レッツ登山
試行錯誤中です。
サブタイトルを考えるのが辛い...
時間を変更しました。
このままだといつまでたっても異世界に行けそうに無かったので。
残りの仕事期間を終え、遊び期間に入った。
様々な場所へと遊びに行った、そのうちのある日。
「じゃあ、行きましょう?隠岐那」
「はい」
今日は近くで一番高い山━━テオ山の頂上が目的地だ。頂上は雲より高い所にあるが、気温は常に春の陽気と言う変わったところだ。そこから見る雲海、青い空で天地が引っくり返ったように見えるらしい。もちろん、穴場の絶景スポットだ。
「楽しみですね」
本当に楽しそうな声でサナトスが話しかけてくる。
「そうですね。どうやっていきますか?」
「そうですね...とりあえず山の麓まで飛んで行きましょうか。ここ周辺を歩いて周りの方々を無闇に怯えさせるのも嫌ですし」
この家の周辺の人々はサナトスが死神であると言うことに気付いている。最初は隠していたのだが、いつの間にかバレて噂が広がっていた。そのおかげで、サナトスがこの周辺を歩いていると人々は怯え、怖がり、避ける。顔がバレているのはこの周辺だけなのでここから離れればサナトスが死神だとバレることはない。
「その、飛ぶと言うのは...」
「転移です」
「ですよね...多少ズレても文句は無しでお願いしますよ」
「ああ、私が転移を唱えますよ」
「え...」
「いきますよ。せーの」
「いや、少し待ってくだ━━━」
「《転移洞》」
サナトスが転移魔術を唱えると、二人を柔らかな光が包み込む。二人を包み込んだ後光が強くなっていき、一瞬かなり光が強くなった後光が消えた。もうその場には二人の姿はなかった。
「着きましたね」
「は、はい...うぷっ」
この転移魔術《転移洞》は普通の転移に比べ楽なので愛用する人が多いのだが、転移とは異なり転移洞という時空を通りぬけるのでそこを通っている時間、つまり道中がある。そしてこの術、展開者が雑に組むと物凄い転移酔いを引き起こす。サナトスの《転移洞》はサナトスのもう直せないほど長年の癖が反映されていおり、その上魔術を簡易化した魔法を使っているため酷い転移酔いを引き起こすのだが...
「どうしました?」
サナトスは全く酔わないのだ。しかし転移酔いのことは知っているので心底『自分の転移は酔わない転移』だと思っている。
「いえ、何でもありません」
「そうですか?少し休んでいきます?」
「そうさせてください」
「ふふふ。隠岐那も歳ですね」
中跳はなんとも言えない顔をしたが、反論する余裕もなく。近くの木陰へ歩き座り込んだ。そして、山を眺めて中跳が言う。
「...テラ山を登るのは思ったより大変そうですね」
「そうですね。思ったより『山』と言う感じで整備された道もありませんし」
「もったいない気はしますが転移しますか?」
サナトスは少し考えて答えた
「...いいえ、歩きましょう。幾ら隠岐那が年寄りでもこのくらいは歩けるでしょうし」
「いや、私が心配しているのはサナトスさ「ん?」すいません。モルムが途中で力尽きないかと言うことですよ」
「ふふふ。あり得ません」
「では力尽きても背負いませんよ?」
「大丈夫です!」
サナトスは頬を膨らませ拗ねてそっぽを向いてしまった。中跳はその姿を穏やかな顔を崩さずに見ていた。
「隠岐那、そんな事を言える余裕があるならもう登れますね?」
「いえ、もう少し━━━」
「の・ぼ・れ・ま・す・ね?」
そう言うサナトスの顔は笑顔だった。何処からどう見ても笑顔なのだが否と言わせないだけの気迫があった。
「...はい」
「では、行きますよ」
そうして、テラ山登山が始まった。
━━━登り始めて2時間━━━
今日は天気がよく、森の木々がとても綺麗に光っていた。この山の樹木の葉はかなり大きく、小学生程の大きさならば余裕で傘にできるほどの大きさがある、そして光が軽く透けるくらいに薄いのだそのため、この森の道は天気のいい日は緑の道となる。
その緑の道を見てサナトスが感嘆の息をもらす。
「これは結構いいものですね。綺麗です」
「そうですね、木漏れ日と緑の光の共演が素晴らしいですね」
「そうですよね。このような森には大体妖精が住んでいるのですが会うことができるでしょうか?」
「出会った妖精が攻撃的で無いことを祈りますよ」
「攻撃的な妖精などいるのですか?」
「結構いますよ?まあ、大抵人に切り開かれた森等にですがね」
周りを木々に囲まれた場所にいるとき、何処からか視線を感じる。
そんな経験は無いだろうか?それはそこに住んでいる妖精があなたを見ている場合もある。しかし、最近では妖精が住み着くような森は少なくなり、それにともない妖精の数が減ってきている。
そして、森が少なくなっている原因は『人が森を切り開いた』と言うことが多い。この場合棲みかを強制的に追い出された妖精達は人間を怨み、襲うようになってしまう。
そんな中跳の話を聞いて少し怖がっているサナトスに中跳は笑いかける。
「大丈夫ですよ、この森は切り開かれた形跡もありませんし、大体この森に住んでいるのはエルフ━━━『森と共存共栄する者達』ですよ?彼等が人間にそんな真似させるわけがありません」
「そうですね。ああ、エルフにも会ってみたいですねぇ」
「会いに行きます?気配からしてそう遠くない場所に里があるようですよ」
「いいのですか?」
「彼等は森を攻撃するものには攻撃的ですが別に排他的と言うわけでは無い━━むしろ友好的なので大丈夫だと思いますよ」
「いえ...そうではなくて、貴方はいいのですか?」
「ああ、全く問題ないですよ。行きましょう」
1時間程歩いてエルフの里へ着いた。
里と言っても特に家がたっているわけでは無く、里と言うよりは大木の生えている森に見えるのだが、簡単な柵と門がある。一見人の離れ、柵だけが残った元人間の集落に見えるが、元気に遊ぶエルフの子供達がここが現役のエルフの里であることを教えてくれる。間違いなく木霊が居るような樹ばかりが生えている。
「ここが...家はどうなっているのですが?」
サナトスは感嘆の声を上げたあと、中跳に質問をした。
『家はどうなっているのか?』
この質問はエルフの里を始めてみた人が必ずと言っていいほどする質問である。その理由は何処にも家らしき建物が見えないからだ。どこを見ても柵と門、畑以外は樹、樹、樹、樹しかない。
「それはですね。あの樹の中が家になっているのです。中が空洞になっていましてね?それもただの空洞じゃなくて部屋、そして家具も揃っていると言う優れものです」
中跳は自分の物であるわけでは無いのに、得意気に説明した。
大方説明は間違っていないが、詳しく説明しておこう。
この樹の名は『ハウスツリー』大体一本につき15人程が住んでいる。苗は大体16人目が産まれた時に植えられ、その子が大人になり家族を持ったときには成木となっている。中にはしっかりと椅子にテーブル、ドアもある。加工して作るわけでもなく自動的に出来ているのだ。樹でできているもののかなり頑丈で超大型台風辺りなら何の問題もない。どんな家ができるのかは出来上がるまでわからないのだが、望みの家を作る品種改良の研究がおこわれているとかいないとか。まあ、そんな謎の多い樹だ。
「そうなのですか!?」
サナトスは非常にいいリアクションをした。
その反応を見て中跳は満足そうに頷く。
里の奥からはエルフの子供たちが無邪気な顔で走ってくる。