授業開始と暗殺者
偶にはトピックをつけてみようと思ったわけです。ハイ
どうしてこうなった。
「…では、今日の授業を始めます…」
「はい、宜しくお願いします」
「お、お願いします!」
この男達は昨日先生に貰った書類に書いてた二人だ。名前はレイドとゲイン。俺のフラグ的なものをいい意味で思い切りぶち折って、とても礼儀正しく素晴らしい好青年達だった。
しかし、彼らも今日はどことなく緊張しているようだ。それもそのはず、何故なら…
「ふむ…宜しく頼む」
「ふん、さっさとしなさいよ痛い!」
「話した事も無い者の前でそういう言葉遣いをするなと何度言えばわかるのだ…」
まさかのリリアとギド参戦だ。何故!?
さらに、
「……お願いします」
リラまで言った通りに参加するようだ。ちなみにヘレナも来ている。ヘレナはともかく、これ程に有名なメンバー達が揃っている中で授業を受ける気分はどんなもんなのだろうか。
実は、リリアとギドがこの授業を取った時点でかなりの応募者が現れたのだが、いくらなんでも俺は二十人以上を怪我させないように無力化することは出来ないのでリリアとギドで締め切らせて貰った。
「あー……じゃあまずは自己紹介といこうか。えーと…レイドから順番に」
「俺からですか!?これだけ濃い面子が揃ってるのに!?」
「うるせえ俺も言ってからちょっと思ったよ!でもお前からだ!さんはい!」
少し困惑気味だったが、俺の合図に応じて自己紹介を始める青年。ここらでは珍しいらしい真っ白の髪で、なかなかに良い筋肉がついている。
ローブの脇に穴を開けて吊り下げてある剣にはかなりいろんな人が使ってきた跡がある。家宝のようなものだろうか。
「ああもう!僕はレイド・ライドです!ここには二年いて、魔法はあまり使えませんがその代わり剣技がそこそこ上の方だと思っています!前衛ですので宜しくお願いします!」
「ハイ次!」
次は少々小柄な茶髪の青年。こちらもなかなかの量が付いている。しかし持っているのは杖である…表面的には。
彼、ローブに隠されているが身体中のありとあらゆる場所に暗器を仕込んでいる。どうやら暗殺者のようだ。
「お、俺はゲイン・シガー!ここには一年いる!基本何でもできるけど、どちらかといえば魔法が得意だ!前衛だ!宜しく!」
「リラ、です。魔法も剣技も得意ではありませんが、ここにいる人には勝てずとも決して劣らない自信があります…宜しく」
「ギド・エレクトだ。基本後衛だが前衛もある程度できる。宜しく」
「リリア・スノーよ。基本前衛だけど皆巻き込んでいいなら後衛もできるわ。宜しく」
「ヘ、ヘレナ・…ヘレナだ。前衛だ。魔法は全く知らないので、完全に自分の体一つで戦うことになる…私に足りないものがあれば、すぐに教えて欲しい。宜しくお願いします!」
リラは珍しく勝気に、ヘレナは熱心に自分のことを紹介している。ギドはまあ予想通りってとこか。そしてリリア、それはただの無差別攻撃だ。
「よっしゃ、全員の名前も分かったことだし、授業を開始する…前に、今持ってる武器は全てこれに変えてくれ」
そう言ってウィンドウを介して取り出したのは純白の武器。
「…なんですか?これは」
「ふっふっ……これは訓練に使う武器、[不殺シリーズ]だ。そうだな…ギド、この中から一つ選んで俺を切ってくれ」
「何!?」
「ああ、遠慮はしなくていいぞ。思いっきり。殺す気で」
「…何か考えがあるのだろうが…」
そう一言呟くと、ギドは武器の山に走り寄って通り過ぎざまに剣を一振り手に取り、そして自分の体重と加速を利用して俺を逆袈裟に斬りつけた。生徒たちの方から僅かに悲鳴が上がる。
しかし、
「……なんと…」
「まあ、そういうことだ」
俺の体を剣が通り過ぎ、刃が触れたところに真っ赤な筋を残した。もちろん俺自身は無傷だ。
「もちろん全く痛くねぇぜ?体の動きに支障もない」
そう、皆のお察しの通りこれは[超硬質圧縮豆腐・カドニー]を素材にした武器であり、その特性は体力減少無し。つまり、当たっても痛くない武器なのだ。
そのネタ武器の刃先に昨日のうちに当たったものを着色する妖術を付与しておいたものが、この武器だ。
「まあ俺の授業では全員にこの武器を使ってもらい、つけた傷の多さで勝敗を決める…まあ俺が致命傷だと判断すればそこで止めるが。まあ五回に一回くらいは普通の武器でやってもらうけどな。俺も含めて六人で一体一、二十分勝負だ」
「キルヨさん、薬の使用は禁止ですか?」
うん…?そうか、リラは薬使いか…
「ああ、自分で作ったものに限るがな」
「やった!」
「もう質問はないか?…よし、じゃあ始めるぞ!全員武器を取れ!」
その言葉を聞いた皆がどやどやと武器の山に群がる。そして、思い思いの武器を取って行った。
ただ、レイドが杖しか取っていなかったので短剣から暗剣から折りたたみ型の盾まで色々と取り出して彼に渡した。
「俺は持ってる武器は全てこれに変えろと言った筈だが?」
「えぇっ!?ばれてたんですか!?」
「そんだけ金属臭かったらいやでも気づくわ…」
「そ、そんなに臭いですかね…普段から消臭魔法かけといた方がいいかな…」
「まあ俺としてはそこらへんはどうでもいいが」
「は、はぁ……怒らないんですか?」
「ん?何で怒るんだ?」
「いえ…命令を破ったので」
ああ、なるほどね。さっき持ってる武器は全て不殺シリーズに変えるって言ったのを遵守しなかったからか。
「別に怒らねぇよ。お前が武器を見せなかったのはそうすることで相手の意表を突けると思ったからだろ?相手に勝つための小細工の何が悪い?……まあ、あえて言うならたった今お前がアサシンだったことを皆にバラしたことが罰、かな。分かったらさっさと準備しろ」
「は…はい!」
さて、これで全員の準備が揃ったな。そんじゃあ俺の方も準備しようかね…
ウィンドウを介して禍々しい鎖鉄球を六個、どさっ!と地面に出す。さらに禍々しい紫がかった黒の包帯を取り出して腕に巻きつける。するとそこから出た灰色のオーラがそこにまとわりつき、なんとも言えない気持ちの悪い感覚が腕を満たす。
そうだな…例えば、三十度くらいに温めた冷えピタで腕をきつく締められるようなそんな感じだ。
そのまま鎖鉄球を両足と両腕と腰と首に着けて準備完了だ。
ふと視線を感じて周りを見ると、皆呆気に取られた顔でこちらを見ていた。
「ん?どうした?」
「キルヨさん…そんな格好で私達と戦うつもりですか?」
「当たり前だろ?…あ、もっとぎちぎちに拘束した方が良かったか?上半身全く動かないようにしようか?それとも足二本纏めて縛る?いやむしろ腕を片方切っ飛ばす?」
「いえっ!いいです!それでいいですごめんなさい!」
「ん?まあいいや」
なんで謝るのかは謎だが、これでいいというのなら俺の準備も完了だ。あとは誰と戦うかを決めればそれで終わりだな。
「さぁて、じゃあまずは誰と誰が行く?」
職業について
基本的に戦闘スタイルのことを言っているのであり、本当の職業ではない。なので王国一番の強さを持つ聖騎士が魔物使いであれば
「逆賊どもめ!国に仇なしたことを悔いるがいい!【サモン】!○ターオブワールドぉ!」
みたいなこともあるし、闇魔法が主なイメージな魔王などが聖騎士なら
「ふはは!儂にこれほどの傷をつけるとは!だがお遊びは終わりだ!【ホーリー・ブレイド】!」
みたいなこともある。しかし職業と言ってもやはり人から教えを請わなければならないので、上記のようになることは非常に稀である。魔王が人間族の国の姫に一目惚れして姫の専属騎士となったとか?そのあまりの強さ故に国に使える騎士であるにもかかわらず彼を危険視してきた国によって家族を殺され、魔王となって復讐をすると誓ったとか?そしてかつて戦った時とは反対の立場になった二人がまた剣を交える…とか?
…あれ?ベタだけど意外と面白そうだぞ?