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魔王軍の方針

「ふむ……新たな方針、か」

「ええ。その前にまず現状の方針を、何となく予想はついてますが、改めてお聞きしたい」

 

 そう言うとサティスは頷く。

 

「うむ。良かろう」

 

 サティスは説明を始める。

 

「我軍は総数一万程だ。それを四つの大隊に分け、その下に複数の中隊、そして小隊がある。それら全て、お前の言う通りに他種族の混成だ。まぁ、全ての種族が全ての部隊に均等に配置されている訳では無いがな」

 

 その辺りは想定の範囲内であった。

 だが、一万を四つの大隊に分けると言うのは分けすぎな気がする。

 恐らく、魔王軍の四天王的な存在がそれぞれ大隊長を務めており、その名残なのだろう。

 そのまま、サティスは説明を続けた。

 

「そして、軍の方針だが、現状は守りに徹し、敵の損耗を待ちつつ戦力の増強をしている。本国には訓練中の部隊もいる。まぁ、まだまだ実戦には使えないがな。それで減ったり増えたりを経て現在の数に至るという訳だ」

「……それでは、増える兵の数が間に合わないのでは? そのままでは、最終的には訓練が不充分な者が前線に立つことになりそうですが」

「……そうだな。事実、訓練兵の訓練期間は段々短くなってきている。今はまだ問題無い範疇だが、いずれはそうなるだろう」

 

 どうやら、サティスもそれは理解していたようだ。

 しかし現状、その手しか取れないのも事実。

 つまり防戦一方の戦略しか取れない。

 数的不利がある中での侵攻作戦など、あり得ないのだ。

 

「……勝つには攻めなければならない。しかし、我々にはそれが可能な戦力は残されていない。かといって降伏する事も出来無い。今は耐え続けて状況が変わるのを待つしか無いのだ」

「成る程。それが魔王軍の方針ですか」

 

 皆、静かになる。

 少し空気が悪くなったか。

 なら、変えてやろう。

 

「我らがこの戦略を取らざるを得ないというこの状況、敵も充分理解している筈。つまり、敵はまさか攻められるとは微塵も考えていないでしょう。勝っている側は必ず油断しています。そこが狙い目です」

「おぉ……流石は佐切殿だ。私もそれなりに考えてはいましたが、その考えには至りませんでした。つまり、逆に攻めれば勝てると……」

 

 ジョバンニが俺が空気を少しでも明るくしようとしていることを察してくれたのか、すかさずフォローしてくれた。

 本当にジョバンニさんがいると心強い。

 レナはというと……。

 

「……?」

 

 よくわかっていないらしい。

 まぁ……良いか。

 

「……しかし、攻めるだけの戦力はないぞ? 一体どうするのだ?」

「……あ! もしかして……」

 

 すると、キサラが何かに気が付く。

 恐らく、当たりだろう。

 

「そう。キサラさんなら思い当たるでしょう。エルフの方々が協力を申し出てきてくれている、要塞街ファレスを攻略します。あそこなら、内側に味方がいます。あそこの攻略に、大軍は必要無いのです」

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