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数え魔伝説と事務員

引き続き説明会。


ボロを出さずに説明しきるのは難しい…


すでにボロは出してしまったし。


誤用修正


優しい暖かい色の茶色→優しく暖かい茶色


となりました。これからも見つけたら感想欄で伝えてください。喜びます。

「本当に大丈夫ですか?」


リラが俺を心配そうに見つめてくるが、本当に大丈夫なんだよなー…


まぁ神からのいらない子宣言に少し…いやかなりショックを受けたのは事実だが。


「大丈夫だよ。心配かけてごめんな」


そう言いながらリラの頭を撫でる。


彼女の髪の毛はするすると指通りが良く、その目に優しく暖かい茶色との相乗効果で素晴らしい髪の毛となっている。思わず頬を擦り付けたくなる、そんな魅力を振りまいているのだ。


「あの、キルヨさん?流石に頬ずりは恥ずかしいです…」


おっと、そんなことを思っている間に無意識に頬ずりをしてしまっていたようだ。


なら褒めてごまかす作戦だ!


「リラって凄く髪が綺麗だよな。柔らかいし、指通りもいい」

「…そんなこと言っても誤魔化されませんよ…というよりも髪ならキルヨさんの方がよっぽど綺麗じゃないですか。まるで濡れてるみたいな艶ですし、混じり気の全くない闇色の綺麗な髪です」

「いやいや、俺はリラの髪の方が好きだよ」

「いやいや、キルヨさんの髪の方が綺麗ですって」

「いやいや」


そんな会話をしつつ、俺たちは学園へと歩を進める。





「ところで頬ずりはやめてくださいね?」

「あ、誤魔化せなかった?」





「ここが私達教師の第二の職場、『シグハイア第二学園』です。私達教師は特殊な教科の方以外は大体ここの中で授業をします」


しっかりと説明してくれるリラだが、俺はその説明を殆ど聞いていなかった。


学校?いや、違う。


大学?いいや、そんなもんじゃない。


街。


確かに門にはここからが学校だと表記されているが、完全にただの街だ。

たまに爆発音や地鳴り、人の悲鳴が聞こえてくる以外は。

あ、雷が落ちた。


「街じゃん…」


そう。広い敷地の中にはここに来るまでに通ってきた街よりも少し立派なくらいの街があった。


学園都市って…学園の周りに都市があるだけじゃなくて、学園も都市なのか。


ふっ、と周りを見渡す。


しかし…本当にめちゃくちゃ広いな。敷地だけでどのくらいあるんだろうか…



「…そこらへんどうなの?」


「ここはこのカウェルの土地の二割程の領土を占めています。ついでに言いますとこのカウェルの領民の十分の三がここで働くと言われています」


「はーーっ…すげえな…」


日本じゃそんな大規模な雇用は考えられないな。いや、この街の規模にもよるか。でもそれほど領民が少ないようにも思えない。


困った時のリラえもんだな。


「リラ、この街の人口ってどのくらいなんだ?」

「……キルヨさんは私の事をどんな立場だと思っているんですか?」


かなり怪訝なものを見る目のリラに質問で返された。


「…え?笑顔が可愛くて泣き顔が非常に嗜虐心をそそる彼女にしたい女の子暫定一位…かな?」

「なんですかっそれは!?そんなテキトーなこと言っても騙されませんよ!!」


…本心なんだけどな。なんで信じてくれないんだ?


そう思いながらリラの琥珀色の目をじっと見つめると、すぐに彼女は顔を真っ赤にしてあらぬ方向を向いてしまった。


「…もうそれでいいです!でも人前でそんなこと口走らないで下さいよ!?」

「この愛を誰かに隠せと!?この熱い愛をか!?」

「ふざけないでください」


冗談抜きでリラがキレかけた。

しかしこの子怒るとすっげえ怖いな。鳥肌立ったぞ!


「はいはい分かりました…で?何でこの街の人口とリラの立場が関係あるんだ?」



「そりゃ関係ありますよ。この街の人口なんて…いや、どの街でも人口なんかはその街の防衛機能に直結する情報じゃないですか。そんなのよっぽど高い立場の人しか知ることはできません……そうですね、ここら一体の領主様やここの校長なんかが知ってるんじゃないですか?」


…そういうもんなのか。こういう話を聞くと本当に自分が異世界に来たんだと感じるな。


ってか校長地位高ぇな!


「じゃあ何で十分の三とか分かるんだ?」

「ああ、それは十年ほど前に自分の身体一つでここの領民を数えまくった人が学園にいたんです。四年かかって全ての人口と学園の従業員や生徒なんかを数えて総計を取ったんですよ」



そいつは『調査(カウント)のウィル』と呼ばれた青年で、最初は他国の間者ではないかなどと言われて疎まれていたらしいが、その何かを集計することに対しての誠実さと愛情でもって次々と街の人々を味方にし、最後にはウィルのカウントの為に数えられた人は自分の身体の一部にリボンを巻いたらしい。


「私も持ち歩いてるんですよ?そのリボン」


リラが見せてくれたのは光沢のある可愛い桃色のリボンだった。


「……伊能忠敬が凄くいらん方向に走ったみたいな奴だな…」

「?いのうただたか?」

「いや、何でもない。そいつは今どうしてるんだ?」

「彼は新たな調査の対象を探してこの街を旅立ちました。今頃海の上で魚の数でもカウントしてると思いますよ?」


……おかしな奴もいるもんだ。


「でもそれ十年前ってことは…」


「はい。今はこの数字は殆ど使えないと思いますよ?この街は今でも大きくなり続けていますから」


じゃあそれ教えんなよ、と抗議したところ


「ウィルさんの活躍、知って欲しいじゃないですか」


らしい。どうやら彼女は熱烈なウィルファンのようだ。


「あ、ここですよ、キルヨさん」


リラが話すウィル伝説に適当に相槌を打っている間に周りの建物よりもちょっと立派な建物にたどり着いた。


「えーと…ここは?」


そのまま入ろうとするリラに質問する。

「ここは事務所です。生徒の入学手続きや教師の校外出張手続きは全てここでするんです。採用されるかはともかく、教師になるならここで手続きをしなければなりませんよ?」


なるほど、事務室じゃなくて事務所なのか。学校にそれだけの設備があるということはやはり事務仕事は多いのだろう。


単に土地が余りまくってるだけの気もするが。


「失礼しまーす…ただいま帰りました、ハツノさん…」


遠慮がちに扉を開けるリラに続いて中に入ると、


「あ、リラちゃんおかえりー…ふぁぁ…」


ガラリとした部屋に一人の白衣の魔人族の女性がいた。


ぐねぐねとウェーブした長い髪の毛を後ろに括り、非常に眠たそうに欠伸をしている。額に小さな角の生えたその顔立ちは何処と無く東洋の血を感じる。


「キルヨさん、紹介しますね。この人は事務のハツノ・キリウさんです。数年前に海の向こうからこの地に亡命してきたそうです」


ぼ…亡命ですか。海の向こうはどうやら物騒らしい。


「ヨロシクね。キルヨちゃん…キルヨ…?」

「あ、ああよろしく…俺の名前に何か心当たりでも?」

「いや、ここらじゃ珍しい名前だからね。ちょっと故郷を思い出しただけだよ。だから気にしなくていい…ところであなた、下の名前は?」


下の名前…か。苗字って事だよな。

原村…でもいいけどな。


そんなことを考えていると、何か焦った感じのリラが手を振りながらハツノとの間に入ってきた。


「あの、ハツノさん、キルヨさんは記憶喪失で自分の記憶は名前以外殆どないんです!一般常識もちょっと笑えないくらい欠如してるんです!だから苗字だって憶えてなくて当たり前です!」


それは当たり前と言ってもいいのだろうか。


「そ、そうなんだ。じゃあ当たり前だね」


しかしリラのあまりの剣幕に押されたハツノはそれで納得させられてしまった。



「……えっと、ゴメンね?」

「いや!謝ること無いぞ!?全然気にしてないから!!」


そうは言ったが、やはり納得いかないようだ。最低限の手入れしかしていない眉が中央へ寄っている。


「……っと、そういえばリラちゃんは帰還届けだったね。すぐに書類を出してくるから少し待ってて」


そう言いつつ、おもむろに席を立つハツノ。しょるい〜しょるい〜などと音程は取れているがなぜか違和感のする歌を歌いながら奥の部屋に行ってしまう。



「不思議な人でしょう?あれでも事務能力は神がかってるんですよ?」

「ああ。何と無く只者じゃないのは分かるよ」


身のこなしや僅かな体捌きで何と無く相手の実力がわかる。


それは『俺』の知識が教えてくれるある意味最も信頼できるパラメーターだ。


しかし、彼女は『全く分からない』のだ。


あえて言うならば、『不自然』。



時折老練な動きをしたと思えば、辺りに配る視線は素人同然。


異常に素早く手を動かしたかと思えば注意力散漫で机に手を打つ。


ぶつけた手を押さえて飛ぶ動作は完全に気を抜いている跳躍なのにその頭が天井に届こうとしている。


身体的なあらゆる能力に精神が追いついていない、まるで『全く訓練なんてしていないのに達人の体を手に入れてしまった』ようだ。


「……ハツノ・キリウか…何者だ…?」



「あ、キルヨちゃんは何のようだっけー?」

「ん?ああ。教員になりたんだけど…」

「んー?教員ね。オッケー」


そう言ったきりまた書類探しにもどってしまうハツノ。


「……え?そんだけ?」


「キルヨさんは他に何を求めてるんですか?」


「いや…もっと身分証とか…」

「持ってるんですか!?」

「いや、持ってねーけど」


ならそれでいいじゃないですか、とリラに言われるがなんだか納得できない。もっとこう、複雑なんじゃないのか?就職ってこんなもんなのか?


「キルヨちゃん、君の勘違いを正しておくと、これは例えるなら内定じゃなくて履歴書だからね?作るのは結構簡単なのさ」


「あ!なるほど!」


それなら簡単に作れることにも頷ける。


「…二人で話を進めないでください」


リラが人知れずむくれていた。

活動報告にちょっと思いついたのを載せたんで見てくれると幸いです。ついでに評価が高ければ短編にでもするかも。

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