side 計 想定外の魔力
彼というのは空のことです。女の子になっても、空くんとして認識しています。あの兄弟(姉妹?)がおかしいだけでこれが普通です。
自分で彼のことを魔力量測定に促しておいて言うことでは無いが、測定器が耐えられるか不安である。そこそこ魔力の扱いに長けている私は、相手の魔力の流れがなんとなく分かるので、魔力量も大体分かるのだが、底の見えない程の魔力が流れているのを感じたことは無かった。ダンジョンの下層の魔物ですら、これほどの魔力量では無かった。以前は微々たるものであった彼の魔力の量がここまで増えれば扱えずに辺りに被害が出る可能性もある。だが、私に出来ることは、どんな状況にも対応してきた彼を信用して、魔力量測定を行うことだけだ。
「さあ、思いっきり魔力を放出していいぞ」
「はい」
どうやら私は彼の能力を見誤っていたらしい。彼は下層の魔物など比べ物にならない程の底なしの魔力を持っている。おそらく歴代の探索者の中でもトップクラスの魔力量だろう。しかも、彼の魔力は何も破壊することなく、むしろ優しいものである。そして何よりも凄いのはこれほどの魔力の量であっても、扱いきれていることだ。彼がこの1年間魔物を狩り、魔石で生活費を稼いでいたことは知っていたが、これほどまでに魔力操作が得意になっていたとは知らなかった。この結果を見て、彼は日本トップの探索者になれると確信させられた。
「もうそろそろ大丈夫ですか?」
そう声を掛けられてハッとした。まだ魔力量測定の最中であった。当然ながら、測定器は振り切ってしまっており、これ以上続けても測ることは出来ないのだから続ける意味は無い。
「もう大丈夫だ。魔力を止めていいぞ」
「はい」
そう彼が返事をして、魔力の放出を止めたのだが、魔力が羽のように形作って留まっている。妖精の力なのだろうか。
「魔力が羽のようになっているな」
「本当ですね。身体が軽くなった気がします」
「お姉ちゃんがさらにかわいくなった!」
海ちゃんは喜んでいるのだが、1つ気になることがある。
「それは消すことも出来るのか?」
「多分出来ます。あっ、出来ました」
彼は目の前で羽を消して見せた。これなら大丈夫だろう。
「ダンジョンでは羽を出したままでいいが、外では消しておいてくれると助かる。周りの人を驚かしてしまうかも知れないからな」
「分かりました」
「あと今回のケースは初めてのパターンで特殊なものだから、会長のほうにも伝えても大丈夫か?」
「大丈夫です」
「じゃあ今日はもう解散だ。帰って大丈夫だぞ」
「今日はありがとうございました」
「ありがとうございました~」
2人が帰って1人になり、
「まったく、面倒なことになったな。これは世界規模の大発見なんだろうな」
と呟いた。
ダンジョンは上層 1~10層、中層 11~20層、下層 21~30層、深層 31層~
と分けられて命名されています。その階層で魔物の強さが大きく変化するからです。しかし、現在までに人々は32層までしか到達出来ていないため、深層より下の層があるのかは不明です。
普通の魔物は、スライムであれば上層にしかいないというように出現する階層が決まっています。しかし、妖精は上層、中層、下層で発見報告があり、しかもほとんど出会うことが無いため、見つかるたびに世界的なニュースになる程です。そのため、計さんは探索者協会の上層部でどうにかして面倒事に繋がらないようにして欲しかったりします。(つまり、仕事が増えるのが嫌)




