婚約者と出会う。
ーガチャ
でかいドアを思い切り開けると外から「いたっ」と声が聞こえる。
(やべ…)
恐る恐る廊下に顔をのぞかせると尻餅をついた様子の男性がいる。
金髪の髪に青い瞳、質のいい服。the・王子の見た目だ。
(綺麗な顔…)
『何じろじろ見てるんだ…?謝罪ぐらいしたらどうだ。』
「も、申し訳ありません」
頭をがばっと下げる。
ぶつかったのは悪いがそんなプリプリしなくてもいいじゃないか。
『はあ…。全く君には呆れるよ。パーティーではしくじらないでくれよ。』
苛立ったような声に察しが付く。
多分この金髪のきれいな男性はプティ・クライアンの婚約者のロイ・ダリウスだろう。
つまりこんなかわいい女性を振るセンスなし男だ。
そんな奴に割く時間はないと思いペコっと頭を下げる。
『愛想のかけらもないな。冴えない見た目なんだからせめて愛想ぐらいよくしたらどうだ?』
相変わらずプリプリしながら背を向けて歩き出すロイ、もといセンスなし男。
(んー、あれだあれ。上司の川島さん?にそっくりな性格だ。)
前世の常にプリプリしてた川島という上司のおじさんを思い出しながらイライラする。
パーティーとやらまでにもっと磨いてこっちから婚約破棄してやったっていい。
「ねえ、そこのあなた。」
私の部屋の前に立つ髪を団子にした侍女に話しかける。
『どうなさいましたか。』
「パーティーっていつだったかしら?」
『一週間後の夜でございます。』
(…あまり期間はないようだ。)
前世で見ていたストーリーから察するにこのパーティーで婚約破棄をされ、魔法の使えない彼女はどんどん虐げられていくのだろう。
たしか彼女は婚約破棄後、センスなし男の侍女に半強制的にされていた気がする。
(…となると。)
婚約破棄された後、実家に戻るのが最善かもしれない。
ストーリーにあらがえるのかはわからないがやってみることに多分価値はある。
プティ・クライアンの家庭事情はよくわかっていない。
もしそこでも虐げられているようだったら逃げる手段も考えないといけない。
「まあまずは垢抜けさせなきゃね。」
部屋に戻りドレッサーの前に座る。
(このメイクじゃ彼女の肌に馴染んでいないし…。肉づきも悪いよな。)
センスなし男の好みなのか知らないが対して似合わない淡い色でメイクがされている。
ドレスもピンクや水色のパステルカラーが多かった。
(こんなきれいな金髪で目鼻立ちもはっきりしてるタイプだからはっきりした色のほうが似合うのに…)
色の濃いめのチークを目元に入れ、真っ赤な口紅を塗る。
肌はファンデーションなんていらないぐらい綺麗な白だったが、上から濃い肌色が塗られている。
(アイライナーはないんだな…)
綺麗な猫目だから釣り目を強調したらつよつよ美女が爆誕しそうな感じがする。
「ねえ、今日からご飯を野菜と果物を多めにしてくださる?」
『かしこまりました。』
いくらセンスなし男に嫌われてるとはいえ婚約者なのだからある程度いうことは聞いてもらえそうだ。
彼女の胃に多分肉は重過ぎる。
となれば野菜と果物を多めにしてビタミンもとっていきたいところ。
クローゼットをあさると少ないドレスの中から数着濃い色のドレスが見つかる。
「何とかなりそうね。」
お風呂に入る準備をしながらふと思い出す。
(そういえば自称神様のご加護とは結局何だったんだ…?)
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風呂を済ませると髪のお手入れタイムだ。
お風呂についてきてくれる侍女は一人もいないところを見ると設定通り虐げられているんだろう。
だが今は都合がいい。
髪に丁寧に櫛を入れ枝毛を切る。
せっかく綺麗な髪をしているんだ。有効利用しない手はない。
目元を覆っていた長い前髪を左右に分ける。
それだけで顔がはっきりと見え、美人が際立つ。
(めっちゃ可愛い顔…。女優なれるぞこれ!)
職業柄女優さんやモデルと顔を合わせることは少なくなかったがプティの顔面はそれに劣らない。
傾国も余裕だと意気揚々と歩く。
猫背だった背はピシッと伸ばしスタイルを際立てる。
歩き方については前世でモデルの友達から聞かされたことがある。
『プティ・クライアン…。なんだその髪は…』
(げ…。センスなし男…。)
湯上りのいい気分の時に会いたくなかったと思いながらお辞儀をする。
『その髪はどうしたと聞いている。お前らしくないじゃないか!』
お前らしさとはなんだと思いながら「気分転換でございます。」と笑って見せる。
『あまり調子に乗るなよ!女は男を立てるものだろう。』
(まじかよこいつ…)
現代社会を生きていたら多分即炎上するタイプだ。川島よりひどい。
「私はこれで失礼します。いい夜を。」
ペコっとお辞儀をして今度はこっちが背を向けてやる。
あの反応からするに間違いなく美しくなってる。
(今に見てろよ。)
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『んふー、めっちゃ可愛くなってるね!僕のご加護見たらびっくりしちゃうんじゃないかなー!!』
俺はまだどっかよくわからん場所でほくそえみながら俺を見つめる自称神様の力が尋常じゃないことに気づけていなかった。




