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YellowCompany/Co.jp  作者: BloodyBishop
孤軍奮闘
7/11

MicaDevilsRumors

 昼食の時、ソーリと教授の話と中隊の役割分担に付いて教えて貰った。

 二人はインド出身で、壊滅した前の中隊、ブルービショップは、創立当初からの伝統有る中隊で、インドでは小中学生になると、夏休みの1ヶ月を寺院で僧侶の修行をする。

 アメリカだとサマーキャンプのように同年代で共同生活するそうだ。

 そこから一応の僧侶修行の経験者と言う事で、ビショップと命名され、ソーリは会計担当と工兵、総理はカーゴ(輸送と備品調達)と後方支援を担当していたそうだ。

 「すいません、今回も是非そちらを担当させてください。教授氏とは何時も調達武器の件で喧嘩していましたが、教授氏の作戦行動に乗っ取った武器選びのセンスは抜群です。

 敵味方の武器の特性や性能も熟知していますので、二人で組めば後方支援はバッチリですね」そう言うと、教授もソーリを褒め称えた。

 「ソーリも凄いよ、予算はもちろん、工兵作業はどの隊にも負けない速さと的確さを持っている。ミカ中隊長、期待してください」

 頼もしい先輩二人の話で、又一歩僕らの新規中隊結成に近づいた。

 「そういえば、もう一人、今年入隊予定の子が来ると聞いていたが、女の子だったよなソーリ、もう決まったかな。入学式で会ったが中隊が無くなったと聞いて、がっかりしていたが」

 「そういえば、教授氏と会いましたな。何でも情報端末系を弄るのが得意とか」

 ヒロは認識プレートを使って未入隊者リストから情報を拾った。

 「ああ、この子ですね。 バングラディシュ出身のお二人と同郷ですね。ヒユリさんと言う子ですが、寮に引きこもっているらしい……。両師匠、もう一度会ってくださいませんか?」

 「ユウカも行きます。男子の師匠さんだけよりも女の子が付いて行けばきっと入隊してくれると思うよお兄ちゃん」ユウカは妙に張り切ってヒロに言った。

 「そうだな、そっちはユウカと二人に任せる。ヒロ飯の後、移動しながら例の写真撮って、手分けして未入隊者に送ってしまおう」

 「分かりました。では早めに昼食を済ませましょう」ヒロがそう言い、僕を見た。

 ミカもユウカも同じく注目している。

 「ユウタ、早く食え。いつも魚の定食をテーブルに持って着てから、何で裏返したり写真取ったり……。お前が一番遅いんだよ。何時も何時も」

 「だってさ、皆気にならないの?今日の“サバノミソニ”て言う魚なんてサイトに乗って無い魚なんだよ?珍しい魚なんだから観察してから食わないと」

 ユウカがびっくりして聞き返した。

 「ユウタさん。それサバですぅ。ミソは日本の大豆から作る、エト、調味料……。ソースですよ。サバのミソソース和えって言えば分かります?」

 「え……?ぐはー、そうなんだ。そうか。成るほど。日本語は奥が深いね」

 「いいから早く食え。まだ半分以上有るぞ」ミカは最後の春巻きを食べながら僕を急かした。

 サバノミソニを急いで口に詰め込んで、ソーリと教授に別れを告げ今日も演習地区の片付けのためミッションルームに向かった。

 途中の海岸通りでメール作戦用の写真を取る事にした。

 「では、ユウカさんお願いします」僕は恥ずかしがっているユウカに声を掛けるた。

 すると、コクリと無言で返事をし、ユウカは眼鏡を外し三つ編みを解いて制服のブラウスのボタンを三つ外した。

 とたんにユウカの目が変わり、そこにはアイドルユウが立っていた。

 仕事モードに入ってしまうと、さっきまでモジモジしていたユウカは、大胆なアイドルポーズを決めカメラ目線で僕らを挑発して来る。

 防波堤から砂浜に降りたユウをヒロと僕、何故かミカまで認識プレートの撮影機能を使って素人ながらにパシャパシャと写真を撮った。

 確認するとかなり際どいアイドル写真がバッチリ撮れた。

 次はミカで、防波堤から見下ろす感じで中指を突き出し掛かって来い的なユウカとは真逆の挑発ポーズで写真を撮った。

 ヒロはドサクサに紛れて挑発ポーズ以外のミカを沢山取れたようでご満悦のようだ。

 僕もユウカの誘惑写真を結構撮れたので満足したが、いざ使う写真を選ぶと、ユウカのはミカが取った可愛いユウが決まり、ミカのは僕が取った怖いミカに決まった。

 僕の認識番号を使い14名にメールを送った。

 ニューヨークから来たモヒカン3人にはミカの写真に「掛かってきやがれチキン野郎!明日食堂で待つ」と書いて送り、残りには「ユウの情報有り。交流希望。明日食堂で」と書いて送った。

 これで明日の準備はOK。ミッションルームに急いだ。


 「えー、皆さんお疲れ様です」教壇に立つ大発教官がマイクを持ちながら挨拶した。

 ミッションの前に今日の作業目標と確認事項をミーティングするのだが、今日は少し雰囲気が違った。

 普段は3人の教官が今日は6人居る。

 それから、昨日までミーティング時は最初に組んだチーム毎にバラバラに立って聞いていたのだが、今日は認識番号順に並ぶよう支持された。

 「今日で、中隊入隊の期限が残り10日と成りました。もう既に入隊先が決まり、各中隊で役割分担を支持され、先輩から教授されながらドローンの操縦可能数を増やしている社員が殆どだと思います。そこで、今日からは中隊長から支持が出ているチームに分かれて、作業してください。ではそれぞれチームに分かれ作業開始してください」

 そう言ったとたん教壇の前には僕らを含め24人が残り他の新入社員は、支持通りチーム毎に別れ、操縦エリアに散って行った。

 残された社員達はザワザワと不安になったのか騒ぎ始めた。

 「えー静かに!残った人達は前に集まってください」

 皆が教壇の前に集まった時、その周りを残りの教官達が囲んだ。

 何事かと残された社員がまたザワザワと騒ぎ始めた。

 何時もニコニコして僕らに接している教官の表情は、今日は面影も無くむしろ怒りを抑えているようで、マイクを置いて教壇を降りた大発教官はゆっくり教台に腰を下ろし、大きくため息を付き話し始めた。

 「さて、残された者の仲で呼ばれた者は前へ。ミカ君、ユウタ君、ヒロ君、ユウカ君」

 「はい!」僕らは大きく返事をし、教官の前へ一列に並んだ。

 「皆、聞いてくれ。この四人は新人4人で新規部隊を作る予定と報告されている。そうだね?ミカ中隊長予定者!」教官が叫んだ。

 「はい!そうであります!」ミカがそれに答えた。

 一列に並んだ僕らの後ろから又ザワザワと声が聞こえた。

 「それで?今何人集まったかな?ユウタ君?」

 「はい!先輩二人が今朝、入隊志願して頂きました。残り4名で有ります」

 僕は精一杯大きな声で答えた。

 教官はにこやかに笑いながら「よろしい、後10日諦めず頑張りたまえ。それで、ヒロ君、それぞれ今、ドローンの操縦可能数を報告してくれ」

 「はい!ミカ中隊長予定者5体、ユウタ3体、私4体、ユウカ5体、新規加入希望者のソウタ(ソーリ)2回生15体、キョウタロウ(教授)2回生15体。合計我が新設中隊可能稼動数は47体で有ります」

「では、ユウカ君。君は指導しているそうじゃないか。実に短期間で素晴らしい教官ぶりだ。これからは君も操縦可能数を増やして行くのだね?」

 ユウカも緊張した面持ちだが、しっかりした声で答えた。

 「はい!今、私独自のカリキュラムを組、毎日演習中です。私も今日から先輩方から指導頂ける予定ですので、早めに20台を目標に頑張ります」

 「見事、素晴らしい」

 そう言って、後ろでザワ付きながら僕らに皮肉や好奇の目を投げかける集団に向かって、教官は質問した。

 「後ろの残りの社員で、ドローンを1体以上動かせる者はいるか?」

 その問いに残された社員は誰も手を上げなかった。

 その時、誰かが「すいません教官、一言良いですか」と言って発言の許可を進言した。

 「私、インド、バングラディシュ出身のヒユリです。そうおっしゃいますが、私は先輩方から入隊の勧誘は受けて無いし、どうやって操縦数を増やすのかもレクチャーされてません。ここの教育方針がおかしいので有って、私達が悪い訳では無いと思います」

 そう言うと周りの社員も口々に「そうだ、そうだ。おかしいのは俺達じゃないぞ!」とチャチャを入れ始めた。

 その時、大発教官が怒鳴った。

 「黙れ!お前ら学生気分がまだ抜けて無いのか!」

 余りの声の大きさに、皆シーンとなった。

 「いいか?お前らは、ここに着て直ぐに支度金を受け取ったはずだ。その時点でお前らは社員なんだ。ドローンを動かして、金を稼ぐプロに成ったんだよ!分かったか?やる気の無い奴は日割りで計算してやるから、残りの支度金を置いて、実費でスクエアから出て行け!もっとも民間機は1台も無いから、太平洋を泳いで今すぐ家に帰れ!これから一人一人面談する。架かれ!」

 教官の号令で残りの教官が抵抗する社員を引きずり出口へ向かった。

 「よし、毎年いやになる。ああして反抗的な奴らは決まって演習中に逝ってしまう。かと言って他の中隊でも足手纏いに成って、中隊全体が腐ってしまう」

 又、腰を下ろして床を見つめながら、教官はため息を付いた。

 「では、ミカ君検討を祈るよ。今日からは4人で大型廃船一台、解体してくれ。フルにドローンを使って良いからな。頑張れ」

 やさしく笑いながら、教官はミカに言った。

 「そうだ、あの中から君達中隊に入隊するよう勧誘を進めて置くよ」

 「ありがとうございます。教官できれば生きのいい奴をよろしくお願いします」

 僕らは教官に挨拶してチームの操縦エリアに向かった。


 「いやービビリました。大発教官があんなに怖い人だとは思いませんでしたね」

 傾いた巨大タンカーの解体をしながら、ヒロが通信して来る。

 「上手く行くと良いね明日の昼。ところでさ、さっき発言してたヒユリって女の子、教授が言っていた人だよね?ユウカ大丈夫?凄く気が強そうだけど。ミカも一緒に行けば?四人いけば何とか成るかも」

 今日はミカとユウカは6台のドローンにチャレンジしている。

 「あーうるさい、今集中してるから話かけるな」モニターに移るミカの目はキョロキョロして、忙しなかった。

 初めて直ぐにコツを掴んだユウカは、ミカの操作画面と自分のとを二分割にして、ミカに指示を出している。

 「ミカさん上手いです。あ、4号機落ちますよォ。引き返して。そうそう」

 そうしながら、自分のドローンはちゃんと動いているのだから凄い。

 「ネェ。ユウカ、もう12台行けるんじゃないかな。すごいよ」

 4人でワイワイやりながら、順調に大型タンカーの解体は進んで行く。

 「ユウカ、俺も今日一緒に行くぜ。 気の強い女子は好きだ。家来にしてやるぜ」

 成れて来たのかミカがそう言った時だ。

 ポンと言う音が鳴り、指令ウィンドに通達と表示された。送信は大発教官からだった。

 [□通達□1600時三名の要員を追加、指揮はそちらに任せる以上□]下の方に文字が流れた。

 しばらくすると、3体のドローンがタンカーの船体を登って来た。

 突然、僕らの通信に3人が割り込んで来た。

 「おい、教官に言われてここに来た」

 今朝、履歴データで見たモヒカン3人組みだった。

 「少しばかりカンフーが出来るからって好い気になってんじゃネーゼ!カンフー女」

 いきなり青いモヒカン野郎が言った。

 「おい、カンフー女て俺の事か?」ミカのドローンが一斉に動きを止めた。

 「ああ、俺達もニューヨークじゃ空手をかじってるんだ。お前の技は変わっているな。中国拳法か何かだろうが」別の奴が言ったがミカは眉をピクピクさせながら黙っていた。

 「確かに強いが、極真には適わないぜ。そうだ今日から俺がここの中隊長になる事にするよ。文句は無いな?お前ら」赤いモヒカンが言った。

 「ふん、分かった。俺に勝てたら中隊長はお前等の中から選ぶがいい。だが俺が勝ったら、お前等は俺の子分で一生過ごす。それでどうだ?」

 「はははー余裕だね。俺はニューヨーク極真空手大会ではミドルで5位だぜ、女のお前が勝てる訳無いじゃねーか。まあ、お前がマーシャルアーツの全米ミドルチャンピオン、女壊し屋マイカデビルなら話は違うが。ミカちゃん。そんなナマッチョロイベビーフェイスで俺に勝てるか?ついでに俺に負けたら、一生お前は俺の玩具にしてやる。それでもヤルか?」

その時、一斉にヒロのドローンがモヒカン達に向かい走り出した。

 「貴様等、私のボスに指一本触れさせません」ヒロの顔は本気だった。

 「ヒロ、待て!これは俺の仕事だ」

 ヒロのドローンは動きを止めた。

 「丁度いいや。上手く行かなくて最近は手を抜いていた。思い切り暴れさせてもらう。じゃあ、放課後5時に武道ホールで良いな。ここでは足手纏いだ終わるまで下で遊んでろ」ミカは少し笑っていた。

 子分に出来ない敵と今まで何度も戦い、虚無感を感じていただけに今日のミカはかなり荒れる。

 「へ!言われなくても、テメーらとはつるむ気もネー。そう言えばユウタはお前か?これが終わったらお前もボコボコだ!変なメール送りやがって!おい行くぞ」

 そう言うと3体のドローンは大型タンカーを離れどこかに消えた。

 「うえーん。怖かったよォお兄ちゃん」

 ユウカが泣きそうな顔になっている。

 「あははは」僕とミカは大きな声で腹の底から笑った。

 「どうしたんですか?」ヒロとユウカはキョトンとした顔で聞いた。

 「だってさ、マイカデビルてミカの事だよ。ミカはそう呼ばれるの嫌いだけど。試合中汗で体をキラキラさせながら、容赦無く相手を倒すからそう言うあだ名が付いたんだ。笑うよ。ワシントンの極真空手チャンピオンもミカの子分さ」

 「ミカさん凄いですゥ。やっぱり私達の中隊長はミカさんで無いと」

 ユウカが笑う顔の隣で、ヒロは又惚れ直した顔をして頷いていた。

 「あいつらが同じ中隊に成るのは、しゃくですが、ミカさんの2番弟子としては致し方有りません。御武運を祈ってます」

 「よし、残りやってしまおう。ユウカ、一緒に行けなくなったが後は任せた」

 「了解ですミカさん。ヒユリちゃんは師匠さん達とユウカにお任せください」

 これが成功すれば、中隊結成はクリアだ。

 ダメでも明日のメール作戦も有る。

 ゆっくり傾く太陽が海岸沿いの波間に反射して綺麗に輝いていた。


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