全裸徘徊に名前がついた
今は昔、
とある国の
王様がですね、
服屋に
新しい服を作れ!
と命じました。
つってもねえ、
今までにない服ってさ、
漠然としすぎてない?
服屋は困って
いろいろ調べたり考えたりしました。
考えたあげくに服屋は
バカには見えない服、
とやらを献上しました。
服屋曰く
現代科学の粋を結集して作った
すごい服だ、
とのことでした。
どの程度バカから見えなくなるのか、
そもそも、なぜバカには見えないのか、
については
研究成果を学会に発表し次第
王家にレポートを提出するので
それを参考にしてくれ、
というような旨を
服屋は伝えました。
王様には
その服が見えなかったのだけども、
空気をよんだ王様は
「なかなかええんちゃうの、これ」
と絶賛したといいます。
王は服屋に
法外な代金を支払い
かつ
服屋を名誉市民に認定しました。
で、王様は
いたくこの服を気に入ったようでして、
それをきて
というかほんとは何も着ずに町にでて
「どうよこの服。
バカには見えへんねんで。」
と言いながら
全裸で町を闊歩する事にしたのです。
それをみた国民は
空気を読んで
なんてすてきな服だ!と絶賛しました。
というのは
ここで王の機嫌を損ねたら、
せっかく特別に祝日になった日が
来年以降
祝日にならない可能性があるからです。
東町商工会の会長の口癖を借りるなら
「長いものにはまかれろってね。
泣く子と地頭には勝てんって話さ。」
まさに、そんな感じだったのです。
ちなみに、この国では
祝日には国民全員に
国から紅白饅頭が贈られるのですが、
これがまた、うまい。
国民みんなが楽しみにしていました。
でも、ある子供が王をみて
「裸やんか、王さん」
と指摘したのです!
その子供がそういった瞬間、
日頃からみんなに
かわれているクラスメイトが
ある日いきなり変にキレて
一気にクラス中が
しらけムードになったとき
のような雰囲気になり、
さんざんだった、と言います。
しかし寛大な王はそれを許し、
次の年からもこの日を祝日に定め、
バカには見えない服を着て
パレードをおこなったのです。
国民は年に一度のパレードを
楽しみにしていました。
が、これは
国の公式な歴史書に
書いてあったことなので
実際はみんな呆れていた、
というのが正しいのではないか、
饅頭目当てだったから
みんなビビったのではないか、
お前さ、ガキだからって空気くらい読めや
という感じだったのではないか、
と専門家は指摘します。
最新の研究によると、
言われるまでもなく
王は、気づいていました。
服なんて着てなくて裸だ、
ということに。
それなのに、全国民の前を
全裸で闊歩することにした理由は、
城の中で
バカには見えぬ服を着て
歩いているうちに
というか、全裸でうろつくうちに
今まで気づかなかった新たな快感に
気づいたからでした。
王の没後、
発見された王自身の日記に、
理由についての
暴露がなされていたのでした。
この王は、
この大陸の国々が
分割統治される前の超大国、
ガルシマ帝国の正当な王家の一つ
ストリー家の流れを汲んでいました。
そこらへんから
全裸で町をうろつくことを
ストリーキングと
呼ぶようになったのです。
ちなみに、王の裸っぷりを指摘した子供は、
成長するに従い賢さを磨き上げ
最終的に王宮に就職しました。
玉座の間の隅に
なんだか脱ぎ捨てられたような服が
落ちているのが
謁見の度に気になってはいたのですが、
まあ、べつにいいか、
と考えて放置していました。
じつは、それこそが
バカには見えぬ服だったのです。
献上された日に
王が落としてしまって見失ったのですが
誰にも見えないから
そのまんまになっていたのでした。
めでたしめでたし
どっとはらい。