南門にて
「来るぞ! まだだ! まだ引きつけろ!」
俺の守る南門。
そこに敵の大軍が盾を構えて進軍してくる。
しかし陣形と言える陣形はなく、バラバラに、戦功を挙げんとしているのか我先にと足並みを揃えず進んでくる。
「今だ! 矢を放て!」
俺の指示で矢が一斉に放たれる。
「ぐっ!」
「がっ……」
致命傷に至る攻撃は少なかった。
しかし、陣形を形成していなかったことで、敵は横ががら空きである。
多くの敵兵は第一射で足を遅らせた。
「まだだ! 進み続けろ!」
「怯むな!」
「ようし……今だ! 起動しろ!」
俺は手を上げ合図をする。
すると、後方から大きな石が飛んでくる。
「な!?」
「投石機だ! 喰らえ!」
フィアナの策。
それは、一生懸命時間稼ぎをして作っていた投石機の使用である。
本来ならば自分達の街が壊れることから第一壁で使うものだが、敵が来たと分かった時から、本丸へ急いで移動させたのだ。
この状況で自分達の街が壊れることを気にしている場合では無い。
それに第一壁では防衛面積が広く、投石機の弾幕が薄くなってしまう事を危惧したのだ。
そして、迅速に投石機を展開し、射出出来るように、本丸の内部には投石機数十台が回転式の台座に置かれている。
迅速に要請された場所に射出出来るのだ。
「よし! 効果は絶大だ! 矢を放ち続けろ!」
「くっ……退け! 退け!」
「いいや退くな! 攻め続けよ!」
すると、馬に乗った大男が現れる。
「この投石機の数、稼働可能な物は全てこちらに向いていると考えられる! 今我々が引けば他の所へ投石機が行くぞ! 怯まず攻め続けよ!」
「出たな……敵軍総大将、ドルーガ! ジョバンニさんやロームさんの師匠!」
「やはり……師匠が総大将なのか」
俺達は畠山義和から敵の情報を聞き出していた。
そして、ジョバンニの不安は的中したようだった。
「師匠? ジョバンニさん、知っているんですか?」
「あぁ……フィアナ殿が佐切殿に戦略を教わったように、私もドルーガ殿から戦略を教わった。その戦略の知識……その能力は佐切殿にも及ぶやもしれん。いや、実践を重ねている所を考えると、佐切殿より手ごわいだろう」
「そんな……」
明らかにフィアナは肩を落とす。
相手がそれだけの強敵だというのは、フィアナには重荷だ。
「安心しろフィアナ。ここには歴戦の将が沢山いる。なんてことは無いさ」
「サナンさん……」
「うむ。負けるつもりはない。だが一つだけ覚えておいて欲しい事がある」
ジョバンニは少し考えると、こういった。
「あの人との戦では、うまくいっているときほど、掌の上で踊らされていると思え」
「奴に集中して矢を浴びせろ! 投石機は届かない! 矢で仕留めるんだ! 決して討って出るなよ!」
「何故です!? 矢もギリギリの距離……今が最大の好機です! 討って出て……」
「良いから攻めるな! 奴は危険だ! 投石機で近寄ってくる敵を狙え! 矢は奴を狙え! 良いな!」
俺の指示している様子を見て、ドルーガは声を上げた。
「ほう。俺の事をジョバンニ辺りから聞いたか。なら、無駄か。俺は退くがこのまま攻め続けよ。良いな」
「し、しかし……」
「……攻め続けよ、と言ったぞ」
「……は」
ドルーガは踵を返してその場を去る。
「……奴め。勝機を目の前に出して城門を開けさせようとしたか。侮れんな……総員! 気を抜くな! 事がうまく進んでいる時こそ注意せよ! それは敵の罠の可能性がある!」
やはり一筋縄では行かない、か。
気を抜けないな。
では、評価や感想ブックマーク等お待ちしております!