表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/125

複雑怪奇

ちとせは今、人生で最も緊張していた。この事がバレれば一大スクープどころではない


そこは日本で最も神聖とされる場所であり、限られた者しか入れない秘匿中の秘匿・・・・・・


ちとせは今皇居の中にいた


(なぜ? 臣籍降下した中本家が再び皇族に近づいた事が露呈してしまうと確実に様々な噂が飛び交う。それは天皇の信頼を失うことに繋がる場合もある。当然向こうもわかっているはず)


この世界も象徴天皇制の現代社会である。朝廷が政を行う時代はとうの昔に廃れているので一条家も含め、歴史上公家であった家も天皇に近づく事はなくなった。権力的な面から近づく必要がなくなった事もあるが、皇族と貴族が離れたのにはもう1つの理由がある


それは血の問題

所謂近親相姦を繰り返すことで、血が濃くなって遺伝子の多様性を獲得できず、ウイルスや病気に勝てない病弱な子どもができたり、障害のある子どもができたりする可能性が高まるといわれている


しかし、この世界では男女比1:10の問題を和らげるために、近親相姦から起きる遺伝子の問題が解決されている


これによって皇族は一族内で子孫を残すことが可能となった


血を濃ゆく保つ事は天皇の権威を保つ事に繋がる。世の中が変わってもトップとなる王族(皇族)が変わらないのは稀であり、今の日本はそれが2600年以上続いている。当然世界で1番長い歴史を誇る王族(皇族)であり、象徴とはいえその存在は世界的に無視ができない。どこの国も天皇には敬意を払う姿勢をとっている。天皇家の血の濃さが一定を保たれることは現在もなお天皇家が続いていると解釈できる1つの分かりやすい基準である


そんな閉鎖的な世界に外の世界を自由に飛び回って血筋なんて気にしたことのない中本家が入るなど通常なら考えられない


(それに閉鎖的過ぎて中の勢力なんて分かったものではありません・・・・・・勘に頼るしかありませんね)


天皇1人に対して妃は複数人、対外のために皇后が1人いる。その中から発言権が強そうな人を探していざという時はその人に頼る必要があるとちとせは考えた


妃が複数人いるのは何もおかしい事ではない。この世界では一夫多妻制は合理的とさえ言えるからだ

この男女比1:10世界で人類が滅びないのは男は1人で精子をばら撒けば人口を維持することなど容易であるからである

故に天皇の仕事は”ストック”も合わせて男の子を数人”用意”する事である。”ストック” ”用意”はとても人に使う言葉ではないが、実際その通りである。あえて悪く言うと、日本で唯一人権がない人達・・・・・・それが皇族である。彼らは人民ではなく国の象徴である。天皇家を存続させることが天皇の存在意義である


(天皇の方からの申し出でしょうか? それとも妃の方から? どちらにせよ呼ばれた理由が分かりません)


周りに皇后がいる中、謁見の場の中央に座らせれているちとせはこの場を切り抜けるために様々な事を想定した。すると


すだれの奥に音もなくやってきた


音もないのになぜ来たことが分かったのか。それは支配的ではない気配がその場を支配したからである。異常で矛盾した状況、そこからちとせは天皇が来たと推測した


「そう固くならないでほしい。私達は親戚同士であると思っている。それに私はまだ未熟者であるため」


これにはちとせだけでなく周りにいた妃、側仕えも驚いた。この世界で天皇が直に話しかけるなど異例も異例である


(未熟者・・・・・・確か14歳でしたね)


「今はきちんとした場ではないので要件だけを伝えるとする。ああ、そちらも直に返答していい」


「畏まりました」


「そなたの孫に会って話をしてみたい」


!?


またその場に驚きと困惑が広がった


外交を除いて、祈祷と子孫を残す事以外ほとんど許されないこの閉鎖的環境でなぜ一蘭の事を知っているのか皇族も含めて誰も分からなかった


「内容承知致しました」


ちとせはその疑問を全て飲み込んで返事のみ行なった。ここで拒否などできない。理由を尋ねるのもどうなるか分からない。この流れに逆らわない留まらないことがこの場でできる最善策だと考えた


「1週間後をあけておいた」


天皇はそういって(おそらく)去っていった


・・・・・・


謁見はほぼ一瞬。様々なチェックを受けた事を合わせても全体で2時間も経っていない。しかし、ちとせは相当疲れていた


(今からけやきに、あと一蘭も同席させて説明を・・・・・・それから・・・・・・しかしそれだと・・・・・・)


行きと同様厳重な秘密体制の中で送り出されながらちとせはこの件について思案を巡らせた


(はぁ)


色々考えた結果、今回の事は理解できないということが分かった。そこでちとせが出した案は


(もう全部一蘭に任せましょう。あの子ならばどんな事でも対処出来そうな気がします。それに下手にあれこれ口を出せば、向こうの意思に反してしまうかもしれません)


一蘭をただ信じることだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ