魔性の代償
(えへへ、えへへ)
一蘭は今、大きなメロンに顔を埋めていた
このような状況になっている経緯は・・・・・・
一蘭は柳との食トレを終えた後、塾に向かっていた
(怪我をした日、1日ずっと寝て休んでいた日で2日も行ってなかったから、なんだか久しぶりだな)
そう思いながら受付を済ませて自分の勉強部屋に向かった。そして部屋の目の前に着いたときに一蘭はあることをひらめいた
(こと先生で会得したオーラの実験をしよう)
一蘭は、ことが一蘭に好意を向けている事を利用して、今後のちやほやライフで使うオーラの目安を測ろうとした
そして今
「・・・・・・」
ことは一蘭のオーラにやられて、一蘭を見るや否や無言で抱きしめていた
(うぇ、息が・・・・・・ギブギブ!)
柳の指導で一蘭は、拷問目的の水責め程度ならば平気で耐えられる。ことは、そんな一蘭が窒息しそうになるほど長い間抱きしめていた
「はっ! ごめんなさい一蘭ちゃん」
「大丈夫です。心配をおかけしてすみませんでした」
(メロン・・・・・・なんて強敵だ! もっと堪能するにはもっと鍛える必要がある。修行! 修行! うおおおおおお!)
一蘭は表では平然を装っているが、酸素不足で相当キツい。思考回路も狂っていた
「こうしてまた一蘭ちゃんの元気な姿を見れてよかった」
(この位のオーラか・・・・・・)
一蘭は抱きつかれてからオーラ量を徐々に減らして適正量を測っていた。結果、最初は言語機能を失ってただ一蘭をひたすら愛でるだけであった彼女が今はちゃんとした会話ができている。熱い視線を一蘭に送っているのは変わらないが・・・・・・
一蘭は相手が発情し切らない程度に相手の愛情を揺らす気の放ち方を学んだ
「これからは気を付けます」
「もう私を心配させないでね。じゃあ始めるから席に向かいましょう?」
「はい、よろしくお願いします!」
本来の時間から1時間遅れて授業が始まった
・・・・・・
チック タック チック タック チック タック
(・・・・・・まずい)
一蘭は現代文の答案用紙を見直してある事に気がついた
チック タック チック タック チック ・・・・・・
(ダメだ、考え直す時間がない。これは先生に言って諦めよう)
「こと先生、すみません」
「あら、なあに?」
「今回は現代文の解答をやめて、寸評を見るだけにしてもいいですか?」
「え! 珍しいわね。でも、一蘭ちゃんのことだから何か考えがあるんでしょう。いいわ」
いつも最後まで解き切る姿勢を崩さない一蘭が、『出来ないから答え見せて』と申し出てきたことに、彼女は驚いた
一方、解答をもらった一蘭は何かを確かめるように問題文と自分の解答を見比べていた
(やっぱりそうだ。今の僕の解答はあまりに”自我を出し過ぎ”ている)
現代文は問題制作者の意図に沿って解答を作る能力が試される場であって、作文のように自分の考えを書く場所ではない。現代文は『私はロボットではない』に例えると分かりやすい。画面の中から問われたものをタップするのと同じように、現代文を解くというのは、文全体から出されたお題を選びだしていく作業である
“自我を出し過ぎ”
今までの彼ならば絶対にやらないミスである。従って、原因があの事故にあることは明らかだ
(山での修行で“感受性が豊かになり過ぎ”ているのが原因だな。問題制作者じゃなくて、作者の意図を読み出そうとしてしまっている。これじゃ点数はもらえないわ)
「こと先生、ありがとうございました」
「・・・・・・ハッ! なにか分かったのね、良かったわ」
ことは相変わらず、一蘭が本気で考える時にだけ見せる特別な目に見惚れていた
(これからは脳内で切り替える必要があるな。うがー、めんどくせー)
一蘭は力にはメリット/デメリットがある事を改めて思い知らされた




