魔女、誰が為に在るのか。
お粗末な設定が盛りだくさんです。
夢もロマンもへったくれもない、ボロボロな家に――夢物語を語る人物がいる。
昔々の、お話だ。
「あの人はね、私を守ってくれたんだ」
そう、嬉しそうに語る祖母に曖昧な笑顔を返す。きっと続くのは何時もの台詞であろうから。「何時か貴女にも、私と同じように魔女騎士が現れる」――と。
***
この地とは別の地で「魔女」は迫害の対象であった。人とは些細な違いを気にして、少数派を侮蔑する。
「魔女」は何も悪の魔法使いとか、不老不死とかそんな大それた存在ではない。確かに精霊に愛され過ぎている為、自然の力も彼らを介して借りる事は出来た。しかし、精霊と接触出来る以外は――薬の調合に優れた、ただの一般人だったのである。
そんな「魔女」を恐れ、魔女狩りなるものが行われる。これに精霊は怒り狂ったが、彼らは個人の感情で人間に直接干渉は出来なかった。その為、神に願った。
『我々の代わりに魔女を守れる存在を!』
願いが通った結果、神がそれぞれの魔女に合った人間へ神託し、超!強い「騎士」へと変化させた「絶対に魔女を守る」存在こそが――「魔女騎士」。
なんつーか、魔女狩り行ってる人間に神託下ったらどうすんのよって話だ、が。ところがどっこい、元から魔女に対して変な感情を抱いていない人間に神託は行くらしい。
魔女は女しかいないが、騎士は男女どちらも有り得るらしい。現に、祖母の魔女騎士は女性だ。…二代目の騎士だが。
あ、「魔女」の血に連なる者である私も、魔女。だからこそ何時か現れる、と言われるのだ。
゛私を理解し、盾となって守る魔女騎士゛が。
今の時代は、魔女狩りの悲劇も忘れ去られたような…平和な時代である。何十年か前にこの地の国王が病に臥せった際、特効薬を勇敢な魔女が届けた事から平和が始まる。国王は魔女の行いに感動し、保護と友好を示す。周りの国は反対したみたいだし、精神操作の薬を盛られたとか噂になったらしいが。
まあ、それでも今の今まで平和な暮らしを与えられている。これも勇敢な魔女グレタ――祖母のお陰である。
そんな偉大なる魔女の孫だから、今まで私に魔女騎士は現れなかった。祖母がいれば私は守られたからだ。
だが、祖母もいよいよ年となって自分一人でも立たねばならない時が近い。何時までも祖母の名前に胡座をかくのもね…。
立ち上がった私に、無言で行き先を尋ねる祖母の瞳がかち合った。
「薬草探してくるよ」
鎮痛作用のある薬草が尽きていた、と思ったから。心配して自分の魔女騎士を派遣しようとする祖母をなんとか説得し、家の付近の植物を探る。
しかし、目的の物は見当たらない為に少しだけ家から離れる。その判断が間違いだと、気づいたのは――。
「居たぞ!魔女だ!」
不穏な台詞と共に、意識を強制的に失わされてからだった。
展開は早いです(予定)