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三強と規格外

たいとるかんがえるのめんどくさいです

「いやいやいや!歓迎するぞ!キルヨ嬢よ!…そう!歓っ……迎!するぞっ!!キルヨ嬢!!!」


いつの間にか現れた大男は何事か叫びながら大袈裟に両手を広げてばたばたと降っている。なんだ?飛ぶのか?


「今聞いたよ」


マジでなんだ?このおっさん?


身体は一目でどれだけ鍛えているのかがよく分かる量の筋肉が付いている。ボディビルダーのような見せる筋肉ではなく使うための筋肉だ。

身につけているのは半ズボン、スキンヘッドの頭にバンダナ、以上。あとすげえ汗かいてる。抱き締められたギドが濡れ雑巾みたいになってる。


手近にいたリリアに誰何すると、ふるふると震えながら声を紡いだ。


「こ…校長!?帰ってきたんですか!?」


は?


慌ててギドの方を見ると、しっかりと頷かれた。

ハツノの方を見ると、なぜか怒りながら頷いた。


「こっ………校長ォッ!?」


え!?この無毛(ハゲ)ゴリラが校長!?


「おぉ、リリアではないか!調子はどうだ!?まだ魔法薬学は最下位か!?」

「なっ…今そんな事叫ばなくてもいいじゃないですか!!」


おっさん…校長は来ていきなりリリアの成績を暴露した後に濡れ雑巾になっているギドに何事か伝えると、その言葉を聞いていたハツノにバンダナを掴まれてそのまま引きずられていった。


「………ギド、あのおっさんに何言われたんだ?」

「…『書類とか面倒臭いからキルヨ嬢の入学手続きを代わりにやっといてくれ』…だそうだ」

「ああ…そりゃハツノ怒るわ…」

昨日だってこっちが引くくらい凄い顔して書類と格闘してたからな…あれ校長の分だったのかな?


「あんなんが校長でいいのか…?」

「彼は強い。この学園の誰よりもな。…校長になる理由など、それだけで十分なのだ」

「ふーん…まあ確かに強そうだけどな…」

「ふむ…しかしこれで六体目のドラゴン単独討伐か…本当にあの方は凄まじいな」


「ど…ドラゴン!?」


ドラゴンといえば地球にある色々な物語の例に漏れず世界で最強の種と呼ばれる生き物だ。その手は地を揺らし、その翼は嵐を起こす生ける天災…らしい。上位種になると会話もできるとか。


「っていうことは何か?あの無毛(ハゲ)ゴリラは一人で天災並の力を持ってるのか?」

「ハゲゴリラ……ああ、そういうことになるな。このシグハイアで三番目に強いお方だ」

「へぇー…凄えんだな」


というかそんな強いやつの上にまだ二人いるんだな…


「ちなみに二位と一位は誰なんだ?」


「ふむ…二位は『シグハイア第一学園』の校長のメイリア殿、一位は無論『英雄』国王フリード様だ。ちなみにメイリア殿はすでにドラゴン並のモンスターを九体、フリード様は二体倒しておられる」


ん?確か国王が一番強いんだよな?


「なんで一番成果が少ないのに一番強いんだ?」

「当たり前だろう?国王は簡単に前線に出られるものではないのだ。ドラゴンの単独討伐など以ての外だ。しかしフリード様がこの国で一番強い事は三人共に了解している事実だ」


なるほど。実力と実績は必ずしも一致しないって事か。いくら実力あるからっていっても勝負なんて時の運だ。圧倒的な戦力差があろうと何かの間違いで死ぬかもしれない。王族なんて責ある立場にいたらそんな事は極力避けるべきなのだろう。


「あれ?じゃあなんで二体も倒してるんだ?生ける天災なんだろ?二体でも十分死ぬ可能性があったんじゃないのか?」

「………勝手に、行ってしまわれるのだ……」

「は?勝手に?」


うん?なんだか嫌な予感がするぞ?


「いつの間にやら城から抜け出して、その度に僻地の派遣職員から国王発見の報告が来るのだ」


……随分と破天荒な国王だな。絶対内政とかしてないだろ。


「なあ、国王としてはそれでいいのか?」

「ふむ、城を抜け出す件についてはやめて欲しいというのが我々国民の総意だがな…かの方には実際国王としての政治能力は期待されておらん」

「は?」


政治してこその王じゃないのか?


「彼はあまりにも力が強すぎるのだ。他国にも強い者はいるが、国王様はその中でもダントツだ。実際この国の領土は『問題が起これば国王が半日以内に駆けつけられる範囲』なのだ。『国の頂点に国王がいる』と言うよりも『国王が国を保護している』と言った方が正しい気がするな…」


なるほど…国王って役職名をつけられているだけで実際求められている役割はまったく違うものなのか。それに国王って肩書きなら国にとって重要な取引なんかには全て立ち会うことが出来るからな。それだけで相手にとっては相当なプレッシャーなわけだ。


「ありがとう、なんか凄いってことがよく分かった」

「ふむ、そこがわかれば問題はない。色々と(のたま)ったが結局凄いということがわかればいいのだ」


ギドがそう締めくくるとほぼ同時に路地からリラが飛び出てきた。


「キルヨさん!大丈夫ですか……ってもう終わってる!?速っ!」

「あ、リラ!遅かったな!」

「キルヨさんが速すぎですよ!せめて勝負の途中になると思ったのに…!」


話を聞くと、この試練を受ける場合は大体速攻で四肢を叩き折られるか、何時間も小さい技で削り合いをするかの二択らしい。俺のように特に負傷もなく、しかも勝てるのは少数なんだそうだ。


「スケルトンの時も凄いとは思ってましたけど、まさか戦闘科のこの二人に勝っちゃうなんて…」

「ん?それほどすごい奴らだったのか?こいつらが?」

「ふむ…返す言葉も無いな」

「……いつか殺してやるから」


リリアの台詞を聞いたリラがこちらを見てくるが、俺は何もしてないよ?


「……まあ、これでキルヨさんも晴れて入学ですね。おめでとうございます」

「ああ、ありがとう…って、入学?就職じゃなくて?」


俺にとっては当然の疑問を述べると、ギドとリラが顔を見合わせてほぼ同時に溜息をついた。


「…リラ殿、記憶喪失というのは存外不便なものなのだな」

「そうね。相手が一般常識を知らないってことがこんなにもめんどくさいとは思わなかったわ」

「リリア、貴様に聞いたのでは無い」

「何よ!あんたまた私を除け者にするつもり!?」

「……そうだと言ったら?」

「ぶっとばす!」


戦闘を始めた二人の横で俺はリラに色々と質問した。


「なあ、どういうことだ?入学ってことは俺は生徒なのか?金は稼げるのか?飯は出るのか?寝床は?飯は?」

「そ…そんないっぺんに言われてもわかりません!」

「う…ごめん…で、どうなんだ?」

「それは歩きながら話します。ついてきて下さい」


くいと俺の袖を引っ張って早く早くと催促するリラ。その仕草がその小さな身体によく似合っていて…なんというか…


……鼻血出そうなくらい可愛いです。出さないけど。


「キルヨさん、どうしたんですか?……早く行きましょう?」

「…ぶふぁっ」


少し上目遣いで何処か不安げにこちらを見つめてきたリラに思わず噴出する。


何がって?わかるだろ、鼻血だよ。


「え!?ええぇ!?どうしたんですか!?キルヨさ……えぇ!?」

「リラ……おま、可愛過ぎ……」

「え!?は?えぇ!?」

「やばい、止まんない…」

「ああぁ、拭きますよ、全く、何で私を見て鼻血なんですか…」

「あ、やめろお前…」


わざわざ俺の鼻血を拭いてくれるリラだが、身長が完全に足りてないので俺の身体を掴むようにして顔に手を届かせる。その必死な顔が…


「そんな可愛かったらまたばふぅっ」

「ぎゃあああ!血の雨が、血の雨がっ!!」


……俺は悪く無いと思う。



九話で書こうとしたけどやめたシーン

「……ゴラゲゾ・ボゾク・キルヨ!」

「ここではリントの言葉で話せ」

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