監禁生活 with こと
一蘭が撫子に渡米の計画を伝えて皇居から戻った後
“4年生になったら2年間アメリカに留学したいんですよね”
一蘭がさらりと言ったこの一言で日常が壊れてしまった
『あ、あばばばばばばば』
けやきは頭がパンクし
『お兄様、なんで・・・・・・なんでなんでなんでなんでですか?』
かくらは頭を抱えて蹲り
『ねえ一蘭ちゃん? そんなに私が役に立たなかった? ごあめんなさい、そばに居させてください。お願いします』
ことはヘラってしまった
『心配をかけてしまうのは分かっています。でも一度でいいから外に出て挑戦してみたいんです』
・・・・・・・・・・・・
そして今のガチガチの監禁状態にいたる
一蘭はこうなる事は予め想定済みだった。そしてこの後自分が束縛されるだろうことも
(渡米は僕の私欲だからなあ。向こうが落ち着くまで僕も相手のなすがままになるか)
“ちやほやされたい”という不純ともとれる志でアメリカに行くことを決めた一蘭は、自分の我儘を通すために自分も相手の拘束を受け入れようと考えていた
(3人も時間が経てば心に余裕ができるはず、本格的な話し合いはそこからかな)
けやきもこともかくらも今は一蘭とまともに会話できる状態ではない。日常生活は無問題だが、そこに一蘭が加わるだけで思考が狂ってしまう
(身体の自由が効かないと”気”を捉えるしか無くて、そうすると自然に感覚が鋭くなっていってるな)
一蘭は遥か遠くのけやきの気配を捉えた。元々広かった一蘭の索敵範囲(けやきは敵ではないが)は1.5倍にまで広がっていた
視力や聴力を失った人物は代わりにある一点に才能が宿ることは歴史的にも多く見られる
目が見えなくても聴力を失っても楽器を弾ける人、触れただけで動物と心を通わせられる人など様々だ
今回で一蘭は後天的、ある意味人為的に気を操る感覚が鋭なっていた
(よいしょっと)
両手両足が使えなくても一蘭は体幹と体のバネだけで移動ができる。一蘭はそのままエビのように飛び跳ねてことのもとに向かった
「一蘭ちゃん? お水?」
「お手洗いです。それじゃあ水も飲もうかな」
ことは家族同然となっているため一蘭が敬語を使う事も少なくなってきた
「お水は持ってくるからちょっと待っててね。それともトイレの方から行く?」
「先にトイレに連れて行ってもらっていいですか?」
「はーい♪ それじゃあ抱っこするわね」
当然だがトイレもお風呂も誰かがついてくる。そこに妥協は一切なかった
(物語とかなら都合よくカットされているんだけどな)
流石に入浴時と排泄時は手足の拘束は外される
彼女達は一蘭の自由を根こそぎ奪いたい訳ではなく、自分たちのもとに繋いでおきたいだけ(?)なのだ
窓もドアもないお風呂やトイレまで鎖で縛る必要はない。それに一蘭が自分達を拒絶して逃げるはずなどない事も彼女達は理解している
それでも彼女達が一蘭を束縛して止まないのは半分は過剰な不安から、そしてもう半分は潜在的な嗜虐心。完璧な一蘭が自分なしでは何もできない様子に心くすぐられ、興奮してしまっていた
(僕もデレデレに甘やかされるから実は役得だったりして)
この彼女達の異常な癖は一蘭が誘発したものでもあった。この際に甘えられるだけ甘えてみようと試みたのだ。結果は想像以上になった。一蘭が何をしても彼女達から尋ねられる。そして一蘭自身の口から助けを乞わないと彼女達は動かない
「うがあー」
一蘭は固まっていた体をほぐすために大きく背伸びをした。しかしこれからまた数時間繋がれることになる
(まあ一年を見据えた長期戦だからボチボチ頑張るか。セリエのストレス反応の傾向はまだ見えてないよな? 一度今の状態を3人に聞いてみるか)
監禁による精神異常をなぜか当の本人が気にするとは変な話である
「あっ一蘭ちゃん。はい、お水をどーぞ♪」
「ありがとうございます」
「うんうん。それを飲んだらおててを出して?」
「ん、どうぞ」
「♪〜」
ことはそういって一蘭を縛り始める
「一蘭ちゃんごめんね。少し痛いよね? もう少し良さそうなのを探しているんだけどね、なかなか見つからないの」
「そうですね。今のはちょっとゴツいです」
もはやこの状況でこの会話ができる一蘭の方が狂人である
「今はこれしかないのよ・・・・・・よし、できたわ。それじゃあ抱っこするから腕あげて?」
「はい」
「♪〜」
(相変わらず大きいなー)
ことの胸の大きさを確かに感じながら一蘭は運ばれて行った




