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好きな人から告白されたので、罰ゲームだと知っていますが受けてみます  作者: 海瑠トワ


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9/10

9,告白

 待ち合わせ場所につくと、既に遥斗が来ていて私に気付くと、緊張したように「行こう」と言われた。


 遥斗の家はそこからそんなに距離がなく、話をしているうちにすぐについた。


「どうぞ。今日は両親も弟もいないから、ゆっくりして」


 ガチャ、とドアを開け促され、小さく「……お邪魔します」と言って中に入る。用意してくれたスリッパに足を通して、遥斗の背中についていく。


 案内された彼の部屋はシンプルで、私の部屋との違いを感じた。

 男の子の部屋はこんな感じなのか……なんて考えながらキョロキョロとして、ふと遥斗の視線を感じた。


「珍しい?」

「え、あ……男の子の部屋とか初めてだから……つい」


 言い訳のように言ってしまうと、遥斗は「そっか」と言って少し照れたように嬉しそうにうつむいた。


「あー……映画でも見ようか」


 彼に手招かれ、クッションの上に腰を下ろした。

 遥斗はプロジェクターの電源を入れると、白い壁に合わせて画面の大きさをいじる。


「見たいもの選んでて」


 彼にプロジェクターのリモコンを渡され、ドアから出ていく後姿を眺めた。

 綺麗に整った勉強机にシングルベッドの布団は青色。本棚には文庫本や漫画が並んでおり、ラインナップは男の子らしい。


 手元のリモコンを弄り、ポチポチと眺める。

 しばらくすると遥斗が戻ってきて、その手にはお茶やお菓子の乗ったトレイがあった。


「あっ、ありがとう」

「何か見たいのあった?」


 そう聞かれて少しだけ気になっていた恋愛映画を指さした。

 遥斗は何も文句は言わず、「いいね、一緒に見よう」とテーブルにトレイを置きながら隣に座った。


 映像が流れ始め、少し暗めの部屋に沈黙が落ちる。

 勘違いとすれ違いのラブストーリーは王道だな、なんて思いながら二人で肩を並べて眺める。


 こんなすんなり両想いなんて、現実ではありえない。

 女優と俳優が二人で告白し合うシーンに、所詮はお話の中の出来事だな、なんて擦れた考えしか思い浮かばない。


 すると、隣に座っていた遥斗の肩が私にぶつかり、そちらに視線を向ける。

 彼の真剣な目に吸い込まれそうになり、バクバクと大きな鼓動が聞こえた。


 そっと伸びてきた彼の大きな手。


「ぁ……」


 つい振り払ってしまって、気まずさから目を逸らした。

 なんだか部屋の空気が一瞬で冷たくなった気がして遥斗の顔がみられない。少しだけピリピリとした雰囲気を感じて口を引き結んだ。


「……ねぇ、最近避けてる、よね?俺、なにかした?」


 少し温度の下がった声に、ブルッと肩が震えた。


「俺が悪いなら教えてよ。凛」


 遥斗の熱い手が私の腕を掴んだ。思わず顔を見上げると、少し怒ったような彼がじっと私を見ている。


 どうして私が問い詰められなければいけないのだ。

 彼が嘘で始めた関係なのに……。


 目の奥が熱くなり、喉が詰まった。

 視界が滲んで水の膜が張るのが分かったが、止めることなどできなかった。瞬きをするたびにポロポロと雫が落ちる。必死に瞬きを我慢しようとするが、そんなことできるはずもなく吐息と共に零れていく。


「……嘘の彼女だもん」

「え?」


 遥斗にキョトンとした顔で返され、悔しさに唇をかんだ。


「……罰ゲームでしょ!?私に告白したの!私、知ってるもん!」


 思わず叫んでしまえば、彼は目を見開いている。その表情が肯定しているようで、私の中に眠っていた文句が止まらない。


「あの日聞いてたもん。自販機前で話してたじゃない、罰ゲームで告白するって。嘘だと知ってたけど、嬉しくて……でも、もう、私、苦しい。別れて……終わりにしてよ」


 抱えていた不安が口からすべて漏れていく。喉が焼けるように痛くて、それ以上に心が痛くて……。

 私の言葉を黙って聞いていた遥斗は、泣きながら話す私を抱き寄せた。


「なにするっ……!」

「ごめん、気付かなくて。苦しい思いさせて、ごめん」

「ぅう……は、離し、て……」

「嫌だ。……凛、好きだよ」


 抵抗する私を強く抱きしめながら遥斗は囁く。


「う、嘘!もうやめてよ!」

「嘘じゃない……っ!本当だ」


 私を抱き寄せる腕に力が入り、あふれる涙が遥斗のシャツを濡らしていく。


「罰ゲームなのは“告白すること”で相手は……好きな子って条件だった」

「……そんなの、知らない」


 冷たく吐いた言葉に、彼は諦めたように息を吐くと、スマホを取り出した。少し緩んだ腕から逃れようと遥斗の体を押したが、隙間が空くと少し嫌そうな顔をされて、腰を引き寄せられ彼の足の間に座らせられる。


 遥斗は私にスマホの画面を見せるように操作をし、彼の友人の一人に電話を掛けスピーカーモードにした。

 何をする気だと見上げれば、「しー」と静かにするように注意をされ、口を閉じた。


『……もしもし、遥斗?どした?』


 電話が繋がり、いつもの声が聞こえる。


「あー。あのさ……」

『な、なんだよ?はっきり言えよ』

「……俺が凛を好きって、いつから知ってた?」

『は?なんなん、急に』

「いや、いいから」

『……中学からだろ?てか、あれでバレてないって思うほうがおかしいと思うけど』

「うっせ……そんだけ。じゃ」

『は?なんっ』


 電話の向こうで不思議そうな彼の声を遮り、通話終了のボタンを押した遥斗は、驚きで涙の止まった私を覗き込む。


「分かった?俺が凛を好きってこと」


 彼の言葉にじわじわと熱がのぼってくる。

 理解すれば早いもので、恥ずかしい気持ちと好きな人が近くにいる緊張で、胸がきゅうと心臓を握られたように痛んだ。


 私が小さく頷くと、遥斗はスマホをテーブルに置いて私を抱えなおす。

 逃げる気などもうないのに、後ろから抱きしめられ、足の間に座っているせいで身動きが取れない。意識すればするほど彼の爽やかな石鹸のような匂いが鼻をくすぐり、余計に近く感じる。


「はぁ、そっか。嘘だと思ってたのか……」


 顔をコテン、と私の肩に置いた遥斗は、落ち込んだように呟く。


「あ……ごめ……」


 私が謝ろうとすると、遥斗の手が私の顔に伸びてスリ、と、頬を撫でられた。


「凛は意外と慣れてなさそうだったから遠慮してたんだけど……俺の気持ち疑われるの困るし、これからは遠慮しないことにする」


 なんだか不穏な言葉に「え……」と声を漏らすと、遥斗は私の頭を撫でながら旋毛にチュ、とキスをした。

 私が驚きで固まると、楽しそうに笑って「かわい……」と耳元に顔を寄せる。


 遥斗の声も微笑みも甘くて、ドロドロに溶けてしまいそうだ。


「……い、今までと、違い、すぎない?」


 おずおずと尋ねると、遥斗はぎゅっと腕に力を入れて、


「ちゃんと好きって伝えようと思って」


 と言ってスリッと頬を私に擦り付けてくる。

 ドキドキとする心臓が苦しくて、胸を押さえると、それすらも分かっているかのように笑われ、「かわいー」と低く言われる。


「~~~~っ!も、もう、無理……っ!」


 手で顔を覆うと、くつくつと笑われて「仕方ないなぁ」と耳元から顔が離れていくのを感じた。それでも後ろから抱きしめているのは変わらず、帰るまで私は遥斗に離して貰えなかった。


 けれども、今までと違って、私の苦しさは嫌なものではなかった。

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