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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
72/97

69話 契約

「おっ、大竹!」

「こんにちは」

「こっちだ」

ギルドの受付のおじさんに着いて行き、1週間前と同じ部屋に入る。


コンコン。

「入ります」

おじさんが扉を開けると正面に黒いスーツを着た、ふくよかな男の人が立っていた。


男の人と目が合うと。

「ほ、本日はお越しいただきあ、ありがとうございます」

なんかめっちゃ緊張してる。上から吊るしてるんじゃないかってくらい背筋ピンとしてるし両手も真っ直ぐ横腹と腰にピッタリくっついてる。

「よろしくお願いします。大竹です」

「こちらこそ!あっ、私は飯干と申します!」

「飯干さんよろしくお願いします」


「2人ともとりあえず座りましょうか」

「「はい」」

なんかこれって先に座ったらダメとか無かったっけ?あっ、背もたれに付いちゃダメとか膝の上で拳を握るとか!

今になって気になり始めた。

とりあえず、っぽく行こう。


「失礼します」

座る時にこれ言うのポイント高かった気がする。中学の時の面接練習でそんなことを言われたような。

ブカァッ。

ソファだからめっちゃ沈むぅ!


「本日は専属契約ということでお2人に来てもらいました」

「「はい」」

「その前に1ついいですか?飯干さんはなんでそんなに緊張してるんですか?」

「へっ!」

チラチラとおじさんに視線を向ける飯干さん。


「俺から説明するけどな、大竹は全然自覚してないけど世間一般の認識だと下層探索者は別の世界の住人なんだ。だからこの場合、言葉は悪いが飯干さんはたかが社長になるって訳だ」

「えっ!」

「ほらな、なんでかは知らないが自覚が無さすぎるんだよ大竹は。飯干さんの反応が普通になる。たまに上からものを言う人もいるが、まあそのほとんどが契約に失敗してる。その噂が広まってるってのもあるな」

「へー、そうだったんですか。俺は普通でいいですよ。大柄な人は俺も嫌いですけどね」

「よ、良かったです」

ハンカチで顔の汗を拭く飯干さん。


「細かいことについては2人で決めてください。俺は出ていくんで、では」

おじさんが部屋から出て2人きりになる。


「ご結婚されてるんですか?その左手の」

飯干さんの左手の薬指に指輪がはめられていた。

「ええ、まあ、高校の時に出会いまして、それからですね」

「えー!凄いですね!」

「妻には支えられました。なんせ、最初は妻が稼いでくれてましたからね、おかげで私がやりたいことにのめり込めて、ここまで会社が大きくなりました」

「やっぱりやりたいことをやるのが1番ですよね。僕も高校でダンジョンに出会ってなかったら今の自分はないですね」


「大竹さんはパートナーは」

「僕はそういうの全く。好きな人とかもいたことなくて」

「そうなんですか。恋愛は若いうちに経験しておいた方がいいですよ」

「んー、わからないんですよねぇ」

「まあ、こんなこと言ってますけど私は妻が初恋でしてね」

「おー!いいですね」


「もう、20年も前になりますね。早いもんですね」

「僕はまだ産まれてないですね、ハハッ」

「なんと!」

「今年19なんですよ」

「ほうほう、うちの息子と近いですね」

「お子さんいらっしゃるんですか」


「ええ、2人いまして、上の息子が12で下の娘が7になります。今回の依頼も子供たちが気に入るかなと思いまして」

「そうだったんですか。てっきり社長室にインテリアとして置いて置くのかと思いました」

「まあ、家の玄関に飾ろうと思ってますけどね。明日息子の誕生日なので、明日見せることになってます。大竹さんが持ってきてくれた麒麟の剥製をね」

「反応が楽しみですね!」


「あっ、もし迷惑でなければですけど明日家に来ますか?」

「いや、そんな!せっかくの子供の誕生日に悪いですよ」

「そんなことは!むしろ子供たちも喜ぶと思います!」

「うーん、それならお言葉に甘えて」

「ほんとですか!ありがとうございます!」



なんて話をしてから契約の話に移った。

恐らくモンスターの素材の調達がメインになるとか。報酬はその都度、提示するとか。諸々決めた。一方的に契約を切る場合は解約金があるらしい。それは両者同じで合意の上だ。


そんな感じで契約は終わった。

「今日はありがとうございました!それでは明日待ってますよ!」

「は、はい」

最後は結構ぐいぐい来た。

俺がギルドから出るまで手を振り続ける飯干さん。

なんか異常に好かれちゃったか?



家に戻って一息つく。

「はぁ〜、疲れた。無駄に緊張しちゃったよ」

「お疲れ、なにか飲む?」

2階の応接室のソファにぐったりと座り込むと後ろから岡島さんが出てきた。

「いや、ギルドでジュース買ったから大丈夫」

巾着からリンゴジュースを出す。


「契約上手くいったの?相手社長だったんでしょ?」

「ん、順調にいったよ。なんか社長が俺に緊張しててさ、逆にやりづらかったよ。社長よりも下層探索者の方が上らしい」

「そりゃそうでしょ。地位とか以前に怒らせたら怖いからね」

「なんでよ!」


「そりゃ、モンスターをサクッと殺すんだよ?人くらい殺せそうじゃん」

「そういう扱いなのか。心外だな。俺は無駄な殺生はしないタイプなんだ」

「過去には下層探索者が街中で暴れて凄い被害があったって教科書にも載るくらいだよ。そりゃ警戒するよ」

「まじかー、俺ってそう思われてたのか」



「それでさ、明日その社長の息子さんの誕生日会に誘われたんだよね」

「なんで?」

「なんか、社長と話が盛り上がってさ、その流れで」

「いいんじゃない?楽しんでくれば」

「うん、まあそのつもりだよ」

「そうだ!菓子折り用意しないと。私ちょっと買ってくるよ」

「いや、俺が行くよ」

「ちゃんとしたやつ選べるの?」

「よろしくお願いします!」

「任して!」

誕生日ならなにかプレゼントあった方がいいよな。それなら娘さんにもか、いや全員分用意するか。


子供が喜ぶものはなにかな。佐藤君に相談しよう。

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