よくある話じゃない?
※書いたところまで投稿して完結にします。
※これを投稿したのは皆さんの温かい感想を見て心を癒したかったからです。
よくある話じゃない?
公爵家のご令嬢が花が欲しかったなんて。私のことなわけだけど。そこにある……なんていう花か知らないけど綺麗だったから欲しかったの。でも、木の上だったから私じゃ無理だと思って。だからいつもみたいに貴方に言ったのよ。欲しいって、それで貴方は取ってくれようとしたでしょう?
え? そこじゃない?
分かってるわよ、ちゃんと答える気はあるから。
まあ、それで貴方は未熟だったから落ちて―――いいじゃない、本当の事でしょ。分かってるわよ、本当の事だからって何でもかんでも言ったら駄目だって事は、今はね。
とにかく、貴方は落ちて、下にいた私は貴方の下敷きになった。
で、これもよくある話だけど。
別の世界の記憶っていうものを思い出したのよ。頭を打ってね……って、そんな可哀想なものを見る眼で見ないでよね。ああほら、泣かないでってば。頭は可笑しくなってないのよ!
よくある話じゃないって……別世界の中ではよくある話みたいよ。と言っても、物語みたいなものでってことでは。
私はその別世界の記憶に取り込まれることもなかったし、別人格が乗り移ったりはしてないわ。ちゃんと今まで生きてきた記憶があるし、全員のことを覚えてるわよ。
これもよくある話だけど、ここが別世界にあった乙女ゲームっていうものにそっくりなのよ。
乙女ゲームって何かって、あっ、そっか。私は分かるけど、貴方達は分からないんだったわね。
乙女ゲームって言うのは、って、機械ゲームも分からないものね……うーんと、つまりは可愛い女の子が色んな男の子達を恋に落としていくっていうものなのよ。え? 物語じゃないわよ。そうじゃなくって、シュミレーションゲーム……ってそれも分からないんだったわね……。まあ、とにかく。
美男子たちが沢山出てきて、誰と恋をするか選ぶようなものがあるの。
男の子達の個性は色々あるから、主人公のヒロインは好きな男の子達を選べるって言うか、あああもう! いいのよ、そんなこと!
とにかく、美少女一人と美男子沢山って思っててちょうだい。
それより重要なのは、その中で私は悪役だってことよ。ヒロインっていうか、主人公をとことん虐めるのよ。婚約者をとられそうになったら。
嫌がらせをして学園から追い出そうとするの。
で、最終的に私は悪事がばれて隣国に流刑よ?
酷いわよね。子供だったら嫉妬くらい誰だってするものでしょ。可愛い痴情の縺れくらい寛容に受け止めるべきだと思うわ。貴族ならよくあることじゃないの、ねぇ?
……そうそう、学園っていうのは五年後に入る、アレよ。
婚約者は、勿論今の婚約者の事よ。
あ、言っておくけど今は私、あの人のことなんとも思ってないわ。
え? 嘘言うなって……なら、今度証明してあげるわよ。
とにかく、何を言いたいかって言うと。
「グレイス、私は大丈夫よ! だから、もう泣き止んでちょうだい!!」
「う、うわあああああああああああ!!!! プリシラ様が壊れたああああああ!!」
「……いやいやいやいやいやいやいや壊れたお嬢様壊れた俺死ぬ死んじまうしぬしぬしぬしぬ」
「ソレルも正気に戻りなさい!!」