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好きな人から告白されたので、罰ゲームだと知っていますが受けてみます  作者: 海瑠トワ


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3/10

3,映画のような恋

 楽しみにしていたせいか、日が経つのが少しだけ遅く感じた数日。


 今日は約束の……で、デートの、日。

 昨日の夜から何を着ていくか迷って、張り切りすぎて引かれないか、適当だと思われても……と鏡の前で服をあてながら、一人悶々としていた。


 結局シンプルに、白いブラウスにハイウエストのデニムスカート、白いレースの靴下にローファー、肩掛けのバッグを持って外に出た。


 胸の下辺りまである髪は、結ぶのはやめてそのまま下ろすことにした。


 少し張り切っている感は否めないが、これくらいのオシャレは穂乃果と出掛ける時もする。自分に言い聞かせるように「大丈夫」と呟いて、待ち合わせ場所に向かった。


 約束した時間の十分前。

 映画館近くの公園の木の下に、スマホを見ている遥斗を見つけた。


 初めて見る彼の私服は、白いシャツにベージュのニットベスト、黒スキニー。小さめのサコッシュとバケットハットを身につけていて、新鮮な姿につい、かっこいい、だなんて感想が漏れそうだった。


 爽やかな彼にとても似合っている。


 遠くから観察をしながら歩いていくと、私に気づいた遥斗は顔を上げてニコリと笑う。


「凛。私服、すごく似合ってるね。……可愛い」


 過剰な褒め言葉だ。

 自分は可愛いと言われるような人間じゃない。分かっているのに、遥斗の言葉だと思うと浮かれる気持ちの方が大きくて困る。


 ついドキリとして、喉が詰まった私は声が震える。


「……ふ、普通、だと思う……」


 私も彼に、似合っていると言おうとしてやめた。地味な私に言われても、あまり嬉しくはないだろうし。


 遥斗は少し俯いた私に「行こうか」と優しく声をかけ歩き出した。


 いつも思うが、彼はすごくスマートにエスコートしてくれている。車道側をさりげなく歩いてくれるし、私の歩幅に合わせてゆっくり進む。


 さり気ない気遣いが、彼の手馴れている感じを思わせて、なんだか少し胃が重くなった。


「あのさ」


 不意に話しかけられ、遥斗を見上げると少しだけ頬を染めている。


「……手、繋いでいい?」


 緊張したように問いかけられて、聞かなくてもいいのにと思った。

 彼であれば拒否するわけが無いのだ。


 私が小さく頷くと、そっと手を差し出される。

 その大きな手にソロソロと自分の手を重ねると、優しくふわりと握られた。


 骨ばった彼の手が私とは全然違って、顔に熱が集まっていくのがわかる。こんな人混みなのに、心臓の音が彼にまで聞こえそうで、チラ、と遥斗を見上げた。


 バチ、と目が合って、余計に緊張してそっと逸らしてしまう。


 手汗が酷くないか、髪は乱れていないか、そんな事ばかり気にして、遥斗の話が頭に入ってこなかった。


 映画館に着くと、遥斗はチケットを予め取っていたらしく、スムーズに受付を済ませていく。


「あ……お金、私も払うよ」

「ん?大丈夫。ここは俺に奢らせて?」


 気にしないで、というように、遥斗は繋いでいた私の手をぎゅっと握る。そして、そのまま「飲み物とか買おうか」と売店の列に並んだ。


 そこでも遥斗がお金を出してくれ、申し訳ないと言うと、


「じゃあ、ランチは凛が出してくれる?」


 と言われる。

 思わず頷いてから、映画見たあとも一緒にいることが決まったことに気づいた。

 なんだかんだ私ばかりが得をしている気がする。


 早めに席につこうと言われ、まだ客の少ないうちに入場した。

 映画館は久しぶりだ。


「俺、今日すごく楽しみにしててさ、少し浮かれてるかも」


 隣から話しかけられ、苦笑する遥斗にそうだろうか、と首を傾げた。


「今は……凛が、可愛くて、すごく緊張してる」


 彼の爆弾発言に私が固まると、可笑しそうにクスクス笑い出す。そんな遥斗に少しだけムッとして、


「……揶揄ってるでしょ」


 と言うと、ハハッと笑い「少し」と認めた。


 そんな話を小さくしていると、いつの間にか時間がきていて照明が落ちる。暗くなった空間で、熱くなった頬を手の甲で冷ました。


 スクリーンの光に目を向けると、静かな空間に気付かれないように息を吐いた。


 映画が始まると、隣に座る遥斗を忘れてつい魅入ってしまった。ハラハラとする展開に少し体が強ばると、握っていた手にそっと熱が触れる。


 パッと遥斗を見やると、ニコッと微笑まれ、違う意味でドキドキしてしまった。

 そのまま手は離されることはなく、映画が終わるまで私の心臓も大きく鳴っていた。

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