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正直者は・・・・・・

後輩ちゃん達に近づいていくその存在は、


一方からは”会社の華” “王子様”と呼ばれ


もう一方からは”会社の癌” ”寄生虫”と呼ばれている


そんな相反する呼び名を持っているのは、この会社に家柄と男というだけで入社できた、この世界の典型的な勘違い野郎である


「やあ」


そんな彼は社内では、爽やかな顔をしている


「は、はい! 何ですか!?」


男は複数の女を連れたハーレム状態で後輩ちゃんの元へ行って話しかけた


「君、最近調子がいいんだって?」


「え、いや・・・・・・前よりは結果が出ていますけど、それでもまだまだです」


「いや、そんな事ないさ。君はもう十分やっているよ」


男は顔を近づけて後輩ちゃんに迫っていった。彼のハーレムメンバーが後ろで面白くなさそうな顔をしている


「でも、そうだな。君が結果に満足していないのなら・・・・・・1つ素晴らし提案が僕にはあるんだ。聞くかい?」


「ほんとですか!?」


後輩ちゃんは今までずっと勉強をしてきたので男がどんなに酷い性格をしているのか体感したことがない。ゆえに、素直に反応してしまった


男は待ってましたと言わんばかりに胸を張って言った


「君のアカウントを僕にくれたまえ。僕の魅力があれば、きっと今より多くの影響力を持つようになる。そうだな・・・・・・まずは僕の経歴から紹介しよう。その肩書きに多くの女性が惹かれるはずさ」


男は自信を持って言った。フォロワー数が飛び抜けて多いアカウントを持つ女性が社内にいると聞いて真っ先にこの事を思いついた


(アカウントが手に入れば僕は一瞬でスターになれる。こんなすごいアカウントは2、3行の感想しかかけない女には勿体無い。僕の写真を載せた方が確実にいいに決まっている)


更に男には考えがあった


「どうだい? 素直に譲ってくれたら僕の記事を書いてアップロードする権力もあげるよ? 僕と一緒に仕事ができるんだ、嬉しいだろう?」


(この女がこれで素直に渡せば、この女に仕事を丸投げできる。もしアカウントを渡さなかったら親に頼んで圧力をかけて貰えばいい)


この男は外面はよくても内面は最低、この世界の男性基準からしても酷い方である


(((・・・・・・後輩ちゃん、ごめんなさい)))


後輩ちゃんと一緒にランチを楽しんでいたメンバーは心の中で謝った


働く女性は、男性から仕事ができると評価される事はとても嬉しいことであった。後輩ちゃんが今のように声をかけられたのならば、祝福しただろう、そして少しは嫉妬しただろう・・・・・・ただ今回の場合は少し違った。これが他の業務ならば、男に手柄を譲るように言っただろう。女が頑張って、男に手柄を譲る。それで成果を出し続ければ、ご褒美が貰えるかもしれない。この世界では割と一般的な考えである。更に、入社の条件が厳しい大企業では男は一部署に1人いればいい方である。故に男性に対する競争倍率は非常に高く、チャンスは滅多に転がってこない


しかし今回譲るように言われた仕事は、後輩ちゃんが全身全霊を傾けて働いた末に手に入れた初めての成果であった。後輩ちゃんの同僚達はその頑張りを目の前で見てきた。今までもボロボロになりながら働いていた後輩ちゃんが更に自分の体に鞭を打っている姿を常に見ていた。けやきが裏で後輩ちゃんが集中できるように、邪魔が入らないように環境を整えて続けていた事も実はバレていた。そんな2人で成し遂げた一大プロジェクトをそう簡単に譲れる訳がなかった


「ちょっと、折角話しかけてくださっているのにダンマリはないんじゃない? 早く渡しなさいよ!」


後ろにいるハーレムメンバーの1人で、社内でも有名なお局様が迫ってきた


「あ、あの。それは中本さんとのプロジェクトなので立場的には中本さんの方に行ったほうがいいと思います!」


後輩ちゃんの先輩の1人が勇気を出して声を上げた


「ん? なんでだい? 別に僕はその仕事を取ろうとしているわけではないんだ、ただそのアカウントを僕に渡して欲しいから彼女に話しかけているんじゃないか」


「そのアカウントもプロジェクトの一部なので・・・・・・」


「冗談は辞めてくれよ、SNSは娯楽だろ? 遊びが仕事なんてあり得ないでしょ、違うかい?」


「ぇっ・・・・・・」


続けて声を上げた女性に男は脅すような声音で質問した


相手は上層部の中でも力を持つ家の息子、後ろには自分達より業績が上のハーレムメンバーが睨んでいる、この状況でこれ以上後輩ちゃんを擁護すると明日には居場所が無くなってしまうかもしれない


「・・・・・・」


(((後輩ちゃん、ごめんなさい)))


未だ黙っている後輩ちゃんに謝った


「僕の時間は貴重なんだ、早く渡してくれ」


「それなら・・・・・・」


(ちょれ〜)


男は後輩ちゃんがアカウントを渡すことを確信した


しかし・・・・・・


「質問していいですか? 渡してどんな効果が得られるのかいまいち分からなくて? 今の話だと損失の方が大きいと思うんですよね。私が何か見落としていると思うのでずっと考えていたのですが、時間が押しているようなので直接答えを教えてもらっていいですか? 本当にすみません」


(((((((((((は?)))))))))))


この場で後輩ちゃんとあと1人を除いて誰もが思った


もう一度言う

後輩ちゃんは今までずっと勉強をしてきたので男がどんなに酷い性格をしているのか体感したことがない。ゆえに、素直に反応してしまった


そして残るあと1人は


「あははははははは! いいわね、それ。私も分からなかったのよ」


「ちっ、中本けやき・・・・・・」


男はあからさまに嫌な態度を取った


この会社で男よりも自由にしている女、男のハーレムから吸い上げた成果を持ってしてもなお届かない成果を毎月出している女、家の圧力が全く効かない女、それが中本けやきである

当然、この男はけやきのことが嫌いであった


「え!? けやき先輩もですか!?」


「そうね、だから後輩ちゃんが分からなくても仕方がなかったわ」


けやきの登場で形勢は一気に逆転した


「くそっ」


男は騒がずに立ち去って行った。ここで騒いでけやきにプライドをズタズタにされた過去が何回もあったからだ


「あれ?」


後輩ちゃんは本当に素直に首を捻った


「あー、ほらあれよ! 彼らの時間は貴重なの、これからは彼が来たらもっと早口で、できるだけ沢山質問し続けなさい」


けやきは、そんな汚れを知らない後輩ちゃんに適当な嘘を教えた


「それと、あなたのお友達も勇気を出して質問していたわ。仲間は大切にね」


相変わらず言うだけで返事も聞かずに彼女は去っていった


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― 新着の感想 ―
[一言] じゃあ後輩ちゃんはプログラミングもできて母の仕事の手伝いもしてあげられる女性に優しいけやきの息子の異常さを分かってないってコト!?
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