ゆるふわ設定って書いてあったのに、全然ゆるふわな世界じゃなかった
気が付くと俺様は真っ白な部屋に居た。これから婚約者に冤罪を着せて男爵令嬢と結婚してハッピーハッピーになる予定なのに、知らない場所にワープして、むっちゃ怖い。
「やっ」
「ヒィッ!」
部屋の中央には知らない女が居て、こちらに向かって親しげに手を上げて声を掛けてきた。
「こんちゃ、ギルティ君」
「何だ女ぁ!?俺様は王国の第二王子ギルティ様だぞ!?ここはどこだ??!テメエが俺様をこんな所さんに拉致したんなら国家権力が黙っちゃいねーぞ!?」
知らない相手から声を掛けられて凄く怖い。舐められたら終わりと思った俺様は、取り敢えず身分を示してビビらせる事にした。
「ここはどこだぁ!教えろ!もし怖い場所なら教えずに帰り道まで俺様を連れていけ!」
「ここは五分前につくられた世界の五分前だよ」
「は?は?は?は?意味が分かんね~!?」
謎の女の口から謎の言葉が漏れる。何だよ!マジおしっこしてえ!
「ほら、クッソつまらない適当に作った作品に、『五分前に作られた作者と主人公の為だけに都合の良い世界でちゅかあ〜?』って煽りが感想欄に書かれる事あるジャマイカ。この作品はそこから生まれたんだよ」
「な、な、な」
俺様は顔が真っ青。何を言われているかさっぱりだが、何だか絶望的な話を聞かされたと思った。
「だからギルティ君が婚約したのも浮気したのも世界のスタート時点で既にあった事として確定してるんだ。君は愚か者の18歳としてこれからこの世に生を受ける0歳児なのだよ」
「ああああ、分かんねえー!殺すぞ!いや、お前を婚約破棄すんぞ!」
恐怖が限界に達した俺様は女に婚約破棄を突き付けた。公爵令嬢に使うとっておきだったが、身の危険を感じて使ってしまった。だが、俺様の婚約破棄を受けても女は平然としていた。
「がああああ!何で婚約破棄が効かねえんだよ!真実の愛だぞ!」
「ごめんごめん、どんな読者様でも安心して見下せる馬鹿として作った君にメタな話をしても分かるはずも無かった。君のレベルに合わせた話をしよう。ウィー!」
女は腕まくりをして片手を上げて叫ぶと部屋の壁や天井や床や空中に沢山の扉が現れた。
「な、なんじゃこりゃー!?」
「パンパカパーン、ギルティ王子様おめでとうゴザイマス。貴方様はこれからの未来を自由に選ぶチートを手に入れましたー」
チート?俺様に?分かる!今ならこの女の言葉が分かるぞ!俺様がチートに目覚めたんだな!
「未来を選ぶチートだと?!ありがたく貰ってやるから契約書にサインさせるぉ!俺様は契約書のサインが得意でな!一行目を読み終わる前に名前を書き終わる事が出来るんだ!」
「はいはい落ち着いて下さい。契約書なんて必要ありません。ギルティ殿下、この扉の一つ一つが別の未来に繋がっており、貴方様はその中から好きな未来を選べるのです。扉にはそれぞれキーワードが書いてあるでしょ?そのキーワード通りの未来が扉の先で待っているとお考え下さい」
す、すっげえええええ!!俺様の時代が来たぞコラ!良さげなキーワードの扉を開けば未来はバラ色確定って事じゃねーか!
「あんがとよネーチャン!それじゃあせっかくだから俺様はこのゆるふわ設定を選ぶぜ!アバヨ!」
俺様はゆるふわ設定と書かれた扉を選ぶ。ゆるふわって…素敵ですやん?
だが、扉の向こうは地獄だった。卒業パーティで婚約破棄した俺様は何でか知らねーけど国を滅ぼす原因と呼ばれ火炙りになった。
「アギャアアア!!!」
自分の肉が焼ける痛みに気を失うと、目が覚めたらあの部屋に居た。
「ギルティ君お疲れちゃん。ゆるふわな世界はどうだった?」
「よくもだましたな!?」
俺様は女に掴みかかる。トーゼンの権利だ。
「ぜんっぜんゆるく無かった!ぜんっぜんふわっとして無かった!世界観がゆるふわなら火炙りしねえんだよ!」
「落ちつきたまえ。もしかして君はゆるふわ設定を子供向けの絵本の様な話と思ってないか?」
「ち、違うのかよ!?」
「ゆるふわ設定とはね…、作者が細かい部分の設定何も考えずに世に送り出した作品なので謎な部分は各自脳内補完してね!というキーワードなのだよ」
「なにぃ!?」
騙された事を知った俺様は崩れ落ちる。俺様は勘違いにより自分から悪い未来へ飛び込んでしまったのだ。
「残念だったねえ。だが、安心したまえ。君はまたこの部屋に来れた。また別の未来を選ぶ権利を得たのだよ」
「もう一回遊べるドン!今度はコレだ!ざまぁ無しの扉だ!」
ざまぁ無しなんだから、ざまぁ展開は無い。そう思っていた時期が俺様にもありました。
婚約破棄した俺様は(中略)火炙りになって白い部屋に戻って来た。
「お帰りモルモット…じゃなくてギルティ君。ざまぁ無しの世界はいかがだったかな?」
「ざまぁはあった!また火炙りだ!こんなのキーワード詐欺だろ!?」
「違う違うそうじゃない。ざまぁ無しというのはだね、ざまぁの描写を一行か二行の説明で済ませるという意味なのだよ。ほら、(中略)されていただろ?あれがざまぁ無しなのさ」
「俺様は、また、間違えたのか…」
「でも、ここなら?」
「未来は俺様の手の中!次の扉はこれっ!勧善懲悪!」
俺様は考えた。婚約破棄が悪い事として裁かれるのはもう認めるしかねえ。ならば、せめて罪に見合った罰に留まらせる!
ハイ、俺様灰になりました。
「おかえりんこ」
「ただいまんこ。ねえ、婚約破棄が罪だとしても火炙りは重すぎねえ?勧善懲悪をキーワードに入れるなら罪に見合った罰を用意するまでがセットだろ?」
「勧善懲悪のキーワードがある作品はね、罪に見合った罰を用意するんじゃあない。僕の考えた最高の罰に見合う様にクズキャラに罪を上乗せしていくのさ」
言われてみると、あの未来での俺様は婚約破棄の他に横領とか色々やっていたと言われてた気がする。
「まあ終わった事は忘れなよ。君には別の未来があるジャマイカ」
「おう!次はこの軽作業の扉をくぐるぜ!」
そして、俺様は婚約破棄のせいで廃嫡され、鉱山でのキヅイ肉体労働でフラフラになった末に、山火事から逃げ遅れて火達磨になった。
「これのどこが軽作業だ!」
「軽作業とは、重機を使わない手作業の労働であり、引っ越しの手伝いや荷物運搬等が該当する。クレーン等の重機を使うのが重労働と呼ばれており、肉体への負担だけなら軽作業の方が辛いケースも多々あるのだよ」
「だとすると、鉱山労働は軽作業だな!チッ、次こそは幸せになってやる!この駅まで十五分のキーワードでな!」
俺様は廃嫡され駅から凄く遠い山奥でまたもや鉱山労働をしてまたもや火達磨になった。
「駅までの距離、絶対に間違っている!」
「キーワードのどこにも徒歩で駅から十五分とは書いてなかっただろう?最寄りのバス停からバスで十五分という立地だったのさ」
「クソがっ!なら、こっちの主人公最強の扉だ!」
この世界のルールの事が段々と分かってきた。これは多分、俺様の一人称視点の物語なんだ。だったら、この主人公最強の未来なら燃えてもノーダメだろ!俺様頭いい!
「ダメージカンストした!!」
「この物語の主人公は私なのだよ。私がホームズで君がワトソン」
「ちくしょおおおお!」
「お、おい!ここは後書きじゃねえか!俺様はあの後どーなったんだよ!」
「君がちくしょおおとコウメ太夫したシーンでこの話は終わりだよ。ギルティの末路がどうなったのかは各自考えてくれたまえ」
「む、無責任!」
「だってほら、この話はゆるふわ設定ですしお寿司」
「ズッコー!」
ザ・エンド




