二次会 されど
「よし! 皆! 魔王派の二次会だ! さっきの宴は前座! お前らまだまだ行けるよな!」
サナンの声で皆が歓声を上げて拳を上げる。
「まだまだ俺達は知り合ってから間もない! 急に五千人にもなったからな! 俺達は家族同然でやってきた! この二次会で親睦を深めるぞ! じゃあ……乾杯!」
サナンは魔王派は家族同然と言うのを大事にしている。
それで、急に規模の増えた魔王派の親睦を深める為、二次会を企画したのだ。
そして、飲み足りないドワーフや諸王国連合の人間、エルフまでもが入って来て、また盛り上がっていた。
「佐切さん」
「あ、キサラさん。なんだかんだでまだ会えてませんでしたね」
「ええ。いろいろと忙しくて」
キサラさんの表情は嬉しそうでもなく、どこか暗いような顔をしていた。
「……何かありました?」
「いえ、少し疲れが出たのかもしれません。顔だけ出そうと思ってたので、そろそろお暇させてもらいますね」
キサラは頭を少し下げ、その場を後にする。
「……大丈夫かな……」
「大丈夫だと思うよ。ま、確証は無いけどね」
すると、背後からカルラさんに声をかけられる。
「……心臓に悪いですよ……」
「フフ、狙い通りだね。最近は驚かせることにはまってるからね……」
「というか、サナンの所に行ってあげたらどうです? あいつ、チラチラこっち見てますよ。後々面倒くさいことになりそうですし、行ってあげたらどうです?」
「仕方無いね……」
カルラはため息をつきながら、サナンの元へ行く。
そして、カルラはサナンの背中を叩く。
「あ……えと……」
「ほら、ヤキモチ妬いてんじゃないよ! 男ならドンと構えな!」
「は、はい!」
サナンはサナンで楽しんでいるようだ。
フィアナ達は……。
「あんたの采配、見事だった!」
「あんたになら俺らの命を任せられるよ」
「この先の戦も頼んだぜ!」
「あはは……私なんて……佐切様の方が凄いですよ!」
人気者だな。
ま、少し俺から離れるのも良いだろう。
「……ちょっと」
「……ん?」
「あんたよ。元勇者」
背後から声をかけられる。
振り向くがそこには誰も居らず、暗闇だった。
暗闇から声がするのだ。
「こっちに来なさい」
「……」
「何も害は加えないから、早く……」
不気味ではある。
が、行かなければならない。
そう直感した。
「……駄目」
「……レナ」
「怪しすぎる」
レナに服の裾を掴まれ、止められる。
「レナ……お前は宴を楽しんで来ていいんだぞ? 俺の事は……」
「駄目。守る」
珍しく言う事を聞かない。
こんなに頑固なのも珍しいな……。
「……じゃあ一緒に来てくれるか?」
「……それなら良い」
「じゃ、守ってくれよ? まぁ、レナに何かあったら嫌だから俺も全力で守るけどな」
「ん。よろしく」
俺とレナは暗闇に足を踏み入れるのであった。
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