激突
「突っ込め! 今更矢の一本や二本、痛くも何とも無いわ!」
ようやく罠地帯を越え、兵達の士気も上がり始めた。
幸いにも敵の弾幕は薄い。
矢の威力も、盾を貫ける程ではない。
兵達が盾で身を守りつつ土塁を越え柵へと近付く。
「隊長! 第一陣が柵を突破しました! 予定通り、続々となだれ込んで行っています!」
「よし! このまま本命を投入する!」
この戦の本命、それは魔王軍には無くて我々にはある者。
「ゴルドー殿、ソフィア殿! お願いします!」
「了解した!」
「護の仇……絶対に取る!」
そう、スキル持ちである。
彼らを無事、柵の向こう側へと送り届けるのが最優先任務である。
それには、ここの魔王軍を蹴散らさなければならない。
「全軍、しっかりと盾を構えよ!」
その一言で、そこには両側が盾で守られた盾の道が出来上がる。
これなら道中を狙撃されることは無い。
そして。
「よし! ソフィア、俺は右をやる。お前は左を蹴散らせ!」
「うん! 分かった!」
二人は破壊された柵を越えると、両側へと展開する。
先に橋頭堡を確保していた第六騎士団は徐々に敵を押し込み、その域を広げている。
そして、その後方に万全の準備を整えた二人が展開する。
全ては計画通りに進んでいた。
「我々本隊はここで待機だ! お二人の護衛は先に突入した仲間に任せる! 我々が出て混雑すれば、邪魔にしかならないからな!」
それがこの世界の戦の仕方。
スキルを持たない雑兵はスキル持ちを助け、邪魔になるのであればその場を退く。
そして、スキル持ちに前衛が居ないのであれば、それは雑兵が受け持つのが定石だ。
「よし……これで……」
勝利の兆しが見えたその時。
「おらおら! 突っ込め! 第六騎士団、魔王派として数々の戦いを生き延びてきた俺達が相手だ!」
「な、何事だ!?」
盾の道の出口、つまり土塁の上で激しい剣戟の音が響く。
「た、隊長! 敵が突っ込んで来ました!」
「何!?」
「現在、近くの兵で何とか抑えておりますが、相手が人間……それも、我々と同じくスキルを持たないという、例の魔王派の敵が盾の道を塞ぐように陣取っており、それを奪還する為、激しい戦闘が……」
「魔王派……」
話によれば、彼等は我々と同じくスキルを持たず、己の力のみでスキル持ち……いや、スキル至上主義のこの世界に抗っていた者達だ。
それを知っている第六騎士団の兵達は、好印象を抱いていた。
それに加えてこれまでは主に魔族を相手にしてきた兵達にとって人間との命の奪い合いは初めて。
王都で暴漢などを捕らえる事はあっても、戦争で人の命を奪った事など無い。
こちらの士気は落ちる一方であった。
(くっ……それを知っての事か……それを狙っていたのか、佐切殿!)
まんまとはめられた事。
ここまで順調だと思い込んでいた事。
全てが不甲斐ない。
「……敵は魔族に与した敵だ! スキル持ちの二人に魔王派の背後を攻撃させる! それで……」
「だめです! 既に両側、敵と接触しております! 今背中を見せれば……」
「くっ……これでは……」
これでは砦になだれ込めない……。
そこで、もはや直感に近い不安を感じた。
それを感じた途端、まるで佐切のスキル『俯瞰』で戦場を見渡したかのような、戦場の図面が頭の中に浮かぶ。
「これは……」
こちらの本隊は柵の手前で足止めをされ、本命のスキル持ち二人は敵の砦の中で先に突入した第六騎士団の仲間数名とともに孤立している。
それが見えた途端、全てを理解する。
「……負けた……」
そう、口にするしか出来なかった。
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