崩落
「くそ……何故誰も言う事を聞かない……」
「ガイア様……」
ガイアは誰も指示を聞いてくれないため、皆が城へ殺到する中、ガイアとその手勢は未だに本丸の城門付近に居た。
城へは十万の大軍が海のように広がり、我先にと城の中へ入ろうとしていた。
「……今から奴らの指揮をするのは無理があります。それに、この城壁に敵が居なかったのも、ガイア様のおっしゃる通り、罠の可能性があります。ここは引きましょう。御身が一番大事です」
「……俺は結局、無能を晒しただけか」
「いえ、真の無能はいま城へ殺到している奴等です! 罠の可能性を考えずにひたすら城へ群がっています! やはりあの愚か者どもを支配するのはあなた様でなくてはなりません。今の王、エルード三世もこの場に居たらあの群衆に混ざっていた事でしょう」
「……そうか。お前は良い家臣だな。どちらにせよこの状況から敵がここまで攻めてくる手立ては無い筈。この後方に位置する我らは大丈夫だろう。俺は仮にも総大将。退くわけにはいかん」
「……流石はドルグフォレスト家当主、ガイア様です! 我ら家臣一同、身命をとしてお守りいたします!」
ガイアは今一度家臣達の忠誠心に感謝をした。
すると、足元が揺れ始める。
「ん? 何事だ?」
「地震……いや、何か……」
違和感に気づき始めた時、それは既に遅かった。
「う、うわぁ!」
「あ、足元が!」
「床が!」
前線の兵達の悲鳴が聞こえてくる。
その声は段々と近付いてくる。
その様子に、ガイアは異常を察知する。
「っ! 退け! 何かやばい! 全軍、全速で後退せよ!」
ガイアは叫ぶが、前線の混乱は凄まじく、声は届かない。
「ガイア様! 奴らはもう無理です! ガイア様だけでも!」
「く……仕方無い!」
ガイアは踵を返して走り始める。
しかし、時既に遅し。
「な……足元が……」
城の方から段々と足場が崩れていく。
大きな音を立てて、自分が先ほどまで立っていた場所が崩れ落ちる。
「く……」
その振動で、ガイアは躓いてしまう。
ガイアは、死を覚悟した。
「ガイア様!」
家臣の一人がガイアの襟首を掴み、引きずる。
それにより、ガイアは数センチ城から離れた。
崩落は、ガイアのいる所スレスレで止まったのだ。
「……はぁ……はぁ……」
まさかの出来事に、ガイアは肩で息をする程走った。
しかし、ガイアにとっての絶望はまだこの先にあった。
「ガイア様! ご無事ですか!?」
「あ、あぁ……助かった……兵はどうなった?」
「我らの手勢は殆ど損害はありませんが……」
側近は崩落した地点を見る。
そこは、城から一直線に、ガイアを狙ったかのようにまっすぐこちら側に崩落していた。
「これでは味方は……」
「……逃げるぞ……」
「は?」
ガイアは叫ぶ。
「逃げよ! 何とか崩落していない地点の仲間とも合流して兵を増やせ! これは敵の策だ!」
「な……」
「かかれ! 足板をかけよ!」
すると、地下から声が響く。
そして、瓦礫に足板がかけられていき、段々とスロープが形成されていく。
道が出来上がった所から、軍勢が現れる。
陣頭には、豪華な甲冑を身にまとった女が馬に跨っていた。
「く……あれは……」
「狙うは敵総大将の首ただ一つ! このカレン・ノージリアに続け!」
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