最初の現象
「それ」がおきたのはちょうど2時間目と3時間目の間の休み時間のことだった。
俺は友達の隆と祐樹とふざけてプロレスごっこをやっていた。
実況の隆が言った。
「さあ、祐樹選手が***(俺の名前だ)にドロップキィィィック!!
しかし***防いだ! ***はカウンターを狙っていたっ! 祐樹選手まんまと引っかかってしまいました!」
ふっと俺は不敵に笑い、近くの棚を使って強烈な飛び蹴りを放った。
「でたぁぁぁぁぁっ! ***選手必殺、流星落とし!! 祐樹選手、絶対ぜつめ・・・・・」
そのとき、突然かちっと音がして、ノイズが消えるかのように隆の声が止まった。
俺は、どさっと床に落ちる。
「いってぇ・・・・・・ おい隆、調子狂うだろ、途中で止めんなよぉ・・・」
しかし、隆から返答はなかった。
・・・・明らかに何かがおかしい。
俺は耳をすませた。何も聞こえない。
隆も祐樹も、微動だにしない。
おふざけ? ・・・・・にしてはやりすぎだ。
二人は、いや学校全体はまったく動いていなかった。
時計の針さえ、さっきから一ミリも動かない。
とりあえず、叫んでみる。
「わぁぁぁぁ~~~っ!」
・・・・どこからも返答はない。
「誰か聞こえませんかぁぁぁぁぁっ!!」
やはり、返答はない。
どうやら、ここで動いているのは俺だけのようだ。
「・・・・・何なんだよ・・・・・これ・・・・・・」
俺が今の状況を理解できずにボーっとしていると、再びかちっという音が聞こえた。
すべてが、元通りに動き出した。
「・・・・い!! お、おや!? いったい何が起こったのでしょうか! あの距離で***、必殺のキックをはずしてしまった!! 祐樹選手にチャンス到来かっ!!?」
なおもナレーターを続ける隆の声に重なるようにして、授業開始を告げるチャイムが教室に鳴り響いた。
「一時休憩です!」
隆は俺たちにそういうと、ダッシュで自分の席へ向かった。
俺と祐樹も、後に続いた。
ただ俺はその日一日、授業がまったく耳に入らなかった。
さっきの現象が気になっていたからだ。
夢・・・・ではない。しかし、だとするといったいなんだったのだろうか、あれは。
家に帰って、布団にもぐりこんでもこの大きな問題は、俺の頭の中でぐるぐる回り続けていた。
ほんと、なんなんだよ・・・・・・