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狙撃手ヘレナと愉快な仲間(初対面)達

若干キツイ描写があるかもしれません



…ちょっとだけ作者の変態性が出たかなぁ…



今回はトピックも書くことないので人物紹介を載せます。今回はネタバレは無い筈なので安心して見てください。

 


 sideヘレナ


 私の名はヘレナ。ヘレナ=バレットだ。シグハイアの名門、バレット家の次女だ。


 いや、今は違うか。


 私の家はその名前の通り代々魔道狙撃手(マジックガンナー)を生業にしてきたのだが、残念ながら私に狙撃手としての才能は全くなかった。


 というか何故あんなにも離れた的に正確に当てられるのかわからん。私がやると的には全く当たらず、どころか銃そのものが爆発し、私の手に傷を残す始末。全く、我が家の人間は全員どうかしているのではないか?あんなにも危険なものを平気で3、4丁持ち歩くなど。腰で爆発して二度と勃たなくなるやもしれんな。そうなったら笑ってやろう。


 閑話休題(それはともかく)


 銃をまともに扱うことのできない私は当然のように少量の旅費を渡され、家から追い出された。


「二度とウチの敷居を跨ぐな」

「お前には失望した」

「お前の顔などもう見たくもない」

「努力は認める。だがそれだけだ。他は認める認めないの問答をする価値もない」

「お前程度が私を父と呼ぶな」


 いや、今思えば散々に言われたものだ。あの時は腹が立つというよりも困惑の方がよほど大きかったが、今はしっかりと家を恨んでいる。あの私を唾棄する父の顔とそれに対して何も言わずにただ哀れみと優越感の目でこちらを見てくる兄弟姉妹達。亡き母上が生きていれば私をかばってくれたのかもしれないが、そんなことは望むべくもない。


 そうだ。私はもうヘレナ=バレットではない。ただのヘレナだ。


 家の保護を受けられなくなった私は、まずは先立つ物が必要だと思い学園都市へと足を向けた。


 学園都市ではただの授業を受けられるだけでなく、規定の書類を書くことで授業を行うことも出来る上に『実践学習』として世界各地に存在する凶悪なモンスターを狩ることもできるからだ。それは他の授業と違いそのモンスターの脅威度に見合った報酬が貰える。私はそれに一条の希望を見出したのだ。


 国中にある派遣学園でもそういったものを受けることはできるが、私としては多少身銭を切ってでも2つある本拠地に着きたかった。


 王都にあるシグハイア第一学園。


 学園が中心となって動いている学園都市のシグハイア第二学園。


 この二つの学園は派遣学園とは一線を画す存在だ。派遣学園ではそこの土地の仕事しか受けることはできないが、第一、第二学園では国中の仕事を受け負える。


 それに治療院も武器防具職人もおり、旅もしやすいと聞く。いや、そんなものは些細な理由だ。



 そう。その二つの都市にはかの貿易都市バイララに勝るとも劣らない量の珍味が集まるというのだ!!ならばそこしかないだろう!


 そうしてやって来た第一学園で私はものの見事に突っぱねられた。


「大貴族とはいえ成り損ね如きが誇り高き第一学園に入れるとでも?」


 締め出された門の前で私を担当した男にそう言われ、私は思い知った。


 今の私は弱者なのだ。誰の保護も受けることができない『私』に価値などないのだ。少なくとも第一学園では。


「…努力は認める。ただそれだけだ…か」


 こんな時に思い出すのは父の言った言葉。それは今だに私の心に深い傷を作っていた。


 そして半ば惰性のように向かった第二学園で私は拍子抜けするほどにあっさりと迎え入れられた。


「第一学園?ああ……まあ、ねぇ?あそこは頑固と傲慢で出来たようなとこあるしねぇ…」


 書き終わった書類の前で私を担当した女に教えてもらったところによると、第二学園と名乗ってはいるが本当はこちらの方が出来たのは先で、貴族が


「何故我々のような高貴な人間が庶民と同じ学び舎に通わねばならんのだ」


 と謎の抗議を始めたのがきっかけで王都に新たな学園を作ることになったらしい。更に


「貴族が二の座などあり得ない」


 らしいのでそちらが第一学園と呼ばれることになり、そして貴族の中でも高位の者達しか入学できないようにされたのだとか。


「…その貴族らは馬鹿なのではないか?」

「いくら馬鹿でも提案したのが当時の唯一の王子(王位継承者)だったらしいからねぇ…『誇りある貴族』の皆様は王子に対しての点数稼ぎで頭がいっぱいだったのさー。先王も病気で死にかけてたしね。だからいろんな大人がそれに賛同して資金(わいろ)もたっぷり用意したのさ…そうだね…シンド家とかバレット家とかが筆頭だったかな…」


 そう言われ私はあそこで粘らなくて本当によかったと思った。そんな貴族達の仲間だと思われるのは非常に癪だし何より父親が一部を担った学園などにいるのが嫌だ。


 そう思いながら手続きを終わらせてついでに寮を一番安いところに決めた。


 …暇になれば何をするか。


 食う。


私は手続きを終えた勢いそのままに屋台街へと繰り出した。



「おい!何ぶつかってんだよ!」

「ご、ごめんなさいっ!!」

「てめえ!人にぶつかっといてすいませんで済むと思ってんのか!」

「で……でも、なら何をすれば…」

「何でもあるでしょー?金とかー…体とか、ね…」


「……下衆共が…」


 一人の少女を二人の男が脅迫している。少女1人に対しても多人数で向かわねばろくに文句もつけることができないとは、なんとも腰抜けだ。


 しかしいくら腰抜けといえどあの二人、私よりもいくらか実力が上のようだ。


 ……まあ今まで私は銃の修行ばかりしていたから仕方が無い。決して悔しくなどない。決して。


 食べていた蛙の串焼きを胃の中に果実水とともに流し込み、少女と男共の間に立つ。


「そこの二人、何をしている…」

「…あァ?」

「恐喝に暴行未遂、営業妨害…学園規制隊に捕まりたいのか?」

「は?…チッ、規制隊かよ。行くぜ」


 うむ?私は規制隊ではないのだが…まあ勘違いしてくれる分には問題ないだろう。難儀すると思っていたが、案外と簡単に行ってよかった。


 と思っていると、2人の男のうち1人が私の体にエンブレムがないことに気がついたので、荒事にならないうちに倒れていた少女を負ぶって逃げようとした瞬間に私は、あの女に出会った。


 よくわからない濡れた白いブロックのようなもの(どうやらトーフノカドというらしい)を手に持って悠然とその場に立つ女。


 その女は自分が投げたトーフノカドを拾いつつ最早ぴくりとも動かない男の脈を測っていた。


 そしてその後ろから剣を振りかぶったもう一人の男。


「おいっ!逃げろっ!!」


 気がつけば私はそんなことを口走っていたが、結果的にそれは全て無駄であった。

「死ねやびゅっ!!」


 女が振り返るよりも早く、それこそ私の銃弾ですら捉える目をもってしても霞むほどのスピードで振られた腕が、正確に言えばその手に持たれたトーフノカドがその男の顔面を捉える。

 そこで手は止まるが生まれた衝撃が止まるはずもなく、男の頭蓋を貫き、後頭部から頭蓋の破片と脳髄と共に皮膚を食い破り、


「な…!」


 そこで全て元に戻った(・・・・・・・)


 そして


「…やべ、手加減間違えた……」


 女が振り向いた時にはただ鼻の折れた男の顔が残った。


 町の人々が女を賞賛している。おそらく誰も気がついていないのだろう。あの男が一度死んだ(・・・・・)事に。




 少しの自己紹介を済ませた後にそれぞれの用を済ませるために別れた。


「…あの女…何者だ?」


 私は警戒心を緩めてはいない。なんだか久しぶりに褒められたからといって顔を赤くなどしていない。気がつけばあの女の事を考えてなどいない。

 これは、あれだ。あの女、キルヨのことをよく理解して対策を練るためだ。頭から離れないわけではない。去り際がカッコよかったとか思ってない。決して。


 そうして自分の寮に着く頃にはすっかり元の思考に戻っていた。変になどなっていないが。


 と、いうのにだ。



「………よろしく」

「なんという偶然……」


 黙れ!何がなんという偶然だ!なんでお前と一緒の部屋で眠らなければならないんだ!緊張して寝ることができないではないか!いや、私は何時も通りの平常心だが!全く鼓動が昂ぶってなどいないが!だが困る!


 そう言うが、まあ二つほど良いこともあった。


 一つは

「どうも、リラです…キルヨさんの友達…です…」

「ヘレナ…だ。キルヨの同居人…だ」

「宜しく…お願いします…?」

「ああ、宜しく…?」


 私に友人が一人出来たことだ。彼女の名前はリラ。小さな可愛い女の子だ。しかしそれでも頭はいいらしい。



 そしてもう一つが、



「ほい、召し上がれ!」

「おお!!」


そう。キルヨは料理の天才だったのだ。



 私の前に出てきたのは大きい焼いた肉の塊。上に乗ったソースがなんとも美味しそうな匂いを漂わせている。キルヨによると『ハンバーグ』という料理らしい。強そうな名前だ。


「頂きます!熱っはふっ」

「まさかの手掴み!?」

「|はひははずはっはのは?《なにかまずかったのか?》」

「飲み込んでから喋れ!」

「んっ…ごくん。……美味い!私も料理はそこそこできる気だったが、流石にここまでではない…」

「ははは…」

「キルヨはすごいな!!私よりも強いしカッコいいし料理もできる!」

「…ははは………」


 なぜかキルヨが凄く気まずそうな顔をしている。


「そうですよ!私のことだって助けてくれたし。王子様ですよ!王子様!」


 いつの間にか手を洗ってきたリラも何かを飲みながらそれに賛同する。


「リラ?それはなんだ?」

「調理場に置いてあったお酒ですよ?」

「やっぱり俺が買ってきた料理酒じゃねーか!吐け!ぺ、しなさい!!」

「うわーキルヨさんが迫ってくるー。へんたいー!」

「こいつ性質(たち)悪いな!!」


 ……こんなにも暖かいのは何時ぶりだろうか。部屋が、ではなく心が。


「ふふ…」


 気がつけば私は二人に気づかれないように小さく笑ってい「ヘレナ?なんで笑ってんだ?」


 …気づかれていた。


 ふと、天高々に酒瓶を掲げながら訝しげにこちらを見るキルヨとそこに向かってキルヨの腕をよじ登ろうとして一生懸命に手足を動かすリラを見つめる。


「…まあいいけどよ」

「ああ。そうしてくれ。今はまだ、この気分を味わっていたいんだ」



 理不尽な強さと死者蘇生の術を持った謎の魔人、キルヨ。


 見た目はただの少女だが学園随一の天才らしいリラ。


 …こんな本来ならば緊張するはずの面子なのに全く何も感じず、いつも通りの自分で居られる。それに何故だろう。彼女らと会う前に感じていた恨みや学園に対する不安など、とっくに無くなっていた。


 今はただ安らかな気持ちが…


「キルヨさぁん…眠いぃ…」

「まじか。自分の寮帰れるか?」

「キルヨさんと一緒に寝るー…」

「お?なんだか積極的だなぁ…寝苦しいだろうからローブ脱がすぞ?いいのか?本当に脱がすぞ?」


 安らかな…


「ふぁ…あ…」

「ん?ここか?それともここか?」

「ぅ、ぁ…ふぃんっ!?」


 安らか…


「どれどれおいちゃんに教えてみ?うん?やっぱりここが弱て痛い!!何すんだよヘレナ!」

「煩い!黙れ変態!ロリコン!色情魔!!こっちくんな!」



 やっぱり安らかなんかではない。仕切り板を買うことを検討しておこう。後は拘束用の縄を。

キルヨ

女。………女?

年齢不詳。

本編の主人公。巻き込まれ型というか自分から巻き込まれに行くことが多い。同性愛者。というか……女?


実はこのキャラは同作者の書きかけで挫折した小説、無印『鬼人伝』の主人公の『マルニ=キルヨ』というキャラクターだった。そっちはかなりシリアスに走っていたので挫折した覚えがある。

しかしキャラクターや設定を作り込みまくってたのでこちらでもそこからの流用がだいぶ出てくる。


ちなみにリラはラティアという名前で今と同じような立ち位置。性格はかなり暗かった。


タムラはキルヨの親(?)で、名前は変わっていないが、性格は神様だった。一話で死んだが。


ちなみに無印の方ではクダにキルヨの腕が捥がれるというアレな描写があった。


次回、リラ(予定未定)

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