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天照の巫女  作者: 櫻華
第二部 大遠征
8/13

第七話『テンプルサイドでの攻防−守る者と戦う者−』

今回、オヒョウ様の『私家版 エルダー・テイルの歩き方 −ウェストランデ編−』より西武蔵坊レオ丸さんを……



山本ヤマネ様の『辺境の街にて』より櫛八玉、バルト、リーネ、ユーリをお借りしております。




オヒョウ様、山本ヤマネ様、キャラ使用許可……本当にありがとうございます!!






平成27年11月24日、加筆・修正しました。




平成29年1月28日、加筆・修正しました。






──〈アキバの街〉と〈テンプルサイドの街〉の間は…ゲーム時代、街同士の間の移動に約20分程かかっていたが……〈大災害〉以降、ゲーム内時間と同等の計算が必要になり、2時間で一日であった事から……×12倍の計算で考えると約4時間となる。




──しかし……これは、モンスターとの戦闘を計算に入れずに考えたものである為、実際はこれよりも時間がかかると考える。






──しかも、これは〈アキバ〉〈テンプルサイド〉間を最短距離で移動した場合の計算である。






別ルートを移動する場合は、この時間計算がまた違ってくるのである。






◇◇◇






──朝霧達〈放蕩者の記録デボーチェリ・ログ〉のテンプルサイド合宿組は大人数の為、比較的ゆったりとした移動スピードで移動しており、約二日という時間をかけて…本日〈テンプルサイドの街〉へと到着しようとしていた。




〈テンプルサイドの街〉が見えてきたのに合わせ、朝霧は合宿組一行に一度止まる様に指示を出した。


「……どうどう。

皆、あそこが今回お世話になる〈テンプルサイドの街〉だ。

皆、常識ある人間だと思っているが……お世話になる以上、街に住む〈大地人〉の皆様と街を拠点とする〈太陽の軌跡サン・ロード〉のギルドの皆様にきちんと挨拶する様に。

わかったら返事は?」

『はい!!』

「……宜しい。では、再度出発!」




──皆の元気の良い返事を聞き、笑みを浮かべた朝霧は馬を再び走らせ、〈テンプルサイドの街〉へと歩みを進ませた。






◇◇◇






──〈テンプルサイドの街〉へと到着した一行は、この街の顔役の一人である〈大地人〉の執事バルトと〈太陽の軌跡サン・ロード〉のギルマスである櫛八玉の二人に挨拶をするべく、とある豪奢な屋敷へと来ていた。






──屋敷前へと到着すると朝霧は櫛八玉に念話をかけ、二人共に屋敷の外へと出てきてもらうように頼んだ。






──しばらくして、〈テンプルサイドの街〉の顔役の一人にしてこの屋敷のナイスミドルな執事のバルトとギルド〈太陽の軌跡サン・ロード〉のギルドマスターにして屋敷の持ち主である〈神祇官カンナギ〉の櫛八玉が揃って出てきた。


「皆、挨拶!」

「「「本日から二週間、お世話になります!!」」」


朝霧の合図の後、一斉の挨拶に……バルトと櫛八玉は思わずびっくりしていた。


「……という訳で。

二週間の合宿中は、〈テンプルサイドの街〉の中も利用する機会は度々あるかもしれないからな。

礼儀として…この街の顔役であるバルトさんと、この街に拠点を置くギルド〈太陽の軌跡サン・ロード〉のギルドマスターである櫛に最初の挨拶をした訳だ」


朝霧の説明を聞いて……バルトは笑みを見せ、櫛八玉は苦笑するしかなかった。






◇◇◇






──バルトと櫛八玉の両名に挨拶を済ませた後、合宿メンバーは今日の昼食と夕食の食材集めと街に住む〈大地人〉達に挨拶をしに街中へと散っていった。






──朝霧の方はそのまま屋敷内に入ると、櫛八玉の部屋(執務室)へと部屋の主である櫛八玉本人から案内された。




通された部屋にあるソファーへと腰掛けた朝霧に、向かい合う様に腰掛けた櫛八玉は〈魔法の鞄〉から〈雲隠れのマント〉と〈狐のヒーロー仮面〉を取り出し、それを手渡した。


「先輩。お約束通り、借りていた二つのアイテムをお返しします」

「ああ、確かに返してもらった」


受け取った朝霧は、それを自身の〈魔法の鞄〉の中へとしまい込んだ。






──しばらくして……扉をノックする音の後、二人のメイドが入ってきた。




紅茶とおぼしきものが入っているポットや茶器、お茶請けのクッキーの乗ったワゴンを押してきており……テーブルの近くまで来ると、ショートカットの小さい方のメイドは紅茶をティーカップに注ぐと朝霧と櫛八玉の前に各々置き、ツインテールの元気そうなもう一人のメイドはクッキーを乗せた皿を各々の前に置いていた。


「ありがとう、リーネちゃん。

ユーリちゃんは、今日も美味しそうなお茶とお菓子をありがとね」

「いえ、これもお仕事ですから……」

「ごゆっくり。どうぞ。です」


櫛八玉からのお礼の言葉に、リーネとユーリは照れながら頭を下げると執務室を退室していった。






──二人が退室してからしばらく経った後、朝霧は出された紅茶を一口飲んだ後に口を開いた。


「……現状は、〈ミナミ〉脱出組が〈テンプルサイドの街〉近くへとやって来るのは、どう早く見積もっても……明日か明後日辺りになるそうだ」

「随分、時間がかかっているみたいだね。

……って事は」

「ああ。〈Plant hwyaden〉からの追手、かなり巧妙な手で襲撃してくるらしくてな。

……どうも、かなり指揮し慣れた者が追跡部隊を指揮しているみたいだ。

脱出組の方は、孔明が趣味でやっている軍略研究の知識を総動員して、周辺の地形の利を上手く活かして何とか追手を撒いている状況らしい」


朝霧から伝えられた脱出組の厳しい現状に、櫛八玉も苦い顔をした。


「脱出組の状況は、かなり厳しそうだね。

先輩、この街の─対〈Plant hwyaden〉対策の件は、一体どうなっているのかな?」


櫛八玉の問い掛けに、朝霧は自信満々の笑みを浮かべた。


「それについては問題ない。今日中に“施す”様に動いてもらっている」

「は?動く??」


朝霧の言葉の意味を理解出来ない櫛八玉を脇に置き、朝霧は“とある人物”に念話を入れた。


「……首尾は?」

『……準備は万端です。

持国天様、増長天様、広目天様、多聞天様の四天王像は、前日までに開眼を済ませてから各々の守護方角の位置に、サブ職業〈大工〉のヘラクレス殿が造ってくだされた御堂に入っていただいて、お祀りまでは済ませてあります。

……これから、結界を構築する儀式を執り行います』

「……八雲、全てお前に任せた」

『……承知しました』


その一言を最後に、朝霧は八雲との念話を切った。






◇◇◇






──遡る事、30分前。







──〈堕ちた天空の寺院フォーリンテンプル〉で、とある巨大な神像のある一室内に一人の僧侶姿の男性がいた。






──この神像は、ヴァイロ・ルシャーナ神という古アルヴ族が信仰していた神様を模したもの……という設定で、この神像は設置されているエリアゾーン内にいる者に対し、悪意・害意を抱く存在の侵入を阻む結界の様な力場を発生させるという特殊効果を持つ〈ユニーク・オブジェクト〉であり、ゲーム時代は〈堕ちた天空の寺院フォーリンテンプル〉内にあるボス戦前の休息場として多くのプレイヤー達が利用していた。






蒼牙からの関係者情報によると、この神像設定に関して─〈F.O.E〉の開発部門内で〈堕ちた天空の寺院フォーリンテンプル〉の背景に合った感じの神像を創ろうという話になり─出来上がったヴァイロ・ルシャーナ神の名前は、大日如来だいにちにょらいの梵名マハー・ヴァイローチャナと毘盧遮那仏ビルシャナの名前から、各々文字って名付けられた…と聞いている。




──神像の見た目も一応、大日如来と毘盧遮那仏の仏像を色々調べた様だが……調べた上で更に独自のデザインを加えたらしく、大日如来と毘盧遮那仏の面影は一部のみで…ほぼ別物と言ってもよい代物と化している。






彼─八雲としては、中途半端な知識と大日如来と毘盧遮那仏の姿をごちゃ混ぜにし、変に魔改造する位なら……いっそ、ユーララ神みたいに完全なオリジナルで創って欲しかった……というのが正直な気持ちだった。






(……しかし、今は中途半端な知識と独自デザインの魔改造を加えられたとは言え、大日如来様を参考にしてくれた事は“一応”有り難いと思いますね。

私としては、結界を発動させる時に─随分な魔改造はされているけれど─馴染みある存在に近い代物が近くにあれば色々とイメージし易いですしね。

とは言うものの……一僧侶としては、この神像の存在は、大日如来様とは全くの別物!

『大日如来と毘盧遮那仏の姿を参考にしました』などという世迷い言を言っている者の事を……私は、断じて!絶対に!!認めないですからね!!!)






──そんな複雑な思いを抱く八雲の前には、立派な護摩壇ごまだんが設置されている。




護摩壇の前に腰掛けた八雲の両手には、右手に〈霊験の数珠じゅず〉、左手に〈折れた神鉄剣の刀身〉から〈鍛冶屋〉に手作りで精製してもらった〈五鈷杵ごこしょ〉が各々握られていた。






◇◇◇






──この〈霊験の数珠〉も、〈折れた神鉄剣の刀身〉で手作り精製された〈五鈷杵〉も、どちらとも最大MPを増加させる効果を持つ代物だ。




今回の為に、朝霧が大奮発して〈放蕩者の記録〉の倉庫内から幻想級装備の〈霊験の数珠〉と激レア素材アイテムの〈折れた神鉄剣の刀身〉を提供してくれた。




更に、現在八雲が着ている幻想級装備の〈神聖なる神秘の法衣〉も最大MPを増加させる代物である。






◇◇◇






護摩壇に火を入れて、作ってもらった護摩木ごまきを焼いて護摩焚きごまたきを行い……加持祈祷かじきとうの準備を整える。




──丁度、儀式準備が整ったタイミングで朝霧から念話がかかってきた。



『……首尾は?』

「……準備は万端です。

持国天様、増長天様、広目天様、多聞天様の四天王像は、前日までに開眼を済ませてから各々の守護方角の位置に、サブ職業〈大工〉のヘラクレス殿が造ってくだされた御堂に入っていただいて、お祀りまでは済ませてあります。

……これから、結界を構築する儀式を執り行います」

『……八雲、全てお前に任せた』

「……承知しました」



そのやり取りの後、朝霧の方から念話は切られた。






フウッ……と息を整えた後、八雲は〈霊験の数珠〉と〈五鈷杵〉をしっかりと握りしめながら印を組むと、よく通る様な澄んだ声で真言を唱え始めた。






◇◇◇






念話の後、しばしのティータイムを堪能していた朝霧と、未だ困惑の色を隠せない櫛八玉だったが……しばらくして街全体を包む空気の質が変化し、櫛八玉は朝霧に問い掛けた。


「先輩、私の知らないところで何かしましたか?」


櫛八玉の問い掛けに、ニヤリという感じの笑みを浮かべながら朝霧は答えた。


「……櫛、正解だ。ついさっき、〈テンプルサイドの街〉全体を覆う結界が施されたところだ」

「……いつの間に……」


朝霧から聞かされた内容に、櫛八玉はただ驚く事しかできなかった。






──驚いている櫛八玉の様子に、苦笑していた朝霧の耳に念話の着信音が鳴った。




急ぎステータス画面を開くと、八雲からの念話要請だった。




朝霧は、念話を繋ぐと声を掛けた。


「八雲どうした?」

『御前、結界は成功しました。

……ただ、MPの残量はほぼゼロの枯渇状態です。誰か迎えを下さいませんか?』

「……わかった。すぐに手配し、迎えをそちらに寄越そう」

『……ありがとうございます』


八雲からの結果報告と迎え要請の念話を聞いた朝霧は返事を返すと、八雲との念話を切り……手早く迎えの手配を始めた。


「十兵衛。すまないが、〈堕ちた天空の寺院フォーリンテンプル〉の〈神像の間〉にいる八雲を迎えに行ってやって欲しい。

八雲の現在のMPは、枯渇状態だから……必ず、回復職を一人は連れていけ」

『了解した。すぐに迎えに行ってくる。ライム、行くぞ!』

『ええ〜!!』

『つべこべ言わずに、さっさと来い!』

『うわぁ〜!引っ張んないでよ〜!!』


念話の向こう側で、いつも通りの漫才を繰り広げながら……十兵衛とライムが、八雲を迎えに行く為にすぐに行動を開始した様だった。




──もっとも、途中で念話は切られたので……おそらくなのだが。






切れた念話の向こう側で繰り広げられていた二人の漫才に、朝霧は苦笑していたが……別の誰かからの念話要請が入った。


(……誰からだ……?ん?ソフィア??)


念話要請は、〈共鳴の絆〉の同志であるソフィアからだった。


「……ソフィア、一体どうしたんだ?」

『……御前、突然すみません。

〈テンプルサイドの街〉近くへ辿り着くおおよその目処がたったので、お知らせしようかと思いまして……』

「……いつ位になりそうだ?」

『今、孔明さんが追っ手の方々を半日だけ足止めする策を実行して……時間を稼いで下さいました。

半日の間という猶予ができましたので、しばらくは襲撃の心配をする必要が無くなりました。

これから、足止めされた追っ手と出来るだけ距離を稼ぐ為に半日間は強行軍になると思います。そこから計算して……明日の明け方頃になると思います』


ソフィアからの言葉を聞きながら……急ぎ地図を開き、ソフィアの移動進路を予測する。



「わかった。あまり無理はするなよ。

〈テンプルサイドの街〉近くに護衛部隊を待機させてあるから……安心して来るといい」

『御前、御心遣い……感謝します。では、いずれまた』

「……ああ、またな」


ソフィアとの念話を切ると、朝霧は〈フレンド・リスト〉を開いて黒雷に連絡を入れた。


「黒雷。すまないが、現実世界での秩父山脈付近を偵察しに行ってくれ。

……おそらく、〈ミナミ〉脱出組はその辺りの山中の奥深い森の中を進んでいる最中だと思う」

『わかった。……だが、偵察だけでいいのか?何だったら、追っ手に襲撃をかけるが?』


黒雷の提案を朝霧は断った。


「……その必要は無い。孔明が半日という猶予を作ってくれた。

追っ手は当初の予定通り、〈テンプルサイドの街〉近郊で迎え撃つ。

その為にも、黒雷には追っ手の数とパーティー構成を探ってきて欲しいんだ」


朝霧からの頼みを聞いた黒雷の返事は、決まっていた。


『……わかった。〈斥候〉のサブ職業を活かして、できるだけ情報を手に入れてくる』


そう返事をすると、黒雷は念話を切った。




──黒雷との念話が終了して、数分も経たない内に次の念話が掛かる。



次の念話の相手は、〈テンプルサイドの街〉を囲う結界の境界線で戦闘訓練を兼ねた実地調査を行っていたカンザキからだった。


『御前、さっき実地調査が完了したぞ』

「……結果は?」

『結果としては、侵攻側のメンバー全員のステータスが大幅に低下、防衛側のメンバー全員のステータスが大幅に上昇してたぞ。

ステータスの変動値は、メイン職業の違いで多少の差はあったけど……まぁ、低下・上昇の平均値はほぼほぼ変わらない位ってところだな』

「(……それならば、〈Plant hwyaden〉の追っ手とは正面から戦闘を仕掛けても、十分に勝機はあるな。より確実性を求めるならば、“私が”背後から奇襲に回って追っ手の戦力を削ぐ…という方法も付け加えた方が良さそうだな。)

カンザキ、ありがとう。それと、実地調査をご苦労様。

後は、ゆっくりと休んでくれ」

『おう。作戦決行まではゆっくり休ませてもらうぜ』


そう返事を返すと、カンザキは念話を切った。




──フウッと息を吐く朝霧に、櫛八玉は言葉を掛けた。



「先輩、忙しそうですね。

さっきから、念話をかけてばかりですから」

「仕方がないさ。

今の私は、“〈放蕩者の記録〉の合宿の責任者”と“〈ミナミ〉脱出組の護衛部隊の総指揮官”と“〈テンプルサイドの街〉防衛の総指揮官”の三つの役目を掛け持っているからな。

その関係の念話が……っと、すまない櫛。また、誰かからの念話要請の様だ」


そう言って、ステータス画面を開くと……『西武蔵坊レオ丸』の名前が表示されていた。


「法師!?」


念話要請の相手が誰なのかが判り、朝霧は驚きつつも念話を繋いだ。


「……もしもし?法師、私に何か御用でしょうか?」

『いやぁ〜、お忙しい処誠に申し訳なしです。

八雲君から、〈テンプルサイドの街〉に結界を張った旨を聞きましたんですけど……、御前さんは今、どちらにおられますん?』

「街中の……〈太陽の軌跡サン・ロード〉のギルマスの部屋にいます」

『ああ、今、〈テンプルサイド〉でしたんか。

ほなまぁ……具体的にお尋ね出来そうですなぁ。

御前さんの事やし既にもう、結界の効能やら何やらの調査をしてはりますでしょ?どないな感じでした?』


レオ丸からの質問に、朝霧は少し考えた後に答えた。


「説明は簡潔で宜しいでしょうか?」

『へい、合点です。御前さんの話しやすい感じでかましまへんよってに』

「……そうですね。

模擬戦─という形で、結界の境界線付近で実地調査を行ってみたところ……侵攻側のメンバー全員のステータスが大幅に低下し、防衛側のメンバー全員のステータスが大幅に上昇するという結果になりました。

ステータスの変動値はメイン職業の違いで多少の差はあるものの、低下・上昇の平均値はほぼ変わらない位に変化している様です」

『ほほぅ、なるほど……随分とおもろい効果が出ましたもんですなぁ。

まぁ、御前さんからしたら〈Plant hwyaden〉のつまらんボケに、“〈テンプルサイドの街〉にいらん事したらハリセンでしばくぞ”位のカマシが出来て、好都合やったんと違いますやろうか?』

「そうですね。〈Plant hwyaden〉に〈太陽の軌跡〉を─テンプルサイドを攻める事を躊躇させるという意味では、最適な効果ですね」


朝霧のその言葉に、レオ丸はニヤリと笑みを浮かべながら言葉を口にする。


『ほな、それらの結果を踏まえた上で、御前さんの頭ん中では結界で得られた効果を最大限に活かした実に素敵なシナリオなんてぇのを、既に立案済みなんですやろ?』

「はい。確実に〈Plant hwyaden〉の追っ手に対抗する為に様々な状況を想定した作戦を立ててあります」


朝霧の自信に溢れた返答に、レオ丸の脳裏には〈エルダー・テイル〉がゲームだった頃の大規模戦闘レイド大隊規模戦闘レギオンレイドで多くの〈冒険者〉を率いていた時の指揮官としての彼女の声音が思い出されていた。


『ほんなら、これはワシから御前さんへのアドバイスですわ。

……害虫駆除をするんなら……目に見える範囲だけやなく、箪笥の裏や床下にも目配りしといて下さいな……見えへん所まで、徹底的に。

害虫ってのは二本足やおまへんし、……一匹や二匹だけとは限りまへんよってに♪』

(……〈Plant hwyaden〉の追っ手は、ソフィア達を追尾している者達だけではない…という事か)


レオ丸の言葉の意味をしっかりと噛み締めた朝霧は、感謝の言葉を述べた。


「法師、本当にありがとうございます」

『余計な差しで口、すみません。

……御前さんって相変わらず真面目さんで良い人やなぁ……』

「お褒めにあずかり、光栄です」

『……せやけど、あんまり生真面目過ぎてもあきまへんで?

残念な話ですけど、元の現実より今の現実の方が、Give&Takeの関係はよりシビアになってますさかいに。

今回の結界のお話かて、御前さんとワシとどっちがTakeが多いやら、判ったもんやおまへんしなってのも、余計な差しで口でしたかいな?

さてさて。まぁ御前さんの気が向いたら、〈Plant hwyaden〉のスカタンがどんだけ駄々スベリしよったかも、教えて下さいな。

……指差して腹抱えての笑い話になる、そんな朗報を期待してますさかいに』


レオ丸からの頼み事に、朝霧は快く承諾した。


「わかりました。その時は、必ず……。

法師、お身体に気を付けて下さいね」

『御前さんも、何卒御自愛下さいませ。

したらば、いずれまた、良き日佳き時に♪』


その言葉を最後に、レオ丸からの念話は切れた。





レオ丸との念話を終えた後、出された紅茶を飲み干すと朝霧は櫛八玉に言葉を掛けた。


「……ユーリというメイドの女の子に伝えてくれ。

紅茶、美味しかった……とな。

私は、これより明日の準備に取り掛かる。櫛、邪魔したな」


朝霧の言葉に、櫛八玉は首を横に振った。


「いやいや、先輩と話ができる事は全然嫌じゃないし。

先輩が、今忙しいのは半分は私達の為だし。

〈テンプルサイドの街〉に住む皆の為、宜しくお願いしますね」


櫛八玉の言葉に、朝霧は力強く頷いた。






◇◇◇






──夜中、偵察から戻ってきた黒雷からもたらされた情報では……追っ手は、“ほぼフルレイドパーティー構成だった”との事だった。






「私達、護衛部隊もフルレイド構成だったな。

(法師からのアドバイスという名の忠告もあるしな…)

なら、私は今回はフリーの奇襲・遊撃役に回ろう。

ベルク、今回の護衛部隊の指揮はお前に任せる。……頼んだぞ」

「任せろ。お前が追っ手達に攻撃を仕掛けるギリギリまでは、しっかりと敵の目を俺達に引き付けておく」


ベルセルクの頼もしい返事に、笑みを浮かべながら朝霧は細かい作戦を護衛部隊の皆に説明を始めた。


「〈Plant hwyaden〉からの追っ手と直接対峙するのは……此処、〈チチブ高地〉となる。私は、〈隠行術ハイド・シャドウポーション〉を使用した状態で敵の背後に回る。

皆はド派手に立ち振舞いながら、ギリギリまで敵を〈テンプルサイドの街〉近郊の結界内まで引き付けてくれ。無論、こちらの意図に気付かれない様にベルク、慎重に行動する様に注意してくれ。

〈テンプルサイドの街〉近郊まで敵を引き付けたら、そこで掃討戦を行う。皆が攻撃に転じた状況に合わせて、私も敵後衛の魔法攻撃パーティーに攻撃を仕掛ける。

……以上が作戦概容だが。何か質問や意見のある者は?」


朝霧の説明に、異論を唱える者はいなかった。


「では!作戦開始は明朝!

各自、それまで充分に休息を取り……作戦に備えてくれ!解散!!」


朝霧の締めの言葉を合図に、皆は各々に割り当てられたテントへと戻っていった。




皆が出ていった後、朝霧は手早く〈黒き神狐の仮面〉を装備し、装備一式を普段の緋色の巫女服から〈暗殺者アサシン〉用の漆黒色の装備へと着替えた。



それが終わると、朝霧は“とある人物”へと念話を掛けた。


「シロエ、そちらの〈エターナルアイスの古宮廷〉の方はどうだ?」






◇◇◇






──朝霧が念話を掛けた相手は……今、〈自由都市同盟イースタル〉の領主達が集まり、会議が開かれているであろう〈エターナルアイスの古宮廷〉での領主会議に出席する為に、〈アキバ〉から派遣された〈円卓会議〉の使節団の代表の一人として同行しているシロエだった。






◇◇◇






『……今日は、社交の場である舞踏会でした』

「……何だ?領主会議は、舞踏会から始まるのか?」


朝霧は、シロエの口から出た報告内容に少々首を傾げた。


『はい、そうみたいです。

何でも、舞踏会は貴族達の社交の場であり、交流の場でもあるらしく……また、同時に適齢期に達した淑女達のお披露目の場でもある様です。

今日、セルジアット公の孫娘であるレイネシア姫、オウウのレスター候の娘であるアプレッタ姫、自由都市イワフネの領主スナガ男爵の孫娘であるフエヴェル姫の三人のお姫様が社交界デビューをしてましたからね。

そこの辺りの事は、御前は多少わかりますか?

会社経営者として社交パーティーとか参加されてるでしょうし』

「……ああ、成程な。それに照らし合わせれば、何となくわかるな。

社交パーティーで、次期社長候補やらを連れてくる者達がいたからな……」


朝霧は、かつての社交パーティーでの出来事を思い出しながら苦笑しつつ、シロエに答えた。


『……御前?どうしましたか?』


朝霧の苦笑の意味がわからないシロエは、不思議そうに朝霧に声を掛けていたが……朝霧は、すぐに言葉を続けた。


「……シロエ。これは、私からの警告だ。

今回の〈自由都市同盟イースタル〉の動きは、おそらく……〈神聖皇国ウェストランデ〉が〈ミナミ〉─〈Plant hwyaden〉と手を組んだ事を警戒した面もある。

無論、我々〈冒険者〉の動向を探る意味も兼ねているだろうがな。

だから、交渉を行う際は〈イースタル〉の貴族達にいい様に政治利用されない様に細心の注意を払え。いいな?」

『……わかりました。御前からの警戒、胆に命じておきますね』

「そうしてくれ。ではな。こんな夜遅くにすまなかったな」

『いえ。御前の方こそ、〈ミナミ〉からの追っ手との戦闘……頑張って下さい』


その言葉を最後に、シロエとの念話を終えた朝霧は別の誰かへと念話をかけた。





──しばらくして、朝霧のいるテントに一人の人物が訪れた。






「……急に呼び出して、すまないなアゼル」




──朝霧が念話で呼び出したのは、今回の〈放蕩者の記録〉の合宿組の引率組の一人、メインは〈施療神官クレリック〉でサブは〈複製師〉のアゼルだった。






◇◇◇






──〈複製師〉。



ゲーム時代は、手本とするアイテムを用意する事でアイテムを複製する事が可能なサブ職業で……複製できるのは、秘宝級の素材アイテムまでとなっていた。




だが……〈大災害〉以降の手作業で、アイテムやステータス表示の見た目を一時的に偽装する事が可能である事が判明した。




──但し、手本となる“モノ”が必ず必要だが。






◇◇◇






「……で?ギルマスが、何の用も無く人を呼び出す訳も無いですよね?

僕を呼び出した理由は?」

「ああ。〈画家〉のカミールに描いてもらった“ステータス画面の絵”とこちらの〈怒れる妖狐の仮面〉を手本に、私のステータスと今装備している〈黒き神狐の仮面〉の見た目を偽装してくれ」


朝霧からの頼み事に、一瞬驚いた表情を見せたアゼルだったが……すぐに気持ちを切り替え、作業を始めた。






──しばらくして、アゼルが作業を終えると……朝霧の簡易・詳細ステータス画面と〈黒き神狐の仮面〉の見た目は、手本にした“絵”と〈怒れる妖狐の仮面〉のそれへと変化していた。


「……これでよし…っと。ギルマス、終わりましたよ」


アゼルの言葉を聞き、朝霧はステータス画面を開く。


◇◇◇



名前:黒椿

種族:人間ヒューマン

種族:暗殺者アサシンLV90

所属:無し



◇◇◇




ステータス画面の名前と所属が手本にした“絵”の通りに変化しているのを確認した朝霧は、アゼルに感謝した。


「アゼル、ありがとう。

……ところで、このアゼルの〈口伝〉の〈擬態カメレオン〉はどの位もつんだ?」

「……ざっと計算して、一日が限界。制限時間が過ぎると、元通りに戻るからね」


必要な事を聞く事ができた朝霧は、再度感謝すると〈隠行術ハイド・シャドウポーション〉を使用してテントを出ていった。






──時刻は、作戦決行の夜明けを迎えようとしていた。






◇◇◇






──彼らは、慢心していた。






愚かにも、濡羽様から─自分達〈Plant hwyaden〉から逃げようという愚行を考えた逃亡者達に自らの行いの愚かさを思い知らせ、全員を〈ミナミ〉─〈Plant hwyaden〉の元へと連れ戻すという崇高な役目を遂行しているのだと陶酔していた事も慢心を招いた要因の一つだった。






──また、逃亡者達を助けに来た者達が数回の攻撃を受けただけで臆病風に吹かれて逃げ出したという状況も、更なる慢心を招く要因となった。






──さらに、事前に〈テンプルサイドの街〉には元〈D.D.D〉の幹部が居るという情報を入手していた為、その者も〈ミナミ〉に連れていけば、きっと濡羽様にお褒め戴ける筈だと功を立てようなどという余計な事を考えていた事も、更なる慢心を招く要因となった。






──その行き過ぎた慢心が周辺警戒を怠らせ、彼らを周到に用意された罠の奥深くへと飛び込ませた。






──彼らがその事に気が付いた時には、仲間の半数近くを神殿送りにされた後だった……






◇◇◇






──〈Plant hwyaden〉からの追っ手達を〈テンプルサイドの街〉周囲に張り巡らせた結界内の奥深くへと誘い込む事に成功したベルセルク達は、朝霧が立てた作戦通りに敵を一掃する掃討戦へと移行する事にした。


「ランスロット!敵前線を引き付けてくれ!」

「わかりました!……『アンカー・ハウル!』」


ランスロットからの〈アンカー・ハウル〉を受け、後方へと逃げている逃亡者達に対して攻撃を仕掛ける為に動こうとしていた敵前衛のふたパーティーは、逃亡者達への攻撃が不可能となった。


「ちっ!邪魔されたか!!」

「ふん。たとえ前衛が逃亡者達を追撃出来なくても、こっちには遠距離攻撃可能な魔法攻撃職と遠距離攻撃武器を装備した〈暗殺者〉部隊がいるんだ。何の問題も無い」


そう言って後衛に指示を出そうとした時、その後衛から悲鳴が上がった。




──振り返って見ると、魔法攻撃職の第四部隊が全身黒ずくめの一人の女〈暗殺者〉によって全滅している状況が目に飛び込んできた。




(いつの間に!?クソッ!〈スウィーパー〉による魔法攻撃職部隊の一掃が目的か!!)




──この時、この〈武士〉は全く気が付いていなかった。





“第四部隊が、魔法攻撃職、回復職、護衛の為の戦士職の〈武士〉も全て全滅した”という、通常ではあり得ない事態に……



女〈暗殺者〉は素早く離脱すると、〈ロードミラージュ〉を発動させてその姿を眩ました。



──すると、それに呼応する様に敵側が動き出した。


「〈暗殺者〉部隊!敵に一斉射撃を食らわせてやれ!!」


〈武士〉の指示に従う様に、〈暗殺者〉達は次々に矢をつがえて放っていく。




──しかし、通常ならば魔法攻撃職か回復職に死亡者が出てもおかしくない程の武器攻撃職の攻撃に、敵はダメージ遮断魔法や反応起動回復を使用せずに耐え抜き、自分達へと迫ってきている。




──それだけでなく、気付くと今度は遠距離武器を装備した〈暗殺者〉で構成していた筈の第三部隊が女〈暗殺者〉によって全滅させられていた。




──さらに追い討ちをかけるが如く、敵から魔法及び遠距離武器によるメインタンク部隊全体への集中砲火が浴びせられ……次々と、味方が神殿送りにされていく。




(畜生!畜生!!ちくしょーーー!!!)



──そう心の中で悪態つく〈武士〉が最後に目撃したのは、〈月光を喰らいし魔狼フェンリル〉や〈バハムート〉、〈ファーブニル〉などの召喚生物達によって、残った味方が次々と倒されていく光景だった。






──その光景を目撃していた〈武士〉の命を一瞬で刈り取ったのは、サブ職業〈狂戦士〉の特技スキル〈ルナティック・アーマー〉で攻撃力を倍加した〈施療神官クレリック〉のアルテミスの振るう武器〈鮮血のブラッディー・モーニングスター〉から繰り出された強烈な一撃だった……。






◇◇◇






──その〈Plant hwyaden〉の追っ手部隊全滅の一部始終を遠くから眺めている人物がいた。




──彼女はカシス=エミール。





今回の追っ手部隊の指揮を第二席のインティクスから任されていた〈暗殺者〉である。






──カシスは、冷めた目でその光景を眺め続けた。


(……慢心して、ワタクシの指示を無視して行動するからこの様な目に遭うのですわ。しかし、今回の作戦でインティクス様がもっとも警戒されていた〈緋巫女御前〉の姿はありませんわね)


彼女がインティクスから受けていた指令は、『逃亡者達の心を折る追跡』と『今回の件で確実に動くであろう〈緋巫女御前〉朝霧の動きについての情報収集』である。


「今回、〈緋巫女御前〉は表立って動かなかった事と逃亡者達の追跡は驕った馬鹿達のせいで失敗した事をお伝えしないといけませんわね。

……もっとも、一番の敗因は、馬鹿達がきちんと情報共有を行わなかった為に逃亡者達の中に〈共鳴の絆〉の出身者がいた事に気が付くのが遅れてしまった事ですわね」



──そう呟くカシスの目線の先では、味方の追っ手部隊全てを殲滅し、勝鬨の声を上げている敵部隊の姿があった。



「……長居は無用ですわね。早く戻って、この事を報告……っ!?」


その場を後にしようとしたカシスを……突然現れた何者かは背後から羽交い締めにし、喉元に刃を突き付けた。


「……っ!何者ですの!?」

「……〈円卓会議〉の密偵。貴殿は、〈Plant hwyaden〉が差し向けた者だな?」

「だったら、どうだと言うのですか!!」


羽交い締めの状態のまま、カシスは背後の人物へと怒りをぶつける。



──当の人物は、涼しげな態度で淡々と言葉を口にした。



「貴殿の背後には、インティクスかゼルデュス辺りがいるのだろ?

……貴殿の背後にいる者に伝えろ。

『脱出者達は皆、我々〈円卓会議〉が貰い受ける。

彼らへの手出しは、一切許さん。そして……〈テンプルサイドの街〉に住む〈冒険者〉達にも手を出すな。

彼の地は、侵略者を阻む〈不可侵の地〉。

手を出したら最後、黄泉路へ下る事となり……生きて帰れない』……とな」

「まあ!それはそれは親切に……忠告、ありがとう!!」


そう言って、羽交い締め状態を振りほどき……背後の者を攻撃しようと思い、カシスは毒を塗った短剣を構えた。




──しかし、そこには誰の姿も無い。




「え!?」




一瞬戸惑ったカシスだったが、すぐに頭上へと目を向ける。




──するとそこには、黄金のオーラ状のエフェクトを纏った女〈暗殺者〉が、空中で刃を大きく振り上げてカシス目掛けて降りてこようとしている姿があった。



「しまっ……!?」

『アサシネイト!!』


驚愕するカシスの胸─心臓の辺りに目掛けて、女〈暗殺者〉は必殺の刃を振り下ろした。


「ぐっ!!」


くぐもった声を上げ、カシスは背中からその場に倒れた。




──神殿送りになる直前、カシスが女〈暗殺者〉に関しての情報で最後に確認できたのは……名前が“黒椿”だという事、サブ職業が〈戦姫バトル・プリンセス〉である事、そして…彼女が〈円卓会議〉が差し向けた密偵である事のみだった……






◇◇◇






──カシスの身体が虹色の泡状になって消えた後、朝霧は〈神刀・風刃〉を鞘に収めた。



武器を収めた朝霧は、現在護衛部隊の指揮官代理を務めるベルセルクに報告の念話を掛ける。


「……ベルク。こっちの“害虫”も駆除した」


ベルセルクへの簡単な報告を済ませると、朝霧はしばらく周辺警戒を行い…敵影が無い事を確認すると、ホッと一息ついた。


「……やっと、本当の意味で“戦闘が終わった”。

と、レオ丸法師への結果報告の約束があったな」


朝霧はそう呟くと、〈フレンド・リスト〉を開いて、レオ丸へと念話を繋いだ。


『おー。御前さん、ドンパチの結果はどないな塩梅で収まりましたん?』

「まあ、概ね良好です。追っ手は“結界の効力”を全面的に活用し、全て討ち果たす事が出来ました。

法師が事前に警告して下さった通り、〈テンプルサイドの街〉とその周辺全体を見渡せる程見晴らしの良い…かつ、戦場から少し離れ、身を隠せる場所に敵の密偵らしき〈Plant hwyaden〉所属の〈暗殺者〉が潜んでいました。

そちらも無事に討ち果たしましたし、敵が放った密偵には〈テンプルサイドの街〉に仕込んだ脅威を軽く匂わせました」

『ほうほう、そいつぁ何よりでした。

陰険眼鏡ゼルデュス御嬢ちゃんインティクスには、エエ薬になりましたやろう。それだけされたんやったら、〈テンプルサイドの街〉には二度と手出しはしまへんわ、な。

ワシもまぁ、アイツらには色々とお灸を据えさせてもらいましたし、ねぇ。ベテラン要注意!って脳にしっかりと刻んだんと、違いますかな。けけけ……』


レオ丸の言葉に、朝霧は思わず笑みを溢す。


「……今回、敵に脅威を抱いてもらう為に〈円卓会議〉の名を思いきり借りてしまったので……後で、〈円卓会議(彼ら)〉に迷惑をかけないかが心配です」


朝霧のその言葉に、レオ丸は笑みを浮かべながら声を掛けた。


『何を言うてはりますのん!

御前さんは、最初からずーっと〈円卓会議〉の為に一生懸命、裏から支えてはりますんやろ?今回の事もその一環なんですし。

相手にきっちりと釘差さなアカンのやったら、〈円卓会議〉の名を使うんも所謂方便の一つですやん。

特に今回は〈ミナミの街あっち〉に、〈アキバの街こっち〉はぜーんぶ判ってますんやで!って伝える事が何よりも大事な事なんやし。

それに……物事には、“持ちつ持たれつの関係”があります。

円卓会議こっち〉の面子にも、御前さんみたいな無私のボランティアがいてるんやって事を、改めて理解しといてもらわなアカンと、ワシは思いますで。

乱用せぇへん限り……ってゆーても御前さんがそんな事をするとは思いまへんけど、今回の件の様に、たまには〈円卓会議〉に借りを作る位がお互いの今後の為にも、丁度エエ関係やと思いますけどねぇ』


レオ丸からの説教に、朝霧は素直に応じた。


「……そうですね。一方的な関係が良い訳がありませんでした。

法師、気付かせてくださってありがとうございます」

『毎度エラそうな事ゆーて、すんません。

せやけどまぁ、今のワシに出来る事は遠くからエールを送るだけやし。

まぁ、そんな感じで。

ほな、御前さん!これからも何卒無理せずお気張りよし!!』


その言葉を最後に、レオ丸は念話を切った。




──レオ丸との念話が終了した後、朝霧は再びフウと一息ついた。






◇◇◇






──その日、多くの〈冒険者〉のあずかり知らぬところで……〈Plant hwyaden〉VS〈放蕩者の記録〉と〈彩風の暗殺団〉連合の『テンプルサイドの攻防戦』が行われ、〈放蕩者の記録〉と〈彩風の暗殺団〉連合が見事勝利した。






──その勝利により……〈ミナミ〉脱出組は無事、〈Plant hwyaden〉の追っ手から逃れる事ができた。










──その後、『テンプルサイドの攻防戦』の一件もあってか……〈Plant hwyaden〉が〈テンプルサイドの街〉に手を出す事は一切無かったという……。

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