パーティー(妹視点)
(早くお兄様の元に帰りたい)
目の前で鳴いている何かに愛想笑いを浮かべながら彼女は一蘭の事ばかりを考えていた
「▽○▷□」
「そうですね」
「▷▽▷○□□」
「あら、▷▽▷○□□なんですね」
一見すると傾聴している彼女だが中を覗くと全くの逆である。話しかけている彼らを吠えている獣程度にしか認識していない。ただ自尊心の高さと無駄に持つ権力が厄介であるため、仕方なく相手をしてあげている
(なんでこんなに煩いのかしら? お兄様なら透き通るような声で、小さく静かにお話なさるというのに。やはり生態からして違うのでしょう。これをお兄様と同じ分類とする世界が腹立たしいです)
「むっ! 聞いているのか!」
かくらに気があり、注意を引こうと話しかけていた男子が、暖簾に腕押しになっていることに気がついた。こう言う能力だけは長けている
「この素晴らしさが分からないとは、やはり変わり者の中本家の娘か! 聞けばお前の兄は1回もこのような場に出てないそうじゃないか。礼儀がなっていないのではと噂になっているぞ、もしくは人目に晒せないほど醜い顔とっ! ・・・・・・ひぃ」
正直家はどうでもいい。これは代々の中本家も同じ考えである。中本という性も臣籍降下する際に適当に決めたと言われている
臣籍降下は、皇族がその身分を離れ、姓を与えられ臣下の籍に降りることをいう
前世では皇族女子が臣下に嫁すことで皇族でなくなる臣籍降嫁もある。
しかし、この世界ではトップは常に天皇であったが、実際の政は女性が行っていたこと、そもそも嫁に行ったわけではないことから臣籍降下で正しいと言える
つまり、中本家を辿ると皇族となる。これが穏健派の顔にされたり、一条家の顔色を伺う事なく好き勝手できる理由である
獣同然と思っていた何かに、自分の兄が馬鹿にされたことが彼女の逆鱗に触れた
ほんの一瞬、彼女の殺気に当てられた目の前の男子は腰を抜かして失禁までしてしまった
(ふん、大勢の前で恥をかいてあなたが噂の中心になりなさい。待ちなさい、私? なぜ終わらせようとしているの? お兄様を貶したのよ? これでも足りないわ。そうね、名前を覚えておきましょう)
周りにいた男子は自分があのような醜態を晒すことを恐れて話しかけるのをやめた




