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好きな人から告白されたので、罰ゲームだと知っていますが受けてみます  作者: 海瑠トワ


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2/10

2,デートの約束

「えぇぇぇ〜!?それほんと!?」


 昼休み。穂乃果に全てを話すと、小さな体で乗り出して叫んだ。そんなオーバーリアクションに苦笑してしまう。


「うん、ほんと。聞いたもん」

「ありえない……っ!ねぇ凛!なんでオッケーしたの?」


 穂乃果の質問にそう思うよね、と納得する。


「……好きだから。今だけ彼女気分を楽しもうと思って」


 私が少し迷ってそう言うと、穂乃果は心配そうに「楽しめてないじゃん……」と零す。


 ……うん、確かにそうかも。

 でも、それでも彼の隣にいれると思うだけで、どうしようもなく嬉しかったのは事実なのだ。胸が高鳴って、苦しさと同時に泣きたいほど嬉しかった。


 曖昧な表情で黙ってしまった私に、穂乃果は一つため息をついた。


「まぁ、凛がいいならいいけど」


 そういった穂乃果は少し考え込む仕草をして、「でもさ」と続けた。


「……遥斗くんのあの様子。かなり嬉しそうに見えたけど……演技だったらむしろすごくない!?俳優になることを勧めるわぁ」


 感心するようにウンウンと頷く穂乃果は、私を見て


「とにかく、辛くなるならやめなさい。あと、ちゃんと話し合うこと!」


 とビシッと指を立てて注意をくれた。


「うん、そうするね。ありがとう穂乃果」


 私は彼女のように強くは無いけど、なんだか勇気を貰った気分だった。



 *



 その日の放課後、日直で遅くなった私は早く帰ろう、と下駄箱へ向かう。


 そこで棚に背を預け腕を組んでいた姿に、ピタリと足を止めた。


「……あ、凛。日直、お疲れ様。今日も送っていこうと思って」

「……わざわざ、よかったのに」


 なんで、なんて言葉を飲み込んだのに、相変わらず出てくるのは可愛くない言葉。

 素直じゃない……。


 するとそんな私に気にした様子も見せず、遥斗は「俺が送りたかった」といった。


 目の奥がツンとして、素っ気なく「ありがと」と返した。


 その言葉にはどんな真意があるのだろう。

 たかが嘘の恋人にここまで優しくするなんて……。意図しているのなら彼は悪魔だ。


 上履きから履き替え、昨日と同じように並んで歩く。彼はもう私の家までの通学路を覚えたのか、穏やかな声で好きな物や趣味の話をした。


「──それで、今度その小説の映画があるんだ」

「へぇ、詳しいね」

「うん。凛が良ければ今度一緒に行かない?好きだよね?」

「えっ?なんで好きって知ってるの?」


 遥斗の言葉に驚けば、彼はケロッと「今日読んでたでしょ?」と首を傾げる。

 なんでそんなとこまで見てるんだ。


 今まで、一方的に見ていると思っていた遥斗に見られていると知って、なんだか恥ずかしくなった。赤くなった顔を隠すようにそっぽを向くと、それすらも分かっている、というように笑われる。


「……行きたい」


 拗ねたような声になるのは許して欲しい。


 可愛くないのは自分でもわかっているが、穂乃果のような可愛い反応は、自分に似合わない自覚がある。


 私の答えに遥斗は「うん、デートだね」と言うと、楽しげに目を細めた。その笑顔がなんだか擽ったい。きゅぅっと胸が締め付けられて、私の心臓が彼を好きだと叫んでいた。


 ほんとにずるい人だと思う。

 そんなことを嬉しそうに言うなんて、私でなかったら勘違いする。


 そんなことを考えているうちに、いつの間にか家に着いていて、「また連絡するね」と残して遥斗は背を向けた。


 その後ろ姿にきゅん、として、火照った頬を押さえていた。


 その日の夜。

 遥斗からのチャットがきて、次の週末に出掛けようと決まった。


『楽しみにしている』


 という浮かれたようなチャットに『私も』と素直に返した。返事が来る度になんだかソワソワとして、スマホを気にしてしまう。


 ベッドに潜り込んでからもチラチラと気にして、なんだか馬鹿みたいだな、と少しだけ落ち込んだ。

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