表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/158

サナンの不幸

「よし! その資材はそっちの荷車へ! あぁ、そっちじゃない! あそこの荷車だ!」

「よぉ、大変そうだな、総大将殿」

「おぉ、サナンか! もう帰ってきてたのか!」

 

 軍議の後、俺に侵攻軍総大将が任せられ、その編成の為、搦手砦から魔王派を始めとした、当時指揮した軍が戻ってきていた。

 勿論、その補填として別の部隊が搦手砦に配されている。

 そして俺はグンローグ要塞内の軍を使って侵攻軍の準備を進めていた。

 

「あぁ。魔王派だけ一足先にな。本隊は……と言っても五百だけだが、明日には帰ってくるだろうさ。それにしても……大変そうだな」

「あぁ。侵攻作戦の為の準備が忙しくてな……色々な策をするための準備で資材もそれなりに必要だし大変だよ。そう言えば、フィアナは?」

 

 帰って来た魔王派の仲間達の中にフィアナの姿は無かった。

 搦手砦での様子など聞きたかったのだが……。

 

「あぁ、フィアナの嬢ちゃんなら、赤い髪のエラい美人な魔族に話しかけられて、要塞の中に入って行ったよ」

「赤い髪の……まさか……」

「ん? 誰なんだ? お前なら分かるんじゃないのか?」

 

 赤い髪の魔族……。

 この要塞の中で思い当たる人物は一人しかいない。

 

「まぁ……体はもっとこう……大人っぽい方が良いんだけどな! 俺の好みにはもう少し……」

 

 相手が誰かも知らずにサナンは話し続ける。

 

「……あ」

 

 すると、サナンの背後から話題の赤い髪の魔族が近寄る。

 側にはフィアナとレナもいた。

 うん、確定だ。

 

「……で、お前としてはどうなんだよ! 体の好みは大事だぜ? やっぱり例の赤い髪の魔族みたいな子供体型じゃあ無くて……」

「……サナン、悪い事は言わない。後ろを見ろ」

「あ? 話を逸らすなよ! どうなんだよ?」

 

 俺は頭を抱える。

 どうやらサナンの命運はここで尽きるらしい。

 

「……サナン」

「お? 観念したか?」

「お前の言っている赤い髪の魔族は、魔王サティス様だ。そして、今後ろにいる」

「……え? まさかそんな……」

 

 サナンは恐る恐る振り返る。

 そこには、恐ろしい笑顔を浮かべるサティスが腕を組んでこちらを見ていた。

 その様子で、自分の過ちに気付く。

 

「……子供みたいな体型か……」

「……え、えぇと……」

「魔王派のリーダー……武力に秀でた者だと言うから期待していたのに……こんなに下劣な男だとは……見損なったぞ」

「はい。万死に値しますね」

「……死ね」

「……ぐ……」

 

 魔王、そしてフィアナとレナにまで罵倒され、サナンはその場に崩れ落ちる。

 そして、そのまま地面に頭を付けサティスに謝罪をする。

 

「も、申し訳ありません! サティス様だとは知らずに……」

「いや、知ってても知らなくてもその発言は失礼だろう」

 

 うん、それはそう。

 サナンは反省すべきだな。

 

「……まぁ、知らなかったと言うことで私への不敬は許してやる。今後は気をつけろよ?」

「は、はい!」

 

 サナンは気まずかったのか、俺の用意していた荷車の方へと走って行き、魔王派の仲間達と共に荷車の点検を始めた。

 いや、少しでも活躍して魔王に評価を見直させたいのだろう。

 

「お前ら! 荷車の車輪とか点検だ! 少しの不備も見逃すなよ!」

「……お前達のリーダーは愉快な奴だな」

「……えぇ、本当に」

 

 すると、サティスが何やら言いたげにこちらを見ている事に気付く。

 いや、フィアナとレナもだった。

 

「……で、お前の体の好みはどうなんだ? 私みたいな子供っぽい方が良いのか? それとも、フィアナやレナのような標準的な体型か……まさか、キサラのような大人っぽい体型か!? やはり男は……」

「いやいや! 待って下さい! 別に俺は……」

「で、どうなんです?」

「どうなの?」

 

 三人に詰め寄られる。

 

「……勘弁して下さい……」

では、評価や感想ブックマーク等、お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ