ベッドの方を見て円君がまだ眠っているのを確認して音を立てないよう注意しながら身繕いする。
置いてある水の入ったボールで手と顔を洗い、使い終わったそのボールを持って井戸場へ向かう。
客間や応接室以外は基本スライド式なのは普通ではないらしい。ふすまっぽくて楽だけど、洋風な趣きと合わさると不思議な感じだと思う。
それとも壁を覆う布と押し開けるタイプのドアが相性が悪いんだろうか?
井戸場で使用済みのボールの水を捨て、新しい水を入れて部屋のサイドテーブルへと置きに戻る。
よっぽど疲れているのか少なからず音をたてているのに円君はまだ眠っていた。
起こさずに済んだことにちょっとホッとする。
昨日のよろず屋による円君の導石作成はかなりのスパルタだったと思う。
魔力切れになった瞬間によろず屋が差し出す魔力回復用のお茶。円君は嫌がることなく受け取り飲み干して作業を再開する。
課題をやりきった円君はすごいと思う。僕にはそれをこなす気力も集中力もないと思う。
起こさないように気をつけながら、そっと、厨房へと移動する。
厨房は常に火があるせいか、他の場所より少し暖かい。かまどが二つにオーブンを併設した暖炉が一つ。
暖炉のそばには乾燥棚があり、食パン触感の木の実ポトカやその他の野菜が干されている。
昨日がんばってスライスしたし。
甘粉の濾過で柔らかくなったポトカの実(樹液まみれ)を乾燥させたポトカの実スライスと交換する。そして上から甘い樹液を注ぎいれ放置。
ボールにポトカ(樹液カス入り)を千切り入れながら、昨夜の根野菜のスープが残っているかを覗く。
かまどに放置された鍋の中にスープは残っていた。と、いうか増えているように見える。
よろず屋は残った焼き魚を投入したようだった。
べたべたになった手をすすぎ、ボールに卵と雑穀を足して混ぜこねる。
金属板に適当なサイズに丸めたタネを並べ、かまどに併設されたオーブンへ入れる。
蓋をしてから専用の場所に水を少量注ぎいれる。
これで蒸しあがる。
放置されたスープを二回くらいくるくるとかき混ぜ、魚肉を薄くスライスする。
朝食とのぞみちゃんたちのお弁当用に。
「おはよう。ゆきちゃん」
あくびをしながら入ってきたよろず屋はやかんに水を入れかまどに乗せる。
棚からポットとカップ、ころころと四角いキューブの入った透明ビンを取り出す。
「甘いのがいい? さっぱりなのがいい?」
「さっぱりで」
「ん」
頷いたよろず屋はそのままキューブを包みごとカップに放り込む。以前、教えてもらったことによると木の実らしい。お湯に皮も残らず溶けると言う不思議な木の実だ。
「ゆきちゃん朝早いね~」
よろず屋は言うがそんなことはないはずである。雨季のどんよりとした天気と水の侵入を防ぐためのやたら分厚い壁。出入り口にもなる窓は二重にふさがれ厚めの布で覆われている。朝が早いのか、本当なら昼時なのか、それすらわかりにくい。それでなくてもよろず屋は好きなときに寝て、好きな時に起きる。
起きた時が朝である。
引き篭もってた僕でもそんな生活はしてない。
でも、それで仕事をしているよろず屋と比べるのが間違ってるのはわかっている。
少し遅れてミルドレッド嬢とのぞみちゃんが厨房に来た。
本当に少しはやめの朝だったらしい。
お茶とスープだけの朝食に焼きあがったパンもどきに焼いた魚を挟んだものを包んでお弁当にと渡す。
不安そうなのぞみちゃんが心配じゃないとは言えないけれど、きっとうまく進むと思うんだ。
のぞみ「見捨てられた」(涙
円「そーだな」
ミルドレッド「あの男のどこがいいの?」