仮説(各論)
この仮説を柳と一蘭に当てはめて考える
・何百年を生きる柳は時間の特異点
・転生、すなわち本来あるべきでない存在である一蘭は空間の特異点
2人はこの世ならざるモノだった
先ほど”普通に”認識できると口を合わせたのは柳の次元に一蘭が追いついた事を意味する
(解剖したらどうなっているんだろう)
前世の解剖実習を思い出してふと自分の体に興味を持った
(ジジイは突然生まれたから空間の特異点でもあるし、逆にジジイの血を飲んで傷が戻った僕は時間の特異点でもある。そもそも前世で21年分遡っているしなぁ)
それぞれ特異点として、柳は最善の状態を維持する時間的能力に対して一蘭はあらゆる空間を認識する空間的能力を持つ
(これ、異世界転生で主人公が五大魔法全て使えたりする理論付けに使えるんじゃないか?)
そのようなしょうもない事を考えていると痛みが戻ってきた。集中が切れたからである
「あー、いってーなー」
一蘭は何もしなくても感じる激痛にイライラして大きな声で叫んだ
「考えごとは終わったんか」
そんな柳はというと自分の血で薬を作っていた
「それ、どんな味がするんですか?」
「さあ? ワシは当然自分の血を飲む必要などないからの」
「まあその血が巡っている訳ですしね」
「血を飲んで治った訳じゃし、もっと飲めばもっと良くなるじゃろ」
彼はまるで無責任に言った
「師匠!? それ下手したら抗体できて効き目が薄くなるパターンもありますよ!」
「自分達を常識で考えるな。そんなこと言ったら他人の血なんて飲むべきじゃなかろう」
「た、確かに」
珍しく一蘭が口で負けた
「この痛み、いつまで続くか分かります?」
「分からん。ワシの場合は、始めは直りが遅かったが何回か経験していくと短くなっていったな。あとは怪我の程度にもよる。1番長かったのは全身串刺しになったときで1ヶ月くらい掛かったかの」
「全身串刺しって・・・・・・」
「知りたいか? あれはまだワシが血気盛んだった頃、」
「長くなりそうなのでいいです」
「む? なんじゃと! さては、お前さんワシが仮説を聞かんかった事を根にもっておるな」
(別に持ってないけど、年寄りの話って長くて要点分かりづらいんだもん)
「出来たぞ、いや待て・・・・・・よしこれでよいな」
「いやいやいや、明らかに最後余計なもの入れましたよね!? 器が狭いですよ」
「ワシに器を説くようになるとは、少し世界が分かったくらいで随分と偉くなったのお」
「これは比喩というか、言葉の綾的な?」
一蘭は柳の獰猛な笑みにビビってしまった。また、今後の修行内容が更に過酷になる事を悟った
「お前が飲んだらお前さんの家族を呼んでくる。少し早いが仕事や学校の準備で家に戻る必要があるじゃろうからの」
(ええいままよ!)
彼は一気に飲み干した
「うげぇ、まっずーー」
「うむ、特に副作用も出ておらんようじゃな。では呼んでくるぞ」
(やっぱ本人も分かってなかったんか。覚⚪︎剤と一緒やんけ)
前世で一度だけ見た、薬で廃人となって運ばれてきた患者。その姿を思い出して柳の狂人さ、サイコパス加減に恐怖した




