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YellowCompany/Co.jp  作者: BloodyBishop
ルーキー
3/11

SquareBaseSide

 期待とは裏切られる為に有る。

 現実とはこういう物だ。

 目的地の米軍空軍基地に近づくにつれ、白い砂浜は瓦礫に変わり、灰色のベースキャンプと樹木の緑がまばらな海上要塞島スクエア地区は日本自治区の旧四国と言う島で、地殻変動でかなり太平洋の方に移動し、その衝撃で生存者は居なかったそうだ。

 後から授業でそのことを知った。 

 ここで働く人はアメリカ本土から仕事で来る人ばかりで、研修生の僕らとアメリカ軍関係者が多く、建物も今はカンパニーの工場と、アメリカ軍基地、後は、今立っている入社式をしている教育機関、WaemHaus(ワームハウス、温かい家)の宿舎と演習場しかない。

 中国管理自治区の九龍やロシア管轄自治区ヌシュナイでは、地元の子が行くので休みは寮を出て実家に行けるけど、ここはアルカトラスと同じで飛行機じゃ無いと逃げだせないので太平洋に浮かぶ刑務所と呼ばれている。

 始めてスクエアのアメリカ空軍基地に着いたあの時、辺りを見渡すとミドル学校で見かけた日本人が沢山いた。

 皆金持ちばかりだとミカが言った。 

 でも、ここでは、金持ちも政治家も王族ですら関係ない。

 階級、貧富、住む場所に関わらず同じ条件でライセンスのための研修を受けるのだ。

 だから初任給は全員同じ額の給料が出る。

 ただ役職が付くと手当が有り、資格手当や成績優秀者ボーナスも在るそうだ。

 空軍基地の売店で、スティクアイスを食べながらミカが言った。

 「ヘイ、ユータ見ろ、同じ服着たイエロージャップが、いろんなバック持って、ゾロゾロ降りてくるぜ。餌を抱えた軍隊ありみたいじゃないか?」

 「そだね」

 僕らの後にニューヨークとトロントから来た連中が、連絡用バスからぞろぞろ並んで降りてくる。

 確かにアリだ。軍隊アリ。

 ワシントンを出るとき、携行を許されたのは、本社から送られた支給品の制服、下着2種類と靴下二足、靴とマニュアルだけだったのでリュックだけが自分の個性を表現できた。

 だから、ミカはぬいぐるみのバックを持って来ていた。

 彼女の唯一の欠点は夜、ぬいぐるみが無いと眠れないのだ。

 後の必要な物は、全てこの島のショップで買い揃えなくてはいけない。

 「俺らもあんな風に見えてるんだナ……クールじゃ無いゼ」

 ミカはそう言って顔を顰め、「じゃ後7年よろしく!行くかユウタ」そう言われてミカと立ち上り、二人でアリの行列に加わった。

 後で習った事だけど、最初はアメリカだけがお得意様だったみたいだ。

 けれど、九州、北海道の土地を購入するために、ロシア、中国と交渉した時に、AUDシステムの受注を条件で、土地譲渡と荒廃した土地の使用許可が下りたそうだ。

 アメリカはかなり渋ったらしいけど、震災の時、真っ先にニチベイアンポ(日米安保)を守らなかった事を世界に公表すると、会社が脅したらしい。

 そう言う理由で、僕らアメリカ陣衛の旧四国を拠点にするスクエア支社、旧九州の中国陣衛“九龍支社”とロシア陣衛、旧北海道のヌシュナイ(ヌシュナイザローバ、南の道)支社に分かれて、仕事を受注する事になった。

 当然、諜報活動や紛争地ではカチ会う事も有るらしいけど。

 でも支社同士で喧嘩する事は何処の会社でも有るそうで、ビジネスの世界では当たり前だと研修教育担当の上司が授業で言っていた。

 そうして社内で争う事が世界で生き残る人材と会社を作るのだ!と授業で教わった……

 (我ながら覚えてるな。良く試験に出ると言われた所なので……)

 今は軍事研修で九龍支社の日本人暫定自治区外戦闘地区に居る。

 僕らが操る第二次大戦中の兵器は、実践演習で各国の戦術データを取る為に設定されたルールで行われている。

 近代兵器を使うとコストが嵩む事と、各国の軍事データが漏洩する恐れが有るため、(ここは覚えなくて良いと言われた)ロートル兵器にドローンシステムを組み込んで、遠隔操作で陣衛に別れ仕事として擬似戦争をしているのだ。

 ここからは、僕らのブルーファントム中隊の意見だけども、僕らスクエア校の連合軍戦車は、今戦っている九龍校のドイツ帝国軍戦車には到底敵うはずが無いのだ。

 最初、九龍支社は1年間、人民軍兵器で戦って連敗、ズルイ事にドイツの兵器に切り替えて来た。

 装甲の厚さと火力の違いは微妙にこちらが不利だ。

 更に辛い事にヌシュナイ校のソビエト連邦戦車は、さらにその上を行く。

 だからこうして、僕らの中隊は幽霊のように突然現れ、跡形も無く消える戦術を選んだ。

 スクエア支社陣営では卑怯者中隊と言われるけど、僕らはミカ率いるブルーファントム中隊を気にいっている。

 新人ばかりの臆病者の集まりだから、逆に今日まで生き残れたのだ。

 「ユウタ、指揮車、次のポイントに移動する。 スナイプドローンも移動して!ポイントデルタへ展開!」

 中隊長のミカが指示を出し、皆それに合わせて移動を始めた。


***************


 僕らのスクエアで初めての友人(ミカの家来)ヒロの事を話そう。

 入社の当日に僕らはドローンマニアヒロに会ったんだ。

 その時はまだヒロも僕らもドローンに尽いては同じぐらいの知識だったけどね。

 研修機関のワームハウスに着くと事務所で宿舎の部屋のキーにもなる認識番号プレートをもらう。

 手のひらぐらいの通信可能なタブレット方式の携帯端末で、入社時の一時金がチャージしてあり、部屋番号もそれで確認すると言う事だった。

 ミカは隣の女子寮だそうで入り口で別れたので、ガヤガヤと見知らぬ同期達とエレベーターで新人フロアへ向かった。

 部屋番号を確認しドアの前に立つと自動的にドアの鍵が開いた。

 部屋は個室で、窓から海が見え空調も効いている。

 バックをベットに放り投げ、自分もそこに倒れこんで暫く目をつぶった。

 午後3時に寮生活に付いて説明会が在るので起き上がりそのまま会場へ行った。 

 「エーでは、7年間UADシステムの全てを学び適正部署に配属されるまで、この宿舎で生活してもらいます。

 ただ、希望や適正にかかわらず3年間は兵役同様、システムを使った、軍隊経験を積んでもらいますが、実戦さながらに3つの支社で寮生活をしながら競い合い、日本民族としての適正と国際社会で生きて行く術を磨いて、世界に羽ばたいてもらいます。

 幸い、ここのスクエア地区の半分以上は人が住めない瓦礫と建造物が散乱し戦場さながらなのと、回りは太平洋に囲まれた場所で、逃げようと思っても逃げられません。

 逃げる事を考えるよりも、一日も早くAIドローンをより多く動かせるよう努力をしてください。では解散。」

 寮の規則と識別番号プレートのレクチャーを受けた後は、自由時間。

 ショッピングモールの行き方も聞いたので、これから生活に必要な物を買いそろえなくてはいけない。

 自分の部屋へ戻り、バックの中身を出している時、いつも側にいるミカがいないからか少しホームシックになったようだ。

 両親に会えないのが寂しい犬のボブにもだ。

 夏とクリスマスは休暇が取れるそうだからそれまでの辛抱。

 (ミカがいるし、まあ良いか。)

 空のバックを背負い、潮風にふかれながら、ミカを迎えに女子寮に向かった。

 ミカの部屋のドアをノックすると、もう着替え終わったミカは廊下に出ようとしていた。

 「遅い!さあ、行こうユウタ」女子寮を出て二人は米軍ベース内のショッピングモール行きシャトルバスに跳び乗った。

 「スクエアの南西、昔は鳴門と呼ばれた渦がグルグル回り、本州が見えたと言うが、今は一面が海、最近この辺ではカジキマグロが沢山取れる。」

 ガイドブックを読みながら、ミカと何を食べようか話している。

 二人が首に下げる認識表は電子マネー端末も兼ねていて、寮の事務所で受け取り、入社時の1000$がチャージされていた。 

 僕がガイドブックから目を上げるとミカは外を見ながら手をブンブン振っていた。

 「おい、おいってば、見ろよ変なドローンがいっぱい歩いてるよ、ほらほら」

 見ると、カラフルなAIUAD通称AIドローンが街中に溢れていた。

 普段向こうで見かけるドローンはグレーや白で、消防署が赤いのを使うぐらいだが、こんな自由な装飾のドローンは始めて見た。

 ショッピングモールの建物内にバスが入り、中央ターミナルで降りると、気が付かなかったが、僕らの乗ったバスにも何体か同上しておりソソクサとブックショップやドーナツショップに消えて行き、中には大きなラージサイズのピザとドリンクを抱えたドローンもいた。

 ビックリしたのは皆、個性的なボディーペイントで昔、日本が誇ったアニメ少女のプリントや、骸骨の物や、人気スターの写真をプリントされたのまでいた。

 しばらく見とれて立っていたが、気が付くと僕たちだけではなかった。

 同じハイクラスの同級生なのだろう、初めて見るカラフルなドローンに、口を空けて見とれている。

 「やあ。君たちもハイクラスだね? 僕はヒロ。よろしく。」

 僕たちに声をかけて来たのは少し小太りのメガネを掛けた子だった。

 「多分迷彩ペインター機能で好きなキャラに視覚変換してるんだね。あれなんかバスターメイトのA・ジョバンニだよポルノスターだね。スレンダーでそそるなー」そう言ってミカに気が付いたのか「ああ・・ごめん女子の前で」そう言って顔を真っ赤にした。

 「やー僕ユウタ、こっちはミカ」するとミカは平手で僕の頭を後ろからハタキ「お姉さんの!!だろ!!」といった。

 「痛いな、 男前のお姉さん・・・ミカ」バシッと又ハタカレタ。

 「すごいよな、こんな事も有りなんだ。」ミカがキョロキョロしていると、ヒロが認識表の表示画面を見ながら、嬉しそうに早口で喋り始めた。

「マニュアルで見たんだけど、ハイクラス入社の4ヶ月目から自分専用のドローンと一緒に暮らすんだって。色々なカスタム方法や実践演習に備えて、自分好みと言うか自分が動かしやすく調整したりするらしい。後、この認識票、通信機能も有って、ほらドローンの改造方法とか、アバターて言うソフトで動作を色々ダウンロード出来るみたいだ。」

 するとミカの目が鋭く光った。

 「ほほぉ、お前詳しいな・・良し家来2号として迎えようヒロ、おめでとう!」

そう言ってミカはヒロの手を取り握手した。

 「え……?」

 ヒロは僕を見て何?と言う顔をしていた。

 (早速ここでもだ……家来百人なんだミカ……おめでとうヒロ、君は今日から誰からも虐められない、最強の兄貴を手に入れたのさ……)

 そう思いながらニコニコ笑ってヒロを見つめた。

 「三人で飯食おうー!!行こう従者諸君」

 そう言うとヒロと肩を組、ミカはハンバーガーショップへ向った。

 (僕はカジキマグロのフィシュアンドチップスが食べたいのに……カジキマグロハンバーガーは有るかな)

 そう思いながら二人を追った。

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