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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
93/97

90話 善戦

5分。

未だに敵の姿が見えない。コレは今までに体験したことが無い感覚だ。大抵のものは角で見れてた。


5分間何もしてこないのは何かの作戦か、それとも今は攻撃出来ないのか。

何もわからない。



「北に真っ直ぐ3km!いました!」

ついに角の探知圏内に入った。

「歩いてこっちに向かってます!」


長い白髪を後ろで1つに纏めてる。すらっとした長身で、女と間違うほどの美形だ。男だが目を奪われる。氷の粒が氷帝を囲い、煌めかせる。歩く姿に品があり、風が髪を揺らすと本の中の王子様のような、とてもロシア最強とは思えない。

あれが氷帝アレクサンドルか。

真っ直ぐとこちらに向かってきてる。


「清麻呂ぉー!!」

「おう」

言わなくても伝わるってのはすごい。

清麻呂は俺たちの前に樹皮の盾を出した。

「ズバッ!!」

樹皮の盾に氷柱のようなものが刺さる。


氷柱の半分以上がこっちから見えてる、それほどの威力。当たれば致命傷は確実だ。

さらに氷柱は樹皮の盾を徐々に凍らせていく。

急いで金棒で氷柱を叩き割ると、氷の侵食は終わった。

これは…。

氷柱は貫くだけじゃない。貫くと同時に周囲をも凍らせていくのか。


「来る!」

およそ2kmを10秒で詰めてきた。

遠距離と思ったが、バチバチに近距離タイプだった。


氷帝は氷の鎧を拳に纏って清麻呂に殴りかかろうとしたのを、俺が横から割り込んで金棒で叩く。

瞬間的に金棒が凍らされて、2発目のパンチで砕けた。

「バキィィィン!」

俺の金棒は元々消耗品だ。

その後のパンチも金棒を変えて防ぎきる。


その間に宮本さんとキングが仕掛けるが上手く受け流される。


キングの能力は単純な身体強化だ。いつも大剣を使っている。他にもあるのだが、格上相手には使えない。

魔力とは別にオーラを纏って戦う。格下だと、オーラのみで気絶させることもできるんだとか。


宮本さんはとにかく速い。最高速度はマッハ6になる。その速さの原因は足の筋肉の肥大化だ。普段の倍以上に太ももからふくらはぎが膨れ上がり、そこから放たれるパワーは凄まじく、蹴り技ではソニックブームを引き起こすほどだ。だから、いつもショートパンツか、ブカブカのパンツって言ってた。


拳を使うのは格下にのみ。足を使うと相手が木っ端微塵になっちゃって、それだと素材が売れなくなるから、その時に拳で戦うためのナックルカバーがある。

今日は拳を封印させてる。


清麻呂はサポートに徹していて、みんなに向かう氷帝のパンチの間にツタを出して身代わりにしてる。パンチを受けたツタは凍った直後粉々になる。


4対1でやっと互角か、まだやや劣るか。


地面から生えてくる氷柱もギリギリ避ける。予備動作が無く、足裏の地面から生えてくるのはヤバい。

1対1で勝てる相手じゃないのはわかった。


大分、攻防が続くが氷帝表情は一切変わらない。無表情でこの高速戦闘が行われている。


俺の極細金棒も、腕に当たったと思ったら凍らされて砕ける。凍らせるのは自由自在か。


時々、氷柱がどこからともなく射出される。

これにも清麻呂が対応してくれる。心強い。


俺はとにかく、攻撃を続ける。


そんな時、上空に巨大な氷の塊が出現し、辺り一帯に影がかかる。数10mの氷塊がゆっくりと重力にしたがって落ちてくる。


これには俺が空に飛び出し、逆さになって氷塊に足を着く。途端靴に霜が降りて凍り始める。

大地を揺らす力(グランドシェイク)

「バキィィィン!」

振り下ろした金棒が氷塊を粉々に割る。


落ちながら金棒で靴を割っていく。


「ふぅ」

そして足に金棒の鎧を付ける。

氷塊の砕けて小さくなった氷がパラパラと地面に落ちると、そこから地面が凍りつく。砕いても砕いても、ぬるりと氷の床が再生していく。

俺は靴を履き替えながら戦ってるが、思考が混乱する。

清麻呂が作ってくれた足場も凍って作ってを繰り返してる。




日が沈み、そして夜が明けて、日がてっぺんに昇る。


戦闘開始からおよそ1日経つがお互い深い傷を負った者はいない。


氷帝もさすがに疲れてきたのか、攻撃が大雑把になって、大きい攻撃が多くなってる。


そして氷帝は全身に氷の鎧を纏い始めた。

無尽蔵に体から氷柱を出してくる。容易に近づくと簡単に刺される。


まぐれ当たりも無く、俺、宮本さん、キングの小さな傷が増えていく。


2度目の夜が来る。


舞台はアイスドームになり、床も壁も天井も氷でできている。


四方八方から氷柱が伸びては砕け、伸びては砕けを繰り返す。この中でも清麻呂の植物は健在で、おびただしい数のツタが縦横無尽に駆け回ってる。

時につぼみを咲かせて、回復を施してくれる。


ドーム内の気温がどんどん下がり続け、空気が凍っていく。白い息が氷柱となり顔面に伸びてくるのをかろうじて躱した。

このドーム内は氷帝にとって手のひらの上ってことか。

笑っちゃうぜ、こんにゃろお!


ほんの一瞬だった、氷の地面に足を取られて動きが止まってしまった。

目の前には氷帝の拳が迫ってる。


そして、世界がスローモーションへと変わる。



これが走馬灯か、スフィアと戦った時にもあったな。

死の淵に立ちながらも頭はスッキリしてるし、思考も俺の経験を漁ってこの場をなんとか凌ごうとしてるのがわかる。


頭にいつもよりも大きい鎧を出した。鎧に拳がぶつかり砕け散る。その隙間を使って上体を後ろに反らす。

ギリギリ頬に拳が掠るが、致命傷は避けた。

未だに続くスローモーションの世界に、俺の命の危機はまだ去っていないのだと知らされる。

攻撃こそ最大の防御!ここに来て、攻撃的志向を持つことで、俺の思考が至高の領域に達する。

0コンマの間にあらゆる情報が脳内を駆け巡り、最良の選択肢を見つけ出し、体が動く。


上体を反らしながらも左足の蹴りを放つ。

これに反応するのが氷帝だ。1日半戦って知っている。


俺の左足が氷帝の右腕に弾かれるギリギリで靴を消して、靴を作り替えた。一瞬の着脱に反応出来ず、新たに作られた靴はつま先をとんがらせた。

氷帝の腕に止められると同時に氷帝の顔面につま先の先が刺さった。

(どうだ!長さ足りてるはずだけど)

腕に触れた脛からじわじわと凍りついていく。

つま先の先過ぎて感触ないんだけど!

が、氷帝の右目からぽたぽたと血が垂れてきた。

すぐさま左足を割って氷帝から離れた。

どんなもんじゃい!俺だってやる時はやるんだぜ!


右目を瞑りながらも動きは衰えず、みんなの攻撃をさばいていく。

浅かったか!


「ズドーン!」

氷帝の足元から八本の氷柱が全方向に高速で伸びて、壁に突き刺さる。


まだまだやれると、そんな目をしてる気がする。

上等だ!俺もテンション上がってきたぜ!っとその前にポーションをグイッと。

左足が治っていく。今の大技のおかげで飲む隙ができた。




「スパーーーーーン!」

突然アイスドームの屋根に線が入った後、屋根がズレ落ちていった。


いつの間にか太陽が昇っていた。

それにしてもいったい誰がこんなことを。


「ごめんなさーい。仕事で遅くなりましたー」

「ズドーン!」

空から人が降ってきた。

ついでにその後ろでジェット機が地面と衝突して煙を上げた。

ピタッと俺の前にその人が着地した。


俺はこの人を知っている。上下黒スーツに身を包んだこの男。

日本最強、世界3位の山田(やまだ) 一郎(いちろう)だ。



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