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緊張のワケ

<中本ちとせ>

彼女もまた、中本家の血が騒いで先祖達と同様に人材育成を行なっている


中本家の人材育成にはマニュアルなどなく、その人に合った完全なオリジナルをアドリブでやっている。よってその代その代で特色がある


政治家であったちとせの母が育てた人材は、現在の各界の代表として君臨している

一方で、ちとせが育てた人材はその代表を支える幹部、もしくは勢いを持つベンチャー企業の社長や社員として活躍している


ちとせの母が才能の原石を120%に磨いて世に放っていたのに対して、ちとせは70%程で止めて、後は社会に飲まれながら形作ってもらうスタンスをとっている


どちらがいいかはさておき、他の勢力に大きな影響を与えるのは断然ちとせの方である


ちとせのスタンスは1人にかける時間が少なくて済むため、次から次へと才能ある若者を撒き散らす。トップ企業はその人材を逃してしまうと競争相手の即戦力になってしまう。また、ベンチャー企業を起こして、自分の市場に食い込んでくる可能性もある


『『『『ちとせちゃん、お願いだから一言言ってくれ』』』』

パーティーでは派閥、業界関係なしに重鎮が彼女の元に集う


中本家が好き勝手にやって、周りが対応に追われる。これは昔からであるが、ちとせのスタンスはあまりに周りを巻き込みすぎる。周りにとって、ちとせは歴代の中本家の中でもトップレベルの悩みの種だった


変人の中で最も常識があるように見える人が、実は1番ヤバいなんて事は意外と多い


・・・・・・


雅は、そんなちとせの教え子の1人である。彼女は焼肉をここまでビジネスブランド付けた立役者で、今もなお独自の発想で事業を展開している


「味わうことも忘れんようにな。彼女に焼いてもらえるなんて誰もができることではない、全ての肉を揃えさせるためにこの店を貸し切りにするなどもっとできんぞ。彼女がちとせちゃんの教え子でなければ、ここまでのもてなしはされんじゃろう」


「なるほど、雅さんは祖母と知り合いなんですね。改めまして中本一蘭です。中本ちとせの孫にあたります」


「一蘭様、私に畏まる必要はないですよ。ちとせ様には本当にお世話になりました。私がまだ見習いだった時に、『あなたの焼いたお肉が1番美味しかった』と言ってくださったんです。それからも、ちとせ様に様々な事を経験させていただいて・・・・・・”雅”という活動名も、ちとせ様から頂いたものです」


雅は、恩師の孫である一蘭には最大限のおもてなしをすると決めていた。よって彼女が立てたプランではずっと中腰で焼くつもりであった。しかし、柳に座るように誘われてその事が崩れたことで少し動揺してしまった。だが、一流の社会人である雅にとってはそんな動揺は些細な事に過ぎない。ではなぜ彼女が今緊張しているのかというと・・・・・・


「熱いのでお気をつけてください」


「ありがとうございます!」


(はぅ)


師の弟子関係なく一蘭が可愛すぎる為である・・・・・・彼女はショタコンであった


(なんて純粋な笑顔。最近の子はみんな性格が強くて、妄想の幅が広がらなかったので”捗”ります)


ただし、雅はあくまで自分の中で楽しむ。現実で手を出せば確実にアウトであるのもあるが、彼女がムッツリなのが主な理由である


見ていると自然にニヤけてしまいそうなほど可愛らしい男の子、しかし彼は恩師の孫であり最大の礼儀を尽くさなければならない。雅は自分の欲に負けないように、肉を焼いている手をいつもより火に近づけて己を抑えていた



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