第2話 魔法少女休息命令なんだよ
「ふはっいい天気ー」
昨日はあのあと、救助のお手伝いをしたり、がれきを加工して周りの修復材の生成のお手伝いをしたりと大変でした。
今は検査のために病院にいて待合時間まで退屈だったから、屋上に出てみることにしました。
そして、屋上にでてみるとそこには昨日見た頼れる背中でした。
「あっカノンちゃん昨日はお疲れ様でした。助けてくれてありがとう」
「…お疲れ様でした。こちらこそ助けてもらえたから。あ、でも子猫のコットちゃんがだいぶお怒りみたいだったよ。最後の撤退が偽装だったりしたらどうするつもりだったんだって。
あの後、すぐ追撃されていたら危なかったって。私が砲撃した魔力量は、まぁ妥当といえるものだったけれど、私が全力全開で砲撃していたら、
最悪の場合、三人とも捕獲されていたかもしれないって。あと、「これからはボクが実地訓練を色々と組む」とかって」
「あーうー。それじゃ私たちのことはとりあえず、お互いにおあいこってことでお願いします…でも今回のことで私たちが色々とやりすぎたんじゃないかって話もあったのは知ってるよ。
でも研究所のヤンお兄さんが、「記録に残っているとおり避難所に向かうように指示はしましたが、敵に遭遇した場合、応戦するなとの指示は出しておりません。学生とはいえ軍人です」だってさ」
「…確かにそうなのだけれど、そんなこと言っちゃったら立場が悪くなるんじゃないの?」
「まぁ結果オーライな状態だったけれど、ヤンお兄さんってあまり出世に興味ない人で将来の夢は歴史編纂課だってさ。研究室の最有力株って言われているのにね。
それでも今回のことでちょっと思うところがあったらしくって、「では、避難箇所の増設のための費用等を申告してもよろしいでしょうか?」だってさ。
そうしたら、渋い顔で「前向きに善処します」って言われたんだって」
「…ふふ。そういうことになってたんだ。実質、避難箇所の増設はしないと言ってるようなものだと思うけれどね」
「うん。そうだね。でも今回のことで問題点が浮かび上がったことだし、そのうちには改善されるかもね」
「…それよりも、大丈夫だった?初めて人の命のともしびを消すということを。今も空元気のようだし」
「あはは。やっぱり見る人が見ると分かっちゃうのかな。体感シミュレーションとかで痛みや血の匂いとかも再現された実践のような訓練のおかげなのかな。
そういったところが麻痺しちゃったみたいに、だいたい全部終わった時にちょっとした寂寥感を感じたくらいだったよ。
逆に私ってもしかしたら冷血人間なのかなって思ったのがショックだったかも。みんなも、もちろんカノンちゃんも乗り越えてきたんだよね」
「…いいえ違う。士官学校でみんな小さな頃からシミュレーション等を行う事によって心理的・肉体的な負担を激減させるカリキュラムが作られているから…
…でも初めてのその感情は大切にした方がいいと思う」
「そうなんだ。ありがとう…今までやってきたことに意味って色々とあったんだね。教えてもらうまで気づかなかったよ。
って、そうだった。このあと検査があるんだった。病室に戻るね」
「…うん。またね。…でも、もう軍属なのだし、機密の情報じゃなかったのかな、あれは…」
…あすかを見送ったあとに視線に気づく、
…視線をおうと、そこには憧れているお父さんの姿があった。先ほどの会話も少しは聞かれているだろう。
出てくるタイミングをはかっていた様子がうかがえる。
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私がカノンちゃんと色々と話したそのあとは、何の機械なのか良く分からないものをとおされたり、バイオリズムを測定されたりとか訳のわからない測定のオンパレードでした。
検査を受けた後、屋上に戻るとカノンちゃんが見慣れないおじさんと仲良さそうに話していて、検査に向かうためなのか、カノンちゃんが別れて出ていくところだった。
なんとなく笑った時の優しそうな感じがカノンちゃんに似ていたから話しかけてみることにした。
「あの。カノンちゃんのご親戚の方ですか?」
「あぁ、君があすかちゃんかな。うん。あの子の父親にあたるよ。それに娘から色々とよく聞いているよ。娘は警察中学校2年に通っていて君と同学年なんだよ」
「はい。私と同い年なのにあんなにしっかりとしていてカッコいいです!」
「そうか。私はこれでも警察署の警部を勤めていてね。こちらから挨拶に伺う時間があまりなくってな。私はよくよく運がついているようだ。
さてとせっかく会ったのだから、ちょっと難しい話とすごく難しい話のどちらがいいかな?」
「なんで二択のどちらもが難しい話のことなのか気になりますが、ちょっと難しい話の方でお願いします」
「そうだな。すごく難しい話はあの子ともっと仲良くなって、時期が来た時にはあの子と話してやってくれて欲しい。
でだ、ちょっと難しい話というのは…世間というものは常に正義というものを求めているということだ」
「?それって普通のことなんじゃないですか?」
「そう。今回のことに関してもなのだがな。これについては求めているものがほぼ同じなのでおいておくとしよう。
しかし、あの子の求めている正義は、この連邦が求めている正義とも少し…だがかなり違いがある。あの子が私や妻に憧れて警察中学校に通っているのは知っている。
…そうだな、たとえばの話、証拠、条件、物証等全てがそろっていて完全に犯罪として黒な人物がいて、場所も突き止め、そこに何十人も警察官を引き連れ、その一人を逮捕しにいったとする。
しかし、そこには仲のいい親子の姿があった。親の方は全てを悟ったかのように全てを受け入れ、また子供の方も同じように全てを悟ったかのように全てを受け入れた。
そしてその子供はただ成り行きを、ただじっと見ているだけだった。
その場には、ある少女も居合わせ、一部始終を見、処理を済ませ、何事もなかったかのようにまた日々を送っていく…
その少女は、ただ仲のいい夫婦二人の一人娘として平和にすごしていきたいと。そう思っていることがわかってな。気づかれていないと思っているようだが、あの子もまだまだなんだよ」
「…そんなヘビーなことがあったりしたんですか…って、ちょっと難しい話だけじゃなくって、かなり難しい話も入ってますよね!?」
「そうなってしまったなすまない。今現在、警察はいわば人対人…軍の宇宙での活動もそれに変わりはないが、今の実際の戦闘はほぼ完全に戦艦の艦隊同士による消耗戦だ。
そのあたりは、海賊討伐辺りが顕著だな。相手が艦隊を10隻率いていれば、1千隻を動員し、100隻率いていれば1万隻をも実際に動員する。起こるのは完全な殲滅戦だ。
殲滅戦というのは誤解があるかもしれないが、無力化弾頭を1万隻の艦隊が一斉に100隻の艦隊に打ち込むのだからな。降参なども認められていない。
と話がずれてしまったが、娘には今の平和な軍の方が向いているかもしれないと思ってな。今回のことを機に君と同じクラスへと編入させようと思っている。早ければ早いほどいい」
「でも私ってばカノンちゃんの何かを変えれるほどの何かを持っているっていうわけでもないですしー…」
「ははは。かまわないさ。たとえ小さなアリの穴だと言ってもダムすらもこわすこともあるのだからね。そうあの子の正義感に関することが少しでもこんにゃくくらいに柔らかくなるようにね」
「えーっと、こんにゃくは実はふにゃふにゃしているように見せかけて、実は硬くて芯があると思うのですけれど…」
「そうだね。まぁ今で言えば冷凍こんにゃくで、いつバキっと折れてしまうかわからない状態なのだから、徐々にでもいいから解凍して芯の残った柔らかさになって欲しいってところかな」
「なんだかものすごく難しいことをお願いされた気がしますが…はいっお友だちですし、私のできるかぎりお手伝いします!」
「そうか。ありがとう。でもそんなに気を張らなくていいんだよ。今まで通りあの子に接してくれるだけでいいのだから」
と、カノンちゃんのお父さんはカノンちゃんのお父さんらしくびしっと格好よく敬礼を私にしてくれて、さっそうとこの場をさっていきました。
「あっカノンちゃんのお父さんの名前すら聞いてなかった…今度カノンちゃんに聞いておこっと。あっその時にはうちのパパとママの名前交換ってところかな?」
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これが今回奪ってきたという帝国軍製最新型試作魔法使い化結晶なのか…
なんのために奪ってきたのだろうと少し感慨深く思考の海へと沈んでいるともう一人がこの結晶を使い始めた…
「ティオ、イレイザーインストールセットアップ!イレイザーオン!」
、、OK!イレイザーオン!システム、エリミネーションブレード、オープン!
私もこのまま何もしないでいるというわけにはいかないだろう…
「アテナ、ガードインストールセットアップ!ガードオン!」
、、OK!ガードオン!システム、イージスブレード、オープン!
とても広い部屋での実験的な試験が行われる。参加して見えるのは私、ティオ、ドクターの三人。他の人たちは別室で色々テスト状況を見ているのだろう。
「父さん、私も魔法使い化結晶を使う必要が出てきたんだね…」
「ティオ、ここではドクターと呼ぶように。それはともかくとして…
うん。その魔法使い化結晶は君たちにはピッタリなもののようだったね。それさえあれば今まで通り暮らしていくことも可能だけれども、色々と手伝ってもらうよ」
少し芝居がかった感じでドクターは独特の立ち回りで言い放つ。
「…はっはい。ドクター。ドクターがそう望むのなら…」
「私は母さんが治るというその日まで手伝う…」
「ああ。君にそこまでしてくれるなんて、もちろん歓迎さ!」
ティオはともかく…約束通り私はドクターに助けてもらえた。どんな裏があったとしても…。それならば、母さんもきっと助けてくれると思う。今はそれにかけるしかない…
「とりあえず、性能の確認をしておこうか…ティオが攻撃をし、アテナが受け止める…それだけでいいのだから!」
身振りに手振りを加えながら、扇動するかのようにふるまう…。
そしておそらく…というよりも確実に、ティオのイレイザーの攻撃魔法能力と私のガードの防御魔法能力の性能を分析したりするのだろう…。
「わかりました…。ティオ、長い間世話になっていたことだし気にする必要はないわ…。こんなに自由に動けるようになったのだし…」
私は車いすから身体を前にだし、立ち上がるとストレッチを始める。
「で、でも、アテナ、直撃からとはいわないまでも、魔力を使うんだよ?それがいきなりなんて、あまりにも無理じゃない?」
「でも、今、すぐにでもやらなければならないことなの…。早いところ攻撃して、防御して、それで終わらせましょう…」
私はそういうと、すぐに大きく距離を置き攻撃に備える。
「うん。わかったよアテナ。ミステリアスディサピアレンス、イグニッション、ファイア!」
「…インビンシビリティシールド、イグニッション、ファイア!」
砲撃は思ったよりも少ない時間で終わった…。ティオが気を使って短くしてくれたのだろう…。
時間はこれから長くしていってもかまわないだろうし、今はどのくらいの覚悟があるのかを試されているのだろう…。