ステップ4
小舟が建物の隙間をぬってゆく。
チリンチリンと金属音が行商の船と周りに知らせる。
時おり窓から声を掛けられて商談している。
窓から出てきたカゴに入った対価に応じてなにかをかえす。
船頭で販売者は一人。
頭からズッポリ大布被った布おばけ。
彼らの種族は日光が得意ではないせいだ。
「おー、ユキたー、ひさしーの。かえってきたたときーとったが元気そーだぁ」
バサッと頭部の布を払ってつるりとした青い頭部を晒して大きく手を振ってくれる。開かれた指の間には薄い水掻きが張っている。
あれ?
知らないヒト?
右目の上から頭部にかけて傷のあるクルゼさんではないしと見ていると行商人はけらけらと笑った。
「おー、ユキたーにまぁた忘れられたかー。クルゼの弟のダゼックだー、溺れた後の調子はどーだね?あー、でーじょうぶそーだなぁ。なによりなにより」
クルゼさんの弟?
いたっけ、そんなヒト?
ダゼックさんは気にしたふうもなく商品を並べていく。
「人口増えとるけー主食がいるだろー、あとはよろず屋の注文品だぁなぁ」
縄で編まれた袋にごろごろと人の頭ぐらいの実が入っている。ダゼックさん達の種族は作物採取育成を得意としていて舟で行ける範囲で物々交換な商売を主体におこなっている。
よろず屋がなにで支払いをしているのかは知らないけれど、必要な物を僕らは受け取るだけでいい。
「特殊、メイク?」
のぞみちゃんがこぼした言葉にダゼックさんが反応した。
「おー、めんこいあんよちゃん! あああ、もったいない。すーっぽり隠してもーて……あのフォルム、ああ、あんよちゃん、お嫁にこんかいね?」
飛びかからんばかりの勢いでのぞみちゃんのまそばに寄るダゼックさん。
足フェチ?
そういえば、のぞみちゃんの格好もこちらのモノだけど、来た時はジョギングウェアだよね。うーん、生足だっけ?
「おにいちゃん」
泣きそうなのぞみちゃんが僕を見ていた。
ああ、言葉わかんないんだよね。
「ゼダックさんが、お嫁にこないかって」
ゼダックさんが言ってる内容を簡単に教えてみた。
あ、この実、果汁おおそうでいいモノっぽい。
「いっ、いやああああああ!」
絶叫に顔をあげるとのぞみちゃんがゼダックさんを水路に突き飛ばした瞬間だった。
えーと。
「仲良し?」
「っんで、そーなるんだよ! 商人のあんちゃん大丈夫かよっ」
なぜか焦っている円君に怒られた。
だってゼダックさんたちの種族は普段水中生活だから大丈夫。そう説明すると、円君は深々と息を吐いて、「俺、知らねーから。それに商売相手に暴力はダメだろーが」そんなふうにこぼした。
あ。
そっか知らなかったら焦るよね。
「セクハラ、死すべし!」
えっと、のぞみちゃんの言葉は通訳しない方がいいよね。
「あんよちゃんは元気だぁなぁ」
ゼダックさん、気にしてないみたいだし。
これだけあればいろいろできることができたかな?
ゼダック「あんよちゃんはふくらはぎのラインと足首の細さがそそるなぁ」
のぞみ「へんたいーーー」
円「見捨てられてる…」