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純白姫  作者: こころ
2/8

1話

さぁ、始まりました!この「おはなし」が終わるとき、純白姫はどうなっているのでしょうか。それでは、どうぞ!

「――――さぁ、こっちにおいで――――」

誰かが私を手招く。ぼんやりしていて誰か分からない。

少しずつ少しずつ近づいていくと急に引っ張られた。

「つ~かまえた。これでお前はわしのものだ」

不気味な笑顔に身体が動かない。

だめ……逃げなくちゃ、逃げなくちゃ。


あぁでも……私はもう、『もの』になったんだ。



ひんやりとした風に目が覚める。起き上がって眠たい目をこすると、ジャラッと足元で音がした。

布団と呼ぶには薄すぎる布を剥ぎ、ずっしりとした鉄球付きの足枷あしかせを見る。

見ていたって仕方がない。どうせ外せないんだから。

深呼吸をしてゆっくり目をつむり、朝の光が漏れた小さな格子の窓に祈りを捧げる。

「今日も…平和でありますように――――」

毎日毎日、同じ願いを光に捧げる。


「おぅ、おはよう。今日も早いなぁ……って目、赤いぞ?大丈夫か?」

声のしたほうへ目を向けると甲冑かっちゅうを身にまとった兵隊さんがいた。頭には何も被っておらず、黄緑色の髪と瞳が日の光でキラキラと輝いている。

「おはようございます、兵隊さん。強く目を擦りすぎたんだと思います」

「また兵隊さんか。俺にはペリドットっていう名前があんだよ」

少し怒ったふうに言う兵隊さん。

「私はあなたの名前を言う権利などありません」

「それ、ホントに言ってんのか?だってお前は」


「奴隷です。私は…奴隷です」


淡々と、そしてきっぱりと答える。何も間違ってなどいない。

兵隊さんは目を見開いたと思うとすぐにため息を吐いた。

「そう…だったな」

「はい、そうです。だから私はあなたの名前も人柄もすべて知ってはいけないんです。私と兵隊さんは地と空の差以上にありますから。こうやって話しているのも本当はいけないんです」

あたりまえのことなのになぜ、眉を潜めるのか分からない。


「そんなことより、新聞を持ってきていただけないでしょうか」

「そうだと思った。ほらよ」

「いつもいつも申し訳ありません」

鉄格子の隙間から新聞をもらいベッドに腰掛ける。ここは牢屋。牢屋にはベッドと手の届かないところに小さな格子の窓がある。イスや机なんて贅沢すぎるくらいだ。

新聞を開けてまず、目に飛び込んでくるのは国外の出来事。政治、娯楽、スキャンダル……。いつもの記事。いつもの出来事。いつもの日常。それが「あたりまえ」だった。

ペラッとめくると見出しに「怪盗、また現る!」の文字。宝石だけを盗む怪盗でここ数ヶ月で4件も被害があったという。しかしこの怪盗、ただ宝石を盗んでいるわけではない。貴族の横領、捏造ねつぞう、密輸、人身売買……。今までこの4件の悪事が怪盗の手によって暴かれ貴族が没落していった。


「この怪盗は何がしたいんでしょうか」

「んっ?あぁ、『怪盗ノワール』のことか。自分で悪いことして、自分で悪いことを暴く。矛盾してるよなぁ。でも、俺はいいと思うぞ?宝石が汚い貴族のもんになってるなんて耐えられんわ。まぁ、宝石を助けてるって意味でだけどさ」

「眠い…」とあくびをした兵隊さん。宝石を助ける…か。

「闇が闇を暴く…ということですね」

「どいうことだよ?」

「それは」

ガシャン。


あぁ―――合図だ。


ギィィィィィィと嫌な音が牢屋中に響く。いつのまにか兵隊さんも敬礼をしていてまったく動かない。私も新聞を閉じ、さっと立ち上がって鉄格子に近づく。「あの方」はこうでもしないと……


人を殺しかねない。


だんだん近づいてくる足音に耳を澄ます。少しして足音が止まる。

「おはようございます、陛下」

完璧な1礼を心がける。しかし頭を下げていても、不満そうなオーラが出ているのが分かる。

「陛下だけとは…無礼な奴だな。我の名を言え」

「はい、ルベライト陛下でございます」

すべてのものを焼き尽くすような真っ赤な髪。ギラギラとした赤黒い瞳。このシトリン王国で最も最高位の地位に立つお方。

「今夜も楽しみにしているぞ、サファイア」

「もちろんです。ルベライト陛下の仰せのとおりに」


頭は下げたまま。すると、髪を一束取られる。

「いつ見てもなんと美しい純白。我のもの・・にふさわしい髪」

「もの」……。今日の夢は嘘ではなかったようだ。

「傷1つでもつけてみろ。分かっているな?」

「はい。『契約』は必ず守ります。私はルベライト陛下の奴隷ですから」


白髪はくはつ」を持つのは世界で私だけらしい。


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