監禁生活 with お姫様
「お兄様、帰りました」
かくらが学校から帰ってきた
「お帰り、かくら」
「はい・・・・・・それはそうとなんでお母様はお兄様を抱いて気絶しているのですか?」
「それは」
一蘭は本当の事を言うか迷った。けやきに襲われたと言えば、かくらがけやきに噛みつくのは火を見るより明らかだ
「!!!」
そこでかくらは気がついた。一蘭の全身に、むせかえるほどけやきの匂いが付いている事に
「お兄様・・・・・・? どうして断らなかったのですか?」
(わぉ、かくら姫様が激おこです)
目に嫉妬の炎を宿しながら、かくらは一蘭にゆっくりと近づいていった
「・・・・・・なんで?」
かくらは自分の匂いで上書きしようと何度も一蘭に抱きついたがいっこうにけやきの匂いは落ちない。全身くまなくキスを繰り返す、もしくはそれを超える行為という発想はまだ小学一年生のかくらには早すぎた。彼女の性知識では限界があった
「むぅ。もういいです」
かくらは匂いの上書きを諦めて、一蘭の手を握って温もりを感じた
(かくらはかわいいなあ)
どこで覚えたのか恋人つなぎを恥ずかしながらやってきた。一蘭はそんな可愛らしい様子を見て、ほほえんだ
「お、お兄様は・・・・・・」
すると突然かくらが話し始めた
「お兄様は私が他の人と結婚したら、どう思いますか?」
「どう思うって・・・・・・ああ冷泉要君のことか」
「はい」
実はかくらと要の交流はそこそこ続いていた。公言はしていないものの、要はかくらをキープできたと周りは考えている
「僕は寂しいなあ」
「え」
かくらはその返答に驚いた。自分から聞いたにも関わらず、彼女の中で勝手に一蘭は送り出すだろうと答えをだしていたからだ。かくらが覚えている限り一蘭が感情的な態度を見せたのは、たった一度だけ、山での修行の事故の後かくらが駄々をこねた時、本当にその一度きりであった。故に今回も一蘭は感情論を抜いた事実を言ってくれると思っていた
「お、にいさま、わだじ、わ゛だじは・・・・・・」
しかし、一蘭はかくらの質問に“寂しい”と返してきた。一蘭からの返答で吹っ切りをつけようと思っていたかくらは当てが外れた、と同時に本心を抑えきれなくなった。かくらは涙や鼻水で顔がびしょびしょになった
「でも」
そんなかくらを落ち着かせる様な声で一蘭はかくらに声をかけた
「それで会えないわけじゃないでしょ? 僕だっていつかは結婚するのだからいつまでも一緒にはいられないよ。でもね、別にそれでもいいんじゃないかな」
「?」
かくらには理解ができなかった。離れるのが寂しいと感じてくれるのに、なぜ自分と離れるのをよしとするのか
「別に兄と妹の2人で会うのは誰からも言われないでしょ?」
一般的に、結婚してパートナー以外の相手と会うのは不貞と言われる可能性がある。しかし家族くらいは許容範囲だといえる
「バレなければね」
一蘭はいたずらな笑みを浮かべて言った
「お兄様・・・・・・今日のお兄様はいじわるですね」
止まらない涙を流しながらもかくらは笑った。ころころと表情を顔に出す一蘭が珍しくて、そんな戯けた一蘭も大好きだと感じながら・・・・・・




