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担任と説明

やっと終わりを告げる壮大な説明章

 


 わいわいがやがや、クラスはなかなかに喧しかった。


 知らない相手に対して自己紹介を始める者、知り合いでグループを作り盛り上がる者、一人で何か読んでる者…


「うーん…なんというか、またこういうとこに通うのか…」

「何か言ったか?」

「いや、なんでもない」


 ここはイの一。俺達のクラスだ。どうやら俺達はここで一年間共に学ぶらしい。


「ところでさ…リラ、さっきの続き聞かせてくれよ」

「え?…ああ…でも難しいと思いますよ?技術を直接教える事は少ないとはいえ、技を盗まれる事も考えられますし」

「いや、今の俺にはもうそこしか道が無いんだ。頼む」


 料理教室とかやる気しないしな。


 こういうのはやる気の問題じゃないんだろうが、やっぱり自由に選べるなら楽しそうなのを選びたい。


「…キルヨさんなら道なんて自分で作れるでしょうに…まあいいです。言っときますけど、私だって完璧に知ってるわけじゃないですよ?」


 そこからは…まあ割愛で。


 まあ…あれだ。

 まさか実践授業発足の理由から話されるとは思わなかった。


 ちなみにこの教科は、技術はあるが教えるのが壊滅的に下手な男が苦肉の策として編み出した授業形態らしい。


 あとリラは実践授業のことは完璧どころか完全に知っていた。何で創始者の家系図なんて知ってるんだよ!


 ちなみにその男の教えた学徒二人が後に男の嫁となったらしい。


「…とまあ、こんなところですね」

「リラちゃん…君、要点って言葉知ってる?」

「…くぅ」

「知ってますよ?要点というのは…」

「あああもういい!もういいから!」

「…すぅ」


 つ…疲れた…

 リラの説明を受けていたのは俺なのにその余波でヘレナが眠ってしまっている。寝顔がかわいい。


「………こいつらの隣のせいでえらい目にあった…ぐう」

「あ、もう無理、眠気が…」

「駄目だ初日に居眠りなんて!…ぐう」


 というかヘレナだけではない。リラを中心とした放射線状に居眠りが広がっている。いや、俺は大丈夫だけどさ。


「こんちはーっ……と、なんか静かじゃないか?」


 そんないろんな意味で残念なタイミングで先生がやって来た。


 そんなタイミングでやってきた先生は、一度教室を見回して一言。


「………誰かこの状況、説明できるやついる?」

「みんななれない状況で疲れてたんでしょう」

 手を上げてそう発言する。


「…まあそれでいいか」

「………いいのかよ」


 なんて適当な先生だ。ありがたい。


 追求されたらすぐにボロが出るからな。


 起きてるやつはそのまま聞いとけーとか言いながら、先生は黒板(黒板があるのだ。この世界には)に誰かの名前を書き出した。


「あー……一年間お前らの担任をするポラリス=レイビーズだ。気軽にレイビーズと呼んでくれていい…ただし教師長の前では絶対に(・・・)レイビーズ先生と呼ぶように。起きてるやつはしっかり覚えて後で寝てるやつに教えてやってくれ」


 先生は割と背が高く、しかもどちらかと言えばイケメンだった。細い割に筋肉がしっかりとついた細マッチョのようだ。気力の少ない目がなんとなくタムラに似ている。タムラみたく完全に気力が無いわけではないが。


「よし、じゃあプリント配るぞー…学徒一本で行くやつも教師一本で行くやつもいるだろうが、とりあえず両方配るからな。両方聞いとけ。いつか必要になるかもしれねぇんだからな………全員、隣のやつ起こしてくれ」


 結局起こすのかよ…


「おい、ヘレナ、起きろ!」

「……っは!?ここはどこだ!?」

「クラスですよ」


 俺達以外も先生の言葉を受けて続々と隣を起こしていく。


「はっ!?俺としたことが!」

「いあっ!?おひる!おひるからほおをつねうな!」

「………ッ!?いや、瞑想してただけだ!寝てないぞ!?」


「はいはいはい、わかってるから。全員寝てたから。言い訳すんな……全員起きたか?じゃあプリントを見ろー…説明始めるぞー」



「まあここは言わなくてもわかるだろうが、クラスの部屋だ。基本的に自由にして貰って構わない。ただ備品を壊せば…まあ分かるよな?罰金だ。

 …それと、だいたいここにいる奴等が主な交友関係になるからな。ここで友達作り損ねたら……そうだな、

 例えば『自分は友達欲しいくせに喋る勇気がなくてずっと馬鹿みたいに分厚い本読んでるやつ』とかは…下手すればまるまる五年くらい一人で昼飯を食ったりするぞ。ほぼ全員初対面のこの時間を大事にしろよー?」

「うっ…」


 大事にしろよ、の所でちらりと先生がリラを見る。リラは反射的に身をすくませていた。


 リラ、今の話は君の事だったのか。


 …教師にも知れるほど友達いなかったのかよ…


 いや、あの先生が五年くらいリラの担任だっただけかもしれないな。もしくは学徒やってる時に同じクラスだったとか。


 ……ってか、五年?


 リラの外見はまあ、十四歳位だ。


 …五年前ったら…九歳位?いやいや、それは無いだろ…もしかして、外見年齢と実年齢は違うのか?


 リラを見る。割と真剣に先生の話を聞いている、その顔はただの少女にしか見えない。まあただの少女ではないが。美少女だが。




「……まあ、何とでもなるだろ。事実俺の一番心配だった奴は何とかなってるっぽいしな」


 そう言ってクラスにいる人達に視線の先を気取られる前に黒板に向き直り、何事かを書き始める先生。

「んじゃあ、まあ説明を始めるぜ。基本二科目…魔法科学と基本戦闘術だな…この二つはどちらも俺が教える。集合場所は授業のたびに俺が指定するからそのつもりで」


 ふむ。担任にはそういった側面もあるのか。俺が担任になろうと思ったら最低でもその二科目は習熟しておかないといけないという訳だ。


 ならレイビーズ先生は意外とエリートなのかもしれないな。今度授業する時のコツとか聞こう。


「そんで、自由授業だが…これがまた説明が面倒くさいんだよなー…お前ら自分で調べてくんね?」


 その教師にあるまじき言動に各方からブーイングが飛ぶ。


「ああわかった!わかったからそんなに怒鳴るな物を投げるな唾を吐くな!!後で掃除すんのお前らだぞ!」


 その言葉を聞いてぴたりと止まるブーイング。


「ったく…まず教師の奴はプリントの二ページ目にある授業申請書に必要項目を書いて明後日までに俺に提出してくれ。授業内容ってのは三ページ目の項目の中から選んでくれたらいい。まあ基本は生活技術か生産技術か戦闘技術か魔法技術だな。マイナーどころでいくと歴史科学とか魔法薬学、本当に本気でマイナーなので行けば実践授業とか祈祷なんかだな。まあ、他に無いような授業だとそれだけで注目されるからな。マイナーさと目立たなさのどちらを取るかって話だな…何か質問は?」


「先生、これ以外の授業内容では駄目なんですか?」


 質問を募る先生に対して、一人の真面目そうな男が質問をぶつける。


「いや、基本的になんでもいい。だがマイナーすぎる授業は誰も受けねえぞ。それに新科目申請をしなきゃいけねぇから正直面倒臭い」


 他に?と先生がクラス全体に声を掛け、誰も手を上げなかったので次の説明を始めた。


「次は学徒だな。5ページをみろ…お前らは特に何も考えなくていい。これから5日後に大講堂…さっきの広間だな。そこに自由授業のリストを掲示するんで、そこから好きな授業を選んでその授業名の下に書いてある通し番号をその書類に書いてくれればいい。それを一週間以内に俺に出すんだ。

 受講するだけの費用があるなら基本はいくらでも受けて構わないが、二つ以上受ければほぼ確実に日にちが被るから、そこらへん考えて授業申請はした方がいい…何か質問は?」


 何処が面倒な説明だよ、というのは誰も言わなかった。


「先生、今のどのあたりが面倒な説明だったんだ?」


 訂正、一人、似非騎士(この馬鹿)がいた。


「俺が説明しなきゃいけないとこ、他に何かあるか?無いな?じゃあ解散!明日はまたここに集合な!もう先輩は来てくれねぇぞ!自分で辿り着けよ!」


 おや?揚げ足を取られたのに平然としているとは、意外とこの先生はそう言った質問に目くじらを立てない人のようだ。


 どやどやと帰る準備をしだす学徒達。俺達もその波に乗るように席を立とうとした。


「ああ、お前ら三人はさっきのブーイングで散らかった教室の掃除だ」


 あ、やっぱり?


 …でも何で!?


「何で俺等二人まで!?」

「ポラリス!!横暴ですよ!」

「いや、ちょっと待て!俺等二人って…私はどうなる!」


 私はどうなるって、そりゃ…


「知るか!」

「自業自得ですよ!」

「そんな!?見捨てないでくれ!」


 目をうりゅうと潤ませつつ上目遣いをしてくるが、そんなものは俺には通用しない。


「さて、さっさと片付けようか」

「キルヨさん!甘やかしちゃ駄目ですよ!」

「……なんでもいいから早く始めんぞ。ほら、俺も手伝うから」



 半刻後、教室は綺麗に片付いていた。


「ふぅん…じゃあ先生はずっとリラの担任なのか」

「そういうこと。こいつ誰も喋りかけなかったら一週間くらい誰とも喋らないんだぜ」

「……うう」


 俺達はその教室の机を四つほど占領して雑談……リラいじりをしていた。


「一週間…それはすごい…のか?キルヨ?」

「ヘレナさ、俺が記憶喪失だって忘れてねぇ?」

「記憶喪失なのか?キルヨ」

「ああ。なんでか知らんが気がついたら森の中にいたんだ。まあそれほど不便はしてないけどな」

「門番に通行料として金貨一枚を渡す程度の知識しかないのは不便じゃ無いんですか?」

「う…」

「金貨一枚!?」

「それは…なんというか…リラがいてよかったな……っと、もうこんな時間か」

「何か用事でもあるのか?」

「定例会議だ。ほれ、お前らももう出ろ。鍵掛けるぞ」


「へ〜い」

「はい」

「了解だ」

次回から幕間を設けた後新章始まります。

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