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小中学校の代わりとなる塾はずっと受験勉強する場所ではない。カリキュラムに遅れがない限りかなり自由に過ごせる。大抵は他の子と一緒にゲームやスポーツをして遊ぶ。しかし、一蘭の場合は、周りの大人が一蘭をガードして人目をことごとく遮っている。また、一蘭自身もこの世界の男子の性格や気質が好きではないため付き合いを避けている。そのため一蘭はこの塾で子供らしい遊びを一切していない。受験勉強をしない時も、詰将棋や魔法陣(数学)など1人でできる頭を使う娯楽で自分を磨いていた


「・・・・・・」


教材Aを50ページ読んで閉じる→次の教材Bを50ページ読む→前の教材Aの50ページ分を思い出して書き出す→更に教材Cを50ページ読んで閉じる→前の教材Bの50ページ分を思い出して書き出す→・・・・・・


その教材は小学校レベルの図鑑から大学の講義で使う教科書、論文レベルまで様々だ


この学習訓練の目的は高速で処理した情報を維持して思い出すことと、処理する内容を瞬時に切り替えることである


(僕の情報処理能力は確かに高い。けどそれを長期間覚えておいてアウトプットできなければ意味がない。あとは手を動かす速さを脳の速度にできるだけ近づける必要もあるしな)


極端な例を以下にだす

超高速演算をできるコンピュータがある

しかし、そのコンピュータは演算結果をモニターに表示するまでにすごく時間がかかる

さらに、表示した演算結果を保存する事ができない


『このコンピュータが優秀か?』と問われれば多くの人が『NO』と答えるだろう


生まれた時、前世を思い出した時、柳の血で蘇った時、いつのタイミングからかは分からないが一蘭はスーパーコンピュータを超える処理能力を手に入れた。しかし、その能力を現実に素早く出力したり記憶したりするスキルは努力して磨いていくしかない。今一蘭がやっているのはその練習である


「・・・・・・」


ひたすら読み込む→書き込む

“読む” ”書く”で使う全ての筋肉の動きを最小限に済ます


「・・・・・・」


一蘭が全神経をもってこの練習に励んでいる横で、そんな一蘭の姿を全神経を使って目に焼き付けている人物がいた


(その目! その目よ一蘭ちゃん♡)


西園寺ことである


「・・・・・・」


(こと先生はいつも気持ちいい視線送ってくれるなぁ)


実はもう終わっている一蘭は、ことの視線を感じるためにしばらく真剣に取りんでいるフリをしていた


しかし、


「あ、一蘭ちゃん終わったのね。お疲れ様!」


!?


(なんでバレたんや)


最近では柳でさえ一蘭の”気”を捉えることが困難になってきた。しかし、ことは修行を積んでいないのに一蘭の心の内を読んだ


「ごめんなさい、実は少し前から終わってました。先生は全部お見通しですね」


一蘭は何故バレたのか探ろうとした


「一蘭ちゃんの目を見れば分かるわ」


ことは、一蘭に嘘が通用しない事を分かっていた。一蘭の方こそ全てが見通せていると思っていた。だから彼女は本当の事を言って一部を隠した


(いつも一蘭ちゃんの事を思い浮かべて妄想しているからなんて言えないわよ。それに、瞳が変わるのは本当だもの)


一蘭が本気で集中する時の目には何かが宿る。ことは、この時の瞳に魅了されて一蘭の虜になった。ことは気配など感じられないが、一蘭のその目だけは絶対に見逃さない自信がある


「あはは、じゃあこれからサボることも出来なさそうですね」


一蘭は茶化して返したが、心の中では謎が深まっていて混乱していた


(嘘をついている気配はない。だとしたら本当に瞳・・・・・・今度師匠に聞いてみるか。あ、師匠と言えば)


「僕は明日の塾をお休みするので課題を出してもらって大丈夫です」


「え!?」


「え?」


一蘭が明日休む事を知らなかったことは驚きの声をあげた

一方の一蘭は、ことが知らなかったことに驚いた


「いつも午前にやっている習い事が明日は1日かかるので休むって母から聞いてませんか?」


「・・・・・・そ・・・・・・うなの。ま、まあ明日1日ならなんとかなるわ! 耐えるのよ西園寺こと!」


「ん?」


「あ、ごめんなさいこっちの話よ。明日の用事は外せないのでしょ? 課題もなしでいいわ。最近の一蘭ちゃんは詰めすぎて少し不安だったからちょうどいい息抜きにしましょう」


「なんかすみません」


「い、いいのよ・・・・・・はっ! そうだ! 今から仮眠を取るのはどう? 私は明日のお休みの手続きとかを下でやってくるから」


「え、仮眠ですか? そんなに疲れてはない・・・・・・やっぱ仮眠します」


一蘭は急に仮眠を促されて戸惑った。疲れてないからと断ろうとしたが、ことから絶望のオーラが出かけていた事を察知して大人しく従うことにした


「よかった! じゃあ下で明日の手続きしてくるから待っててね」


そう言って部屋を出ていった


(バレるはずがない。バレるはずがない。バレるはずがない。バレるはずがない。バレるはずがない・・・・・・)


教員室に着いた彼女はパネル操作で明日の授業のキャンセルを入れて、もう一つ横のボタンを押した


“清掃不要”


一蘭に仮眠を取らせたのは、ベットに残った匂いを嗅いで一蘭に会えないのを我慢するため


職権濫用もいいところ、どう考えても犯罪である


(ごめんなさい)


ことは誰に対してか分からない謝罪をした


完了ボタンを震えている指で押した



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