第4話 追撃!ダブル魔法少女なんだよ
「もうちょっとで相手の戦艦のエンジンとかの機関部の型番から製造年月日、形までわかるよ。あと訓練してたみたいな魔法使いの二人組のほうもわかると思う」
私たちは念のため、偽装魔法を幾重にもはりめぐらし、さらに海深くもぐり、表層よりもかなり下の深海帯を通って近づいている。
「…偽装魔法の方も問題ないくらいにずっと張り巡らせていられるし、魔力も充分…けれども、深海帯はさすがにちょっと通りづらい感じがするね。気を抜かないようにしないと」
「うん。まるで宇宙空間に放り出されたような感じだけれど、それとは別に水圧がすごい…耐えれる魔法使いもすごいと思うけれど…」
「…そうだね。相手の戦艦もここまで下りてきていないということは、装甲はそれほど心配するまでもないということなのかな」
「うーん。わからないけれど、調べてみればわかると思うよ。それじゃそろそろポイントに到着!アクセスオン!」
すると、訓練していた二人の魔法使いの反応はすでに戦艦の中にある。それに戦艦の情報や二人の魔法使い、その他、内部のことを色々と調べ蓄積させていく。
「えっと…偵察して情報集めはたくさんしましたけれど、わかりませんでした。てへっ!って言っちゃったら怒られちゃうよね。やっぱり…」
「…うぅん。小さな情報でも大量の情報があれば、それを有機的につなげることによって、それだけで見る人が見ればすぐにわかる。
さすがに、てへっと言っちゃうと別の意味で、コットちゃんは激怒したってことになりかねないと思うけれど…今は情報を集めることに集中」
「あっうん。情報はもう全て集まったんだけれど、私は少し気になることがあるから、一人でもう少し近づいて調べようかと」
「…ダメっ!情報がそこまで集まったら戻ろう。それにその話し方は、死亡フラグに見えるからやめた方がいいと思う」
「う…そうなのかもだけれど、訓練していた二人の魔法使いの方がちんぷんかんぷんで、もう少し調べたいかなーって」
「…パートナー同士互いに情報を出し合って協力し合ったりして、それで成立していくものだと思う。今回の件はこれ以上先には進まず。コットちゃんたちの指示を待とう?」
「パートナー…うん!わかった!…それに…パートナー…う、うれしいよっ!そう思っててくれてるなんて!うん。さっそく戻って情報を調査してもらって、結果を聞いて指示を待とう!」
「…あっさりうなずいてくれるのはいいのだけれど、反論もまったくなくって、なんだか少し複雑な気分…」
「うん。けれども今回のことはカノンちゃんの言うことが正しいと思うし、「…それだったら二人で行く」って言われるよりも、ずっと良かったし。それじゃ戻ろう!」
そして、私たちは来た道を戻るかのように反転しみんなのいるところへと戻っていく。
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「やはりこれは…困ったことになったな…この戦艦は以前、第一宇宙艦隊旗艦をつとめたこともあるものだ。
しかし、老朽化が進み、すでに廃艦が決定済みであり、すでに破壊が行われているという記録も残っている」
持って帰ってきた情報は、あまりわからなかったし、そのまま丸投げするかのように渡してしまったけれど、カノンちゃんの言ってたように見る人が見たらわかるっぽい。
「えーっとコットちゃん?戦艦の方はだいたいわかったんだけれど、訓練してたみたいな二人の方は、さっぱりわからなかったんだけれど…」
「それも解析済みだ。間違いなく奪われた最新型試作魔法使い化結晶を使ったイレイザーとガードだ。受け取ったデータからそれが判明した」
「…なるほど。それならば、あの場所からその二人の情報が得られなかったのは納得です」
「それに問題は、老朽艦とはいえ旗艦のようなものを手に入れられるものたちが、最新型試作魔法使い化結晶を狙ったことになる」
「そんなに大がかりな組織が動いているなんて…もしかして、旗艦は破壊されたっていうんじゃなくって、第一艦隊あたりが奪って、そしてそれを隠してるとかは…?」
「あんまりやばげでめったなことを言うんじゃない。第一宇宙艦隊、第一師団は首都防衛のかなめの精鋭ぞろい。むしろ、海賊あたりに奪われて、失態を隠しているとかはありそうだが…」
「…確かに…でも、そこまでできる海賊ならば、すでに首都で色々な計画がなされている可能性もありえるのでは…」
「あれ?にしても私が持って帰ってきた情報が、何かの間違えだって可能性はないのかな?」
「…それはないと思われるけれども…見たところ完全に戦艦内部の構造、見取り図まで色々完璧に仕上がっていて、逆に疑う余地がなさすぎて困るのだから」
「とにかく、その戦艦を停船させ戦艦および人員から情報を入手すれば、色々な事がわかるだろう。最悪、戦艦の機関部を破壊、停船させる。
問題は、旗艦を勤められるような戦艦の機関部を貫けるような兵器を持ってきていないというところなのだが…ヤン大尉、何か他に持ってきているものはないだろうか?」
私は、以前から気になっていたことを、こっそりとカノンちゃんにたずねる。
「ねぇ。まえからちょっと思っていたんだけれど、コットちゃんって、もしかしなくてもかなり階級が上の人じゃないのかな?って」
「…うん。それにしては何も私たちに注意したりもしないし、どういう立場の黒猫さんなんだろう」
私たちがこっそりとコットちゃんってどんな人?と、こそこそと話していると、ヤンお兄さんがとんでもないことを言い出した。
「はっ。それならば心当たりがあります。最初の山へのウォーミングアップの際にあすか准尉を自動迎撃した対空砲があります!」
「えっそんな兵器で平気に狙い撃ってたの!?こわっ!命があって良かったよ…」
そんな私のつぶやきとは別にヤンお兄さんは話を続けていく。
「ですが、近場ではありますが旗艦を貫けるような威力はありませんので、一機を改造し、以前話しておられました物質のエネルギー変換を用いそのエネルギーでもってすれば必ず貫けます。
その際ですが、カノン准尉に砲身を強化させ、あすか准尉にエネルギーを砲身に注ぎ込ませ蓄積することができれば可能となります。
エネルギー化する物資についてですが、幸い海の近くでありますので、近場の岩石を用い、それを変換および蓄積することにより敵の旗艦機関部破壊可能クラスとなります。
物質のエネルギー変換は理論的にも現在すでにできあがっておりますので、発射も命中率も問題ありません。」
「よし。その案でいこう。他に使えるものがないのも確かなのだし…しかし、すぐに準備できるものなのか気になるのだが」
「はい。今までのデータを元に二人にはサービスパックVol.1を使用してもらいます。安全性も確認しておりますので大丈夫です。
…二人ともこれを使ってくれ。ネーミングセンスはいまいちだと私も思うが、「サービスパックVol.1」ということになっている…」
「あっと、はい。あすか、サービスパックVol.1インストールセットアップ!アシストリスタート!」「…カノン、サービスパックVol.1インストールセットアップ!アタックリスタート!」
「おぉーなんだか色々な機能がいっぱい追加されていて、覚えきれないって訳じゃないけれど、使いこなすには時間がかかるかも」
「…確かに…私の方にも色々な機能がずっしりで使い回しには注意が必要なものも割とあるけれど、戦力大幅アップだね」
「よし、二人の方は大丈夫みたいだな。それでは砲撃の準備に入ってくれ。念のために改造後、他のものは対空砲の近くには近寄らないように。
それから、あすかは敵旗艦がこの空域を離脱しそうになったら報告にすぐにきてくれ。あとその他の根回しなどは任せておいてくれ」
「了解!」「…了解」
そして、私たちは対空砲の改造を色々とし威力を上げるためのことを行っていくのでした。
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「!アクセスオン!…やっぱり!あの付近からあの旗艦が浮上しようとしている。もう空に浮かび上がりそう。コットちゃんに報告に行ってくるね」
「…了解。ここまできたら、こちらのほうで最終調整をしておくから大丈夫。報告の方をお願い」
私はすぐにコットちゃんにところに向かうとすぐに報告をおこなう。
「報告です!アシストのアクセス魔法によると、もうすぐあの旗艦が浮上し、空に浮かび上がりそうな状態です!」
「了解。すぐに砲撃ができるように準備のほうを済ませてくれ。こちらはさっそく停船命令をだす」
「はい。ただちに持ち場に戻り最終調整を行います!」
私が持ち場に戻るともうみんな最終調整が終わったのか待避して、待ち受けているのはカノンちゃんだけだった。
「…おかえり。調整の方はもう完全に終わっているよ。あとは…撃たなくて済めばいいのだけれど、そうはいかないだろうね」
「もう終わっちゃったんだ。うん。できれば撃ちたくはないんだけれどね。どこにどんな情報が入っているのかわからないことだし…」
と…最後に一通りの操作の最終確認を行っていると、コットちゃんが魔法で通信を送っているのが聞き取れた。
「停船せよ!しからずんば攻撃す!繰り返す!停船せよ!しからずんば攻撃す!」
私たちはその場でなりゆきを見守っていましたが…
「!最大戦速でこの場から逃げようとしている…」
「…もしかしたら、この場に止まって籠城のようなことをやらかすかもしれないと思っていたけれど、そうならなくて少しほっとしたような」
「あすか、カノン、すぐに敵の旗艦機関部に対して砲撃を加えてくれ。これ以上はなれると海を貫いての攻撃となり射程距離からはなれてしまう!」
「…了解!カノン、ストレングゼン、イグニッション、ファイア!」
「了解!準備完了!あすか、ウィズダムレボリューション、イグニッション、ファイア!」
そのエネルギーは海上上面を食い尽くすのでは飽き足らず、戦艦機関部に食らいつき食い破りなおも止まらず宇宙へと貫いていく。
「機関部命中!残りエネルギー変換可能量30%、次弾チャージ後撃ちます!…次弾完全ではありませんがチャージ完了、ウィズダムレボリューション、イグニッション、ファイア!」
しかし、今度の砲撃は大型の魔法障壁により止められる。
「!あれがガードの魔法能力!?12層もの強力な魔法障壁が時間差螺旋波状展開を繰り返して、攻撃をそらすことすら考えず、力押しで砲撃を受け止めるなんて…」
「…あすか!イレイザーと思われる魔法が向かってくる気配がある。この場をすぐにはなれるよ!」
「あっ!了解!目標はこの対空砲のようだから、すぐにここからはなれよう!」
私たちは周りに魔法攻撃がここにくることを伝えまわりながらこの場をはなれた。
すると、私たちの放った攻撃とは違い収束され、その空間のみを削り取るかのような光線がその場に突き刺さり、あたりを消し去った。
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最初に受けた強力な砲撃とは違い、ニ射目は手加減されていることのわかるような砲撃だった…。このことは報告せずとも、私の防御魔法能力と砲撃の衝突具合ですぐにわかる…先に報告をすませよう…。
「ドクター。機関部に重大な破損が出ています。2射目は防ぎましたが墜落はまぬがれないものと思われます…」
なぜあのような場所にあのように強力な対空兵器が置かれていたのかは、わからないので現状のみを報告する…。
「ドクター!敵対空兵器の破壊は完全に実行できたものと思われます。追撃もありません!」
「あぁ二人のおかげでなんとかなりそうだ。しかし、それにしてもなぜ対空兵器がおかれていたのか…もしやこちらの情報が漏れていたのか?
いや、しかし、それにしては数が少なすぎるし、攻撃を早めに行っておけば我々の確保も充分に可能だったはずだ…
まぁ考えるのは後だ。今はマニュアル通り、総員脱出用シャトルで脱出せよ。急きょ脱出用のデータ消去プログラムに自動で任せるように。
ある程度の情報のサルベージはやむを得ないが、重要機密は必ず消去確認を行うように。なに、まだ時間は少しばかりある!粛々と行動にあたるように!」
ドクターのはっきりした言葉に我を取り戻したのか総員が以前作られたマニュアル通り行動を行い脱出していく。私たちは最初のシャトルに載せられ、すぐにこの空域を離脱させられる…。
てっきり、追撃をふせぐために私はしんがりを勤めるのかと思ったけれども、それだと捕まってしまう可能性が大きくなるためだろうか…
そして、私たちは一時の寝床としていた戦艦をあとにこの空域を完全に離脱する…。