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好きな人から告白されたので、罰ゲームだと知っていますが受けてみます  作者: 海瑠トワ


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7/10

7,好きな人

 あっという間に約束の日。

 待ち合わせた駅から電車に乗って移動する。


 水族館なんていつぶりだろう……。

 少し早めの集合だったため、電車に揺られていると、うとうととしてしまう。


 隣に座った遥斗に頭を撫でられて「寝てもいいよ」と言われる。


 それは少しもったいない。だって、せっかくの、デート、だし……。

 フルフルと首を振ると、「じゃあ眠くなったら俺の肩枕にしていいから」と優しい彼らしい言葉が降ってくる。


 どうにか眠気を堪えて目的地に着くと、受付を済ませる。今日も遥斗は既にチケットをとっていたらしく、スムーズに館内に入ることが出来た。

 申し訳なくて俯いてしまうと、


「そこは、ありがとう、って言って。それでも気になるなら、“好き”って言ってくれたら嬉しいな。」


 と冗談っぽく言われる。

 私は散々迷って「ありがとう」とだけ口にした。


 私に告白をしろだなんて意地悪な人だ。

 キリキリと胸の辺りが凍ったように冷たくなって、自分に大丈夫、と言い聞かせる。


 呼吸を整えると、遥斗の背を追って薄暗い館内を進んだ。




 水槽を照らす明かりが、ゆらゆらと虹色の光となって揺れる。魚の鱗がピカピカと光って幻想的な空間。


「……凄い」


 目の前の大きなガラスの向こうを、たくさんの魚が泳いでいる。思わず駆け寄って感嘆の音を零してしまえば、私のそばに寄った遥斗がクスクスと笑う。


「凛、子供みたいで可愛い」

「……だって……恋人と来てみたかったから」


 言い返せないほど、はしゃいでしまった自覚がある。ムッとして本音を言ってしまえば、遥斗は珍しく頬を染めた。


「……え?な、なんで、照れてるの」


 遥斗が照れたことにより私にも移ってしまう。

 遥斗は少し眉を顰めて、私の手を雑に取ってそっぽを向いた。


「……そんなこと言われたら照れるよ」


 投げやりのような言葉だったけど、耳が赤くて彼がただ照れ隠しをしているだけだとわかった。


 きゅん、と鳴ってしまった心臓を誤魔化すように、遥斗に取られた手を私もそっと握り返した。


「ゆっくり、見て回ろ……?」


 まだ少し赤い顔のままの遥斗がそう言った。そして私の耳元に手を伸ばすと、シャラ、とイヤリングが小さく揺れる。


「あと、これ、すごく似合ってる」


 私のイヤリングに気づいていたようで、遥斗は嬉しそうに笑って私の手を引いた。


 遥斗の言った通り、二人でゆっくり水槽を眺めながら静かな館内を歩く。


 ふよふよと漂うクラゲの前で足を止め、大きくゆっくり泳ぐエイを目で追って、夢中で見ていた。遥斗はそんな子供みたいな反応をする私を、飽きもせずに眺めていた。


「楽しい?」

「うん……楽しい。憧れてたから」


 遥斗に子供をあやす様に聞かれて、少し恥ずかしくて俯いた。それでも本音を伝えれば、彼は安心したように微笑んだ。


「凛ってさ、意外とロマンチストだよね」


 遥斗の言葉に、やっぱ似合わないよな……と肩を落とすと、焦ったように声がした。


「あっ、い、いやっ!悪いとかじゃないよ?ただ……可愛いって思ってる」


 ギャップ?と首を傾げた遥斗に目頭が熱くなる。こうやって、イメージと違う、なんて言わない彼だから好きになったのだ。



 私が彼に想いを寄せるようになったのは、一年前。

 図書室で本を借りようとしていた時だった。


 偶然私の名前が聞こえて足を止めたのだ。


「あ、この本、神木さんも借りたことあるみたいだよ」

「え、意外。恋愛小説とかあの人読むんだ。イメージ崩れる」


 何度言われた言葉だっただろう。

 いつもの事、そう思おうとしてぎゅっと手のひらを握った時、その時はただの同級生だった、遥斗の声がした。


「え?良くね?可愛いじゃん、そういうの」


 穂乃果や家族以外に初めて肯定され、思わず唇を噛んだ。そうしないと涙が溢れそうだったから。


 その時から好きだった。

 恋に落ちたんだ。


 ほんとに恋愛小説の主人公のように、胸が苦しくなって泣きたくなった。


 私では叶わないと思いつつも、気がつけば目で追っていて、笑った顔も真剣な顔も少し怒ったような顔も、全てが愛おしく思えた。



 遥斗はあの日から何も変わらない。

 素敵な彼のまま。


「ありがとう」


 私はそれだけ呟いて、そろそろ彼を解放しようと心に決めた。

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