第3話 山や海は危険がいっぱいなんだもん
「わーい。リアル海だー!パパとママに聞いてみたところ、もしかしなくても、リアル海なんて確か初だったかもって!」
今日は、色々な手続きなど、てんてこ舞いな状態をすませてなのです。海へ遊びにきたわけじゃなくって、きちんとした訓練だったりもしますが、自由時間もきちんとあるので遊べるのです。
「…まだ、その季節じゃないのにすごく元気だね。気持ちはわかるけれど」
「えっ!?だって海でざぶざぶするのに魔法使い化は必須でしょ?魔法使い化したら海の寒さとかなんてマジックオーラでへっちゃらだし!」
「…たしかに魔法使いの特技の内に海中戦、地中戦なんかもあったね」
「うん。でもそれはいいんだけれども、最近は色々な手続き続きで、このはちゃんやのどかちゃんとせっかく一緒のクラスになれたのに、初日から授業にもでれず、
色々な検査や手続きが終わったあとは、すぐ今の特別講義中の直行便に出てるくらいだし、色々電話で話してるけど、電話で話せることでもないし、色々と不満がたまってるかも…」
「…大丈夫、ゆっくりとでもきちんと話せばきっとわかってくれるよ。あの時、色々あったのは薄々かもしれないけれど気づいているだろうし」
と二人で海についてや最近のことについてしゃべっていると、そこにコットちゃんが割って話しかけてきた。
「もう今回の特別講義は始まるのだけれども…礼儀作法とか儀式作法とかは高校からの必須科目だったっけ。まぁ今すぐにでも身につけて欲しいところだけれど…」
「あの、それはいいんだけれどコットちゃん、なんで黒猫のままなの?」
「この方が自然体で動きがしやすいからさ。君たちの特別講義合宿に丁度いいことだし。まぁそれはおいておくとして、先に色々説明しておかないといけないことがある。
様々な箇所に確認したところ、この前の襲撃で最新型試作魔法使い化結晶のうち6個中2個、ガードとイレイザーが奪われ、残り2個、クリエイトが大破、ガンナーは小破。
ガンナーは普通のいわゆる自動書記物質形成機能でアプリケーションの拡大実行版に近いようだ。
計画的にはイレイザーが広範囲攻撃をし、散ったところをアタックが各個撃破、ガードが仲間を守りつつ、アシストで相手の情報を分析、
クリエイトでその魔力、エネルギーや物質を作り出し供給、ガンナーでその場で要塞砲などを作り上げ殲滅作戦を行う予定のものだったようだ。まぁ理論上は。
クリエイトは理論上は作成に成功したが、実際に使うとなると魔力切れが続発して、あまり便利というものでもないようだ。
つまり、強力なブラスターを撃てるが、一発撃つとすぐにエネルギーカプセルが空っぽになる感じだな。それでもすさまじい技術なのだが。
…エネルギーカプセルが空っぽになったらどうする?」
と、何か私を試すような視線を送ってくる。
「!わかった。私はつまり、エネルギーカプセルが切れたら、圧縮実弾をアシストの魔法でエネルギーに変換してエネルギーカプセルにチャージすればいいんだね!」
「…何を聞いていたのか、そこはかとなく不安になる解答だけれども、それはある意味正しく、ある意味間違っていると思う。
確かにブラスターにこだわるのならば、圧縮実弾をアシストの魔法でエネルギーに変えてもいい。しかし、エネルギーカプセルが切れたら、そのまま圧縮実弾を使えばいいのだし、
圧縮実弾を変換して魔力を減らすことになると、射撃に使える魔力が減り効率が悪いと思う。…あまり思いつきで行動しないようにと言いたいところなんだけれど…
圧縮された実弾一発でどのくらいの数のエネルギーカプセルを満タンにできる?それによって効率が変わってくるかもしれないからな」
「えっ?えーっとアシストで、少なくとも内部の情報を見るためアクセス魔法で魔法1つ目、エネルギーに変換で2つ目、圧縮されているエネルギーを入る大きさにリサイズで3つ目、
チャージ魔法で4つ目…考えてみたらもっと必要になってくるかもしれない…」
「…それで魔力を使い果たしたら戦う気力までなくなってしまうぞ。いっそのこと魔法でエネルギー変換したら、そのまま撃ってしまった方がマシだったってことになりかねない」
「うーん。なるほど、その手があったかー…」
「練習するのはいいが、危ないし、何より物質が消滅することになるんだからな。最悪の場合は、…そしてこの宙域に、あすかただ一人だけ浮かんでいただけだった。という事にもなる…」
「もう。あんまり怖いこと言わないでよ…」
「その怖いことをしようとしているのは君なんだよ。注意するように。作成したとある博士チームの作っていたクリエイトの魔法使い化結晶は大破したままなんだから」
「う…わかったよ。注意しながら練習します…」
「わかっているのかいないのか、これまた微妙な返答の仕方だな…まぁ、この件については少しずつ行っていけばそう問題にもならないだろう。
それから、二人は前の襲撃事件の功労者として、また最新型試作魔法使い化結晶のテストパイロットとして二人そろって准尉に昇進となっている」
「あれ?警察官の階級に准尉ってなかったと思ってたけれど…ってことはカノンちゃんも私たちの学校に来たりすることになるのかな?」
「…うん。お父さんもその方がいいだろうって、なんだか乗り気でね。もう、昔みたいに子供じゃないんだけれどもね。
あとは、あすかと同じクラスに編入させてもらえるようになっているみたい。ってあんまり驚かないし、何だか知ってたみたいだね」
「えぇっと!?そうなるかもって話を聞いたこともあるってくらいだよ!?
でも、そっか。なんだかんだ言っても嬉しそうだね。良かったよ。カノンちゃんがお父さんに心配してもらって嬉しそうで」
「…べ、別にいつも通りに過ごしているだけだし、こんなの普通だよ!」
「わぁい。ツンデレ発言頂いちゃいましたー!」
「…うぅっ、しまった…」
「そろそろいいかな?…話を先に進めるが、まぁ士官大学校を卒業したら少尉としてから勤めてもらうのだし、その前の任官になると思っておいてくれ。
さてと、まずは特別講義のウォーミングアップとして、最初に山のてっぺんにあるヒノキの木に二人のうち早く到着した方を勝ちとする」
「えっヒノキの木なんて見分けがつかないよ」
との私の言葉にカノンちゃんも同意なのか、うんうんとうなずいてくれる。
「だと思ってた。だが、昔からある伝統的なしめ縄がされている。…あとはわかるな?」
「?あとはわかるなってどういうこと?そこから何かを考えるの?」
「…つまり、大切にされているものだから傷をつけたりしないようにってことだと思うよ」
「うっ最悪、木に体当たりすればいいかとか考えていたのに…」
「…練習試合みたいなものなんだし、あまり無理なことはしないでね」
「まぁ今までの発言も含めて反省会は後にする。それじゃ、ボクや他にも妨害役として入るから、二人とも心して進むように。それではスタート!」
「了解!」「…了解!」
「とりあえず、空を飛んで一直線でー」
ズガーン!ベシャ!
「まったく、妨害すると言っているそばからすぐにこれだ…まさか、やらないだろうなと思っていたボクが甘く見ていた。いかにも撃ち落としてくださいと言わんばかりだったじゃないか。
君のポジションは特に冷静さを求められたりするんだが…気にかけているように」
「い、痛みとショックで、今まで、声も動きもできなかったよ…もう、ショックで飛べなくなったりしたらどうするの?」
「その時のために精神安定治療装置もしっかり持ってきているから心配いらないよ。それよりもそろそろ先に進まないと追いつきさえできないよ?」
「!こ、これが孔明の罠っ!会話でさらに私の時間を減らすという!普段でさえ先を越されているんだから少しでも追いつかないと!」
・
・
・
「まず一本目のウォーミングアップはカノンの勝ちと。次はここから海中に旗のある部屋に先に辿り着いた方が勝ちとする」
「う…今度は海中…これも普通に直線距離で行ったら、今度は岸に打ち上げられそう…カノンちゃん真面目だし勝てる気がしない…」
「…ウォーミングアップとは言っても、手を抜いたらためにならないからね」
「そうだ。勝てないまでも、引き分けになんとか持ち込むというのも手なんだぞ。それでは、次、スタート!」
「了解!」「…了解!」
・
・
・
「今回はなんとか引き分けに持ち込めたけど、空中機雷とか水中機雷とか地中機雷とか張り切りすぎだよ。もう…」
「…うん。偽装とかもかなりうまくて発見が遅れたりして、もうちょっとで負けるところだった」
「あすかはアクセス魔法ですぐにわかりそうなものだが」
「うん。アクセス魔法使ったよ!私たちの他にも特別講義で訓練してる人たちがいるみたいだし、負けられないよね!」
「ちょっと待て、それはいったい何の話だ?」
「えっ?ここから100kmよりは手前の沖に、そんなには離れていないところで同じように水中で訓練している二人組がいたよ?その近くには連邦軍製の戦艦も待機していたし」
「それはおかしい…今回のことは何が発生するかわからないから、ここまで来ているうえ、この付近には入らないように指示がだされているんだ。もっと詳しいことはわからないか?」
「うん。私の今の熟練度だと…じゃもっと近くに寄ってからアクセス魔法を使ってくるね」
「…なにかあったらいけないから、私もついていきます。何かあった時のために二人行動は基本ですし」
「あぁ頼む。何かイヤな予感がする。こちらでも何か変な所がないか、他にも何かわからないか色々と調べておく。ウォーミングアップは一時これを仮想敵とし索敵任務とする」
「了解!索敵任務にあたります!」「…了解!索敵任務にあたります」
そうして、できるだけ多くの情報が得られる先ほどの反応があった場所に向かう。
_/_/_/_/_/
「ほう。うむ、あの最新型試作魔法使い化結晶を使いこなすか…確かにこれは腕がなるわい」
「あの…ミツルギ博士、今、先ほどの件といい、他にも色々と大丈夫なのでしょうか。念のため、離れたところからバックアップに数人つけてはおりますが…」
「まぁあの二人ならば大丈夫だろう。それになに、私もいつかは何かをしなくてはならないのだからな。それならばいっそのこと、この子たち二人の追加パックを作成するのもいいと思ってな」
「はい。そういってもらえると安心できます。確かにあの最新型試作魔法使い化結晶はすばらしいのですが、使用するのは人ですので…」
「まぁ確かに人が用いるものだから完全はないのだし、それにあんなにもまだ幼いのだからな。それに先ほど見かけたという魔法使いが、奪われた魔法使い化結晶を使った者たちとなると、
解析が大変だろうが、アクセス魔法を使うことにより情報がそろうだろう。その暗号などを解いたりするのは私たちの方ですぐにわかるだろう。
しかし、銀河連邦も違った意味で色々と危ないのだな。誰もが気軽に最新型の魔法使い化結晶を使える状態。危うくもあるがうらやましくもある。
銀河帝国では貴族に逆らうとすぐにでも命がなくなったりするものだし、それよりはまだましというものか。
それに帝国では平民が力を持つことに強い抵抗があり、魔法は貴族の特権とすら思われているくらいなのだよ。
貴族が使っている魔法使い化結晶に比べ、前線に出る平民の兵士でも2,3世代も遅れているようなものばかり使っているな。
そして、戦場へと向かうのは貴族ではなく平民がほとんどでな、昔みたいに連邦と帝国が互いに戦艦を体当たりさせ、船員を中へと送り込む戦争となるとほぼ負けはないだろうな」
「はい。今回の最新型試作魔法使い化結晶の作成成功の件で、平民たちでまとめられたため色々お立場が危なかったことは聞き及んでおります」
「まぁ。今はあの子たちが無事に帰ってこれることを祈ろう」