サナンの不幸
「よし! その資材はそっちの荷車へ! あぁ、そっちじゃない! あそこの荷車だ!」
「よぉ、大変そうだな、総大将殿」
「おぉ、サナンか! もう帰ってきてたのか!」
軍議の後、俺に侵攻軍総大将が任せられ、その編成の為、搦手砦から魔王派を始めとした、当時指揮した軍が戻ってきていた。
勿論、その補填として別の部隊が搦手砦に配されている。
そして俺はグンローグ要塞内の軍を使って侵攻軍の準備を進めていた。
「あぁ。魔王派だけ一足先にな。本隊は……と言っても五百だけだが、明日には帰ってくるだろうさ。それにしても……大変そうだな」
「あぁ。侵攻作戦の為の準備が忙しくてな……色々な策をするための準備で資材もそれなりに必要だし大変だよ。そう言えば、フィアナは?」
帰って来た魔王派の仲間達の中にフィアナの姿は無かった。
搦手砦での様子など聞きたかったのだが……。
「あぁ、フィアナの嬢ちゃんなら、赤い髪のエラい美人な魔族に話しかけられて、要塞の中に入って行ったよ」
「赤い髪の……まさか……」
「ん? 誰なんだ? お前なら分かるんじゃないのか?」
赤い髪の魔族……。
この要塞の中で思い当たる人物は一人しかいない。
「まぁ……体はもっとこう……大人っぽい方が良いんだけどな! 俺の好みにはもう少し……」
相手が誰かも知らずにサナンは話し続ける。
「……あ」
すると、サナンの背後から話題の赤い髪の魔族が近寄る。
側にはフィアナとレナもいた。
うん、確定だ。
「……で、お前としてはどうなんだよ! 体の好みは大事だぜ? やっぱり例の赤い髪の魔族みたいな子供体型じゃあ無くて……」
「……サナン、悪い事は言わない。後ろを見ろ」
「あ? 話を逸らすなよ! どうなんだよ?」
俺は頭を抱える。
どうやらサナンの命運はここで尽きるらしい。
「……サナン」
「お? 観念したか?」
「お前の言っている赤い髪の魔族は、魔王サティス様だ。そして、今後ろにいる」
「……え? まさかそんな……」
サナンは恐る恐る振り返る。
そこには、恐ろしい笑顔を浮かべるサティスが腕を組んでこちらを見ていた。
その様子で、自分の過ちに気付く。
「……子供みたいな体型か……」
「……え、えぇと……」
「魔王派のリーダー……武力に秀でた者だと言うから期待していたのに……こんなに下劣な男だとは……見損なったぞ」
「はい。万死に値しますね」
「……死ね」
「……ぐ……」
魔王、そしてフィアナとレナにまで罵倒され、サナンはその場に崩れ落ちる。
そして、そのまま地面に頭を付けサティスに謝罪をする。
「も、申し訳ありません! サティス様だとは知らずに……」
「いや、知ってても知らなくてもその発言は失礼だろう」
うん、それはそう。
サナンは反省すべきだな。
「……まぁ、知らなかったと言うことで私への不敬は許してやる。今後は気をつけろよ?」
「は、はい!」
サナンは気まずかったのか、俺の用意していた荷車の方へと走って行き、魔王派の仲間達と共に荷車の点検を始めた。
いや、少しでも活躍して魔王に評価を見直させたいのだろう。
「お前ら! 荷車の車輪とか点検だ! 少しの不備も見逃すなよ!」
「……お前達のリーダーは愉快な奴だな」
「……えぇ、本当に」
すると、サティスが何やら言いたげにこちらを見ている事に気付く。
いや、フィアナとレナもだった。
「……で、お前の体の好みはどうなんだ? 私みたいな子供っぽい方が良いのか? それとも、フィアナやレナのような標準的な体型か……まさか、キサラのような大人っぽい体型か!? やはり男は……」
「いやいや! 待って下さい! 別に俺は……」
「で、どうなんです?」
「どうなの?」
三人に詰め寄られる。
「……勘弁して下さい……」
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