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【夢日記】雪国

作者: BLACKBAG
掲載日:2026/04/21

 春のある日、いつもの学校帰り。もう何年も乗り慣れた電車だ。いちいち現在の通過駅を確認する必要もなく、スマホでネット小説を読んでいた。


 いつもの駅で降りた。先へ進む電車を見送り、階段を上る。改札をくぐった瞬間に、明らかにいつもと違う雰囲気に気づいた。


 降りそびれた経験はあったが、降りる駅を間違えることなどあるわけがない。しかし路線図を見あげると、知らない地名で埋め尽くされている。


 外に出てみると、そこには雪が降り積もっていた。豪雪ではないが、くるぶし程度までには積もっている。ここが日本であることは分かるが、4月に雪が降る異常に恐怖と好奇を覚えた。




 駅前のロータリーはきれいに整備されていたが、人通りはまばらだ。どこか閑散としている雰囲気を感じ取った。


 近くにタクシー運転手のおっちゃんがいた。


「ここってどこですか」

「〇〇〇〇地方だが」


 なぜか固有名詞が聞き取れない。いや、日本語であることはわかる。それなのに、その単語を脳内で処理し、文字で書き起こすことができない。


「〇〇〇〇ですか」

「〇〇の〇〇だ。」


 やはり聞き取れない。それどころか、自分の発声さえ自分で聞き取ることが難しくなっている。口を動かし音を出す、ということはできるのだが、自分がどんなことを言っているのか、耳で聞こえた音を脳が処理、理解できない。

 今度ははっきりと聞く。


「ここは何県ですか」

「あまりそういうことを何度も聞くな」


 今度ははっきり断られた。嫌われたのだろうか。口だけの謝罪をし、その場を離れた。この間、おっちゃんの仏頂面が崩れることはなかった。




 とぼとぼと駅周囲を歩いていると、雪が弱まりはじめた。そうだ、この光景を写真に撮っておこう。そして友人にでも送ってやろう。その雪景色にカメラを向ける。


 その瞬間、弱まっていた雪は雨へと変わる。豪雨ではない。優しくてあたたかい、美しい雨だ。一瞬、その雨に見とれていた。


 気づくと、カメラの向こうの雪は解けている。これではただの市街地だ。何の特別味もない。急いで違う方にカメラを向ける。優しい雨を受けた積雪は靴底と同じくらいにまで薄くなっていた。


 その雪が完全に解ける瞬間、形容しがたい、何よりも美しい瞬間を見た。また写真を撮り損ねた。あたり360°見渡すが、雪はのこっていない。どれだけ走り回っても、再度雪を目にすることはなかった。




「次は~『六文』、『六文』です」


 唯一雪を乗せた最期の舟は、私を乗せることはなく、でも確かに夢を乗せて走り去っていった。


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