策の限りを尽くして
「報告! 南門にて敵総大将を確認! サナン様の差配を目にし、すぐさま退いたとのこと!」
「報告! 西門優勢! 暫くは投石機の援護は必要ないとのこと!」
「ご報告申し上げます! 北門、若干の劣勢! 暫くは持たせられるが、援軍、もしくは投石機の援護があればありがたいとのことです!」
「東門優勢! 敵はスキルを使えない事もあり、魔族に恐れをなしており、士気が低いようです!」
次々と報告が舞い込んでくる。
本丸の内側、今は使用されていないかつて王家が居住していたという城内にてフィアナはひたすらに指揮を執っていた。
「南門、西門、了解しました。引き続き戦闘を継続してください。北門には援軍を送ります。それまで持たせるように伝えて下さい。東門では魔族を城壁の上に立たせるようにしましょう。ことと次第によっては、佐切様の用意した策ではありますが、ハーピーに空から石でも落としてもらいます。体の大きい種族には直接石を投げてもらっても構いません。その為の道具もありますから、キサラさんには自由に使ってもらって構わないと伝えて下さい」
フィアナはテキパキと指示を下す。
その様子に、カレンは感嘆する。
「流石ねぇ……私は佐切の采配見たこと無いけど、それに迫るんじゃない?」
「いえ、私はまだまだです。将棋やチェスという戦争を模した戦略ゲームを佐切様とやりましたが、一度も勝てませんし」
佐切はフィアナに戦略ゲームを教えていた。
一人でもやる事が出来る物だったので、佐切がいない間はフィアナは一人二役でひたすらに腕を磨いていた。
つまり、一度も勝ててないというのは一人で鍛錬を積む前の話で、今はそれ以上の実力があるという事である。
「へぇ……今度私もやってみたいな」
「勿論やりましょう。……この戦を乗り切れたら、ですが」
「所で、他にも策はあるの? 投石機だけじゃ物足りないんじゃない?」
「そうですね。勿論ありますが、あと少し時間が欲しいんです。それにその策は最後の策。本丸が破られ、残るはこの城。そうなった時の策です」
「そう。今日中には民は皆、城の隠し通路を使って遠くに逃げられるだろうし、その後の策って事ね」
「はい。……カレン様もお逃げになられても良いのですよ? ザイル殿もそれを望むでしょう」
「いえ、私はここに残ります」
カレンの眼差しは覚悟を決めたものであった。
「ここで私達が負ければこの戦争自体が負けです。この諸王国連合軍が敗北すれば、二度と諸王国が集う事は無いでしょう。ならば、ここで最善を尽くします」
「そうですか……なら、何も言いません。お力をお貸し下さいカレン様。貴方様がいるだけで、兵の士気は上がりますから」
「ええ! 勿論よ!」
各門は優勢を辛うじて維持できている。
しかしいずれ突破される事は明白であった。
フィアナが策の限りを尽くしたとしても、勝てる保証は一切無かった。
(私も……覚悟を決めないとね。佐切様……)
フィアナはカレンの覚悟を見て、自分自身も覚悟を決めるのであった。
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