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幕間伝:リリアとギドの日常

まあとりあえずリリアさんはヒロインではありませんよ、というお話。


あとついにしっかりした人間族以外の種族が出て来ましたね。ハーフだけど。幕間だけど。

ハツノはかなりふわっとしてましたからね。あとキルヨも。これで思い残すことはありません。



幕間伝




リリアとギドの日常




学園内でも超がつくほどの優秀な学徒であるギドの朝は早い。というよりも、気がついたら朝なのである。


「ふむ、もう朝か」


一言、そう呟いてギドは読んでいた本を閉じる。


ギドは魔人族と人間族のハーフである。しかし魔人族としての外見的特徴はなく、さらに言うならば能力的特徴もほぼ全て人間族のものであった。


「さて…朝食は何にしようか…」


そんな彼の唯一人間族とは違う所、それは彼の持つ二つの体質であった。


「その前にリリアを起こさねばな」


それは、常に脳を数十パーセントずつ交代で眠らせることで一日二十四時間不眠での活動を可能とする【不眠特性】、さらに常に肉体の数十パーセントを交代で休ませることで二十四時間の活動を可能とする【不休特性】である。

彼はこの二つの特性が常に作用しているのである特別な状況でなければ眠れないのだ。


しかし、それは言ってしまえばただの副次効果のようなものであり彼の本来の能力は別にあるのだが、その話は今は関係が無いのでまた今度とする。


「リリア、入るぞ…」


一つ二つ、戸を叩いた後にノブを回す。と、何かがつっかえてノブが回せない。


「全く…鍵は閉めるなと毎日言っているのに、何時になったら覚えるのやら…」


服のポケットから針金を取り出したギドはそれを鍵穴に差し込み、少しカチカチと音を鳴らす。とすぐに掛け金が外れる音がし、針金を直したギドは何事も無いかのように部屋の中に入った。


「すぅ…すぅ…くぅ…」

「……呑気なものだ」


文句を言っているような台詞だが、ギドの表情はとても柔らかい。まるで可愛くてたまらない我が子を見ているような視線だ。


「【アンチウォーター(耐水)】【コールドウォーター(氷水)】。さて起きろ」

「うっわひゃひいいいい!?」


まあやることは容赦無い鬼畜の所業のだが。


いきなり顔面に氷水をぶっかけられたリラは飛び起きる。


「ななななななにすんのよ!」

「ふむ、顔面に氷水をぶっかけたのだが、分からなかったか?」

「分かるわっ!!なんでそんなことすんの!?」

「やって楽しいからだが?」

「何その理由!?」


そんな会話を挟みながらリリアの部屋を出て一階に降り、朝食を用意する。


ふと、何故自分がこんなことをしているのかと思う。何故だったか、少なくとも初めはリリアとはただのクラスメイトで同居などする仲ではなかったのだが。


ふむ…


自分で分からなければ聞いてみるしか無い。そう思いギドは程良く焦がされたウィンナーと格闘しているリリアに質問をした。


「それはあれよ。私が非常食を昼ご飯にしてたのを見たあんたが私の分のご飯も作ってくれるようになったのがそもそもでしょ」

「ふむ。そうだったな」


この話し方では微妙に勘違いをするかもしれないが、決してギドは世話焼きでは無い。むしろ人との情にはドライな方だ。


ならそんなギドがなぜこんな事をしているのかというと、

「安売りしてたから」

という理由で買い溜めした全く同じ味の美味くも不味くも無いただ画一的な味の非常食を横でぼりぼり音を立ててと貪られるのはたまらないという理由からだ。


その間ずっと飢えたモンスターの様な目で自分とその弁当を睨まれていたから、というのもまあ理由の一つではある。


「それで何時の間にやらお前の世話係なのだから、まあ人生とは分からんものだな」

「私だってまさか学園に来て男と一つ屋根の下で暮らすとは思わなかったわ…全く、このままじゃ私は家事ができなくてお嫁にいけなくなるじゃないのよ。どうしてくれんの?」

「ふむ?まあ私が貰うから問題あるまいよ」

「〜〜〜〜っ!!!」


いきなり食べていたパンを喉に詰まらせて暴れるリリア。


「どうした!?何があった!」

「あ…アホか!いきなりそんなこと言われたらびっくりするに決まってんでしょーが!」

「……手を出していないとはいえ、一年近く一緒にすんでいる男からそう言われるのはそれほど驚くことか?なんなら今から喰ってやろうか?今日はお前も授業は無いのだろう?」


「ぎゃあああ!!ギドのアホ!助平!もう知るか!」


勢い良く朝食を全て掻き込んだリリアは凄まじい速度でローブを着ると全力で家の外に逃げて行った。


「…ふむ、リリア(餓鬼)にはまだ早かったか。全く身持が硬いのに警戒心がないとは…厄介な」


そういうことを言うギドはリリアが他の男に対しては大概冷たく対応していることを知っているし、また人前で無防備な寝顔を晒すこともないことも知っている。


なら何故こんなことを言うのか?


それは単に、

「なあ?リリアよ?」

「ぶふっ!!げほげほっ!!」


窓の外で聞き耳を立てていたリリア(餓鬼)をからかうためだ。


たたー、と慌ただしい足音が遠ざかった後、ギドはリリアが置いて行った食器を片付ける。


「全く、食器は流しに入れておけと言うのに…ふむ、お仕置きが必要だな」



こうして、ギドのただの人間とは違う正真正銘の一日は幕を開ける。

この小説には基本的にラブラブバカップルしか出てこないと思われます。ご了承いただいた上で読んでください。

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